猫はどれくらい液体か? 30匹に狭い隙間を通過させる実験 ハンガリーの研究者が24年に検証:ちょっと昔のInnovative Tech
ハンガリーのEotvos Lorand Universityに所属する研究者は2024年、30匹の飼い猫を対象に、段階的にサイズが小さくなる開口部を通過させる実験を実施した研究報告を発表した。
ちょっと昔のInnovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
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ハンガリーのEotvos Lorand Universityに所属する研究者が2024年に発表した論文「Cats are(almost)liquid!─Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings」は、30匹の飼い猫を対象に、段階的にサイズが小さくなる開口部を通過させる実験を実施した研究報告だ。これにより、猫がどれくらい液体かを検証する。
対象の猫の性別は雄13匹、雌17匹で、平均年齢は3.51歳。実験装置として、段ボールで作られた2種類のパネルを用意した。一つは高さを50cmに固定し、幅を13cm、11cm、9cm、7cm、5cmと段階的に狭くした「同じ高さのパネル」と、幅を15cmに固定し、高さを43cm、37cm、28cm、20cm、15cmと段階的に低くした「同じ幅のパネル」だ。
実験では、パネルを部屋のドア枠に設置し、猫をパネルから1〜1.5m離れた地点に配置。飼い主はパネルの向こう側で食べ物や玩具を使って猫を呼び、開口部を通過するよう促した。各猫は両方のパネルでそれぞれ5試行ずつ、計10試行を行い、常に最大の開口部から始めて徐々に小さな開口部へと進んだ。各試行の制限時間は30秒とした。
実験の結果、同じ高さのパネルでは、猫たちは胸幅より狭い開口部でもためらいなく接近し、体を押し込んで通過しようとした。飛び越える行動(通過を断念した行為)を示したのは、わずか2匹にすぎなかった。
一方、同じ幅のパネルでは、開口部が低くなるにつれて、猫の接近時のためらいが有意に増加した。特に最も低い2つの開口部(20cmと15cm)では、猫は明らかに速度を落とし、停止や座る行動を示した。さらに7匹の猫がさまざまな試行でパネルを飛び越える行動を示し、これは「同じ高さのパネル」での2匹と比較して明らかに多かった。また体高の高い猫ほど、低い開口部を避ける傾向が強いことも明らかになった。
この顕著な違いは、猫の解剖学的特徴と生態学的背景から説明できる。猫は機能的な鎖骨を持たず、肩甲骨が自由に動くため、狭い隙間を通り抜けるのに適した体の構造をしている。
しかし、低い開口部を通るには姿勢を低くする必要があり、これは猫にとって無防備な状態を作り出す。野生では捕食者から身を守る必要があるため、このような姿勢を本能的に避ける傾向があると考えられる。
Source and Image Credits: Peter Pongracz. Cats are(almost)liquid!?Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings
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