“猫草”は猫にとっておいしいのか? 「旨味がバナナやメロンより強く、苦味が弱い」 日獣大が味覚分析:Innovative Tech
日本獣医生命科学大学に所属する研究者らが発表した論文「猫草としてのイネ科植物への味覚分析手法の応用」は、ネコが「猫草」を好んで食べる理由を味覚の観点から探った研究報告だ。
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
日本獣医生命科学大学に所属する研究者らが発表した論文「猫草としてのイネ科植物への味覚分析手法の応用」は、ネコが「猫草」を好んで食べる理由を味覚の観点から探った研究報告だ。
ネコは肉食動物であり、栄養学的に植物を必要としないにもかかわらず、日常的に猫草と呼ばれるイネ科植物などを自発的に摂取する行動が見られる。この草を食べる行動はイエネコだけでなく野生のネコ科動物や他の肉食動物にも共通しており、毛玉を吐き出すため、胃腸の寄生虫を駆除するため、微量栄養素を得るためなど、さまざまな仮説が提唱されてきた。
こうした機能面の研究が進む一方、味の役割はほぼ見過ごされてきた。そこで研究チームは、植物を摂取する理由を味覚の観点から解明するため、味覚センサーを用いて、ネコが日常的に接する可能性のある植物の味覚プロファイルを客観的に評価・分類した。
対象には、イネ科やマメ科の牧草、野菜、果実、マタタビやキャットニップなど特有の反応を引き起こす植物、さらにはユリやソテツなどの有毒植物を含む、計15科39種の植物が選ばれた。
味覚センサーの特性上、異なる種類の植物を直接比較することはできない。そのため今回の分析では、各種植物を粉砕した後、基準となる市販のキャットフードと純水を混ぜ合わせて遠心分離し、得られた水層部をサンプルとして味覚センサーで測定する分析手法を採用した。
結果、イネ科は酸味と苦味が低く、“旨味”と塩味が高いという独自の味覚事情を持つことがわかった。一般的に、ネコはウサギなどの草食動物と比較して約400倍も苦味に敏感であるため、苦味が少ないイネ科植物を好むと考えられる。
イネ科の中でもエノコログサ、キンエノコロ、アキノエノコログサが旨味の上位3位を占めており、バナナやカボチャ、メロンなど人為的に品種改良された種よりも旨味が強いことが示された。
ネコは甘味を感じる受容体を欠損している一方で、旨味受容体を形成する遺伝子を保持しており、食物選択において旨味が強力な動機付けになるとされている。植物に含まれる塩分がネコの食欲を刺激するとは考えにくいため、この旨味の強さこそがネコにとって魅力的であり、肉食であるネコがイネ科植物を受け入れる要因になっていると推測される。
ネコを強く引き付けるマタタビやキャットニップは、嗅覚刺激によって特有の反応を引き起こすが、本研究の分析では旨味が低く、独自のクラスタを形成した。このことから、これらの植物は味覚的な報酬を目的としているのではなく、イネ科の猫草とは根本的に異なる目的で利用されていることも示唆された。,i
なお、論文第一著者の岩崎(崎はたつさき)氏は、麻布大学獣医学部の寄付講座「ペットケア&ニュートリション研究室」の特任准教授として務めている。
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