メモリ8GBの「MacBook Neo」は動画編集に対応できるのか? 3つのソフトで4K編集を試す:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)
Appleが発売した10万円切りのノートブック「MacBook Neo」は、iPhoneと同じA18 Proを搭載しメモリ8GB固定という割り切ったスペックで登場し、議論を呼んだ。さまざまなレビューから「意外と使える」ことが判明したが、動画編集ではどうだろうか。DaVinci Resolve、Apple Creator Studio、Adobe Premiereで4K動画編集を実際に試すと、意外な結果が見えてきた。
3種類のNLEでテスト
ではここからは実際に映像編集ツールでのパフォーマンスを確認していく。今回使用する素材はSONY「FX30」で撮影した4K/23.976pの「XAVC」、ビットレート100Mbps前後の素材である。「S-Log3/S-Gamut3.Cine」で撮影しているので、LUTの適用やカラーグレーディングが必要になる。
まずは「DaVinci Resolve Studio 20」でのパフォーマンスを確認していく。バージョンは2月12日に公開された、20.3.2だ。4K解像度そのままで全カットにLUTおよびカラーグレーディングを適用しているが、一般的なカット編集は、レスポンスもまったく問題ない。テロップを入れてのリアルタイム再生も問題なく行える。
複数のストリームを同時に走らせるレイヤー構成もテストしてみた。9面マルチ画面を作ってみたが、問題なく再生できるのは6画面までで、それ以降はコマ落ちが発生する。
マルチ画面作成中の作業もレスポンスが悪くなるということもなく、普通に作業できた。今回はプロキシファイルは使わずオリジナルソースで作業してみたが、プロキシ変換すればさらに快適に編集できるだろう。
まだA18 Proプロセッサへの最適化はされていないと思われるが、かなり大掛かりなNLEツールにも関わらず、かなり快適に編集できる。HDRコンテンツはモニターが表示できないので作成できないが、Log撮影した素材からのSDRコンテンツ制作は、カット編集にテロップ入れ程度であれば問題なく行える。
続いて、先日「Apple Creator Studio」としてリニューアルされたばかりの「Final Cut Pro 12.0」を試してみたい。さすがに米Apple純正なので、A18 Proへの最適化も期待できる。
同様に4K解像度そのままでLUTとカラーグレーディングの適用を行ったのち、一般的な編集を行った。テロップを入れてのリアルタイム再生も、問題なく行える。
マルチレイヤーでの再生は、9面が出揃うまでは問題なくリアルタイム再生できるのには驚いた。ただ9ストリーム全部が同時に走り出すと途端に重くなり、リアルタイム再生できなくなる。それでもかなり高パフォーマンスであり、MacBook Neo上で動かすNLEツールとしては、今のところ一番相性がいい。わざわざApple Creator Studioとしてサブスク型に変更しただけの価値はある。
続いてNLEでは利用者が多い米Adobe「Premiere」を試してみる。以前は「Premiere Pro」という名称であったが、モバイル版の提供開始と合わせてPremiereへ名称が変更された。最新バージョンは26.0.2となっている。
これも4K解像度そのままでLUTとカラーグレーディングの適用を行ったのち、一般的な編集を行った。テロップを入れてのリアルタイム再生も、問題なく行える。
しかしマルチレイヤーはかなり重たい処理のようである。実際レイヤー作業中の6枚目を設定中に、設定値に対して画面が動かなくなり、それ以上の設定作業はできなかった。できたところまでで再生を行ったが、3面まではリアルタイムで再生できるものの、それ以上はコマ落ちが発生した。
おそらく現行のPremiereは、A18 Proプロセッサへの最適化がされていないものと思われる。もしくは元々メモリへの依存度が高い設計なのかもしれない。現バージョンに限った話で言えば、PremiereユーザーはMacBook Neoで作業するのは、HD解像度で作業するか、プロキシを使うのが現実的だろう。
外部ディスプレイの対応状況
MacBook Neoは、搭載ディスプレイは500ニトの「Liquid Retina」ディスプレイで、HDRには対応しない。一方USB-C端子を使った外部ディスプレイの接続が可能だ。最大4K解像度、60Hzの外部ディスプレイ1台の接続に対応している。
モバイルディスプレイではUSB-Cだけで接続できるものも多いが、4K/HDRとなると、一般的にはHDMI入力のほうが妥当だろう。HDMIディスプレイに接続するには、USB-CとHDMIを変換するコンバータ付きケーブルが必要になる。
この手のケーブルは、2018年頃から一部のスマートフォンがUSB-C端子からの映像出力に対応した際に多く出回ったが、当時はまだHDR対応のものは少なかった。ただ昨今はHDR対応の製品も出回っている。筆者もHDR対応の変換ケーブルを購入したので、MacBook NeoとHDR対応4Kテレビを接続してみたところ、4K/60P/HDRでの表示を確認できた。
DaVinci Resolveで外部プレビューモニターとして設定し、HDRでのカラーグレーディングをテストしてみたが、ちゃんと設定すればHDRコンテンツの制作もできなくはない。ただエフェクトなどを多用するようなコンテンツでは、HDR処理や解像度よりもエフェクト処理のほうが重くなるので、やれても軽いコンテンツのみだろう。
パフォーマンス的にA18 Proプロセッサは初代M1プロセッサと似たようなパフォーマンスのようだ。ただM1はすでに6年前のプロセッサであり、当時よりもOSやアプリの負荷は高まっている。またメモリも8GB以外に選択肢がないということからも、6年前に感じたパフォーマンスほどには至っていないという印象だ。
とはいえ、10万円程度の初学者・文教向けとされるマシンで4K/Logファイルのグレーディングしたものが普通に編集できるというだけでも、かなりのめっけもんではないだろうか。
筆者はこれまで出張時に動画編集してアップロードしなければならないケースでは、16型のMacBook Proを持っていくしかなかった。だが今後はMacBook Neoだけでなんとかなりそうだ。
MacBook Proよりもだいぶ軽量なので、取材で動き回っても体力が奪われることもないだろう。外部ディスプレイも接続できるので、ホテルのテレビに接続できれば画面サイズの小ささもカバーできるかもしれない。
気軽に使えるMacという点では、似たような価格の「M4版Mac mini」と併用するのが高コスパではないだろうか。
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