犬猫を飼うと“年収1300万円”と同じくらいの生活満足度 「結婚と同等の価値」 英国チームが調査:Innovative Tech
英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどに所属する研究者らは、ペットが人間の生活満足度に与える影響を定量的に分析した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどに所属する研究者らが発表した論文「The Value of Pets: The Quantifable Impact of Pets on Life Satisfaction」は、ペットが人間の生活満足度に与える影響を定量的に分析した研究報告だ。
研究チームは英国家計縦断調査(UKHLS)に関するデータを活用し、約2500世帯を対象に分析を行った。調査では、生活満足度(7段階評価)や、ペットの有無、性格特性(ビッグファイブ)、年齢、収入、雇用状態、健康状態など多様な情報が収集されている。
この調査の最大の特徴は「近所の家が留守のとき、その家(およびペット)を見守るか」という質問(研究内では“TOTORO”と呼称)を操作変数として取り入れたことだ。
他人のペットを世話することで、ペット飼育の喜びや価値を直接体験し、自分もペットを飼いたいという意欲が高まる。一方でペットの世話をしなくても、そもそも近所と良好な関係を持つ人は生活満足度が高く、生活満足度が高い人がペットを飼ったにすぎないと推測できる。
TOTOROを操作変数として使用することで「幸せな人がペットを飼う傾向がある」のか、あるいは「ペットの存在が人を幸せにする」のかという因果関係の方向性を統計的に推定することが可能になる。分析結果からも、TOTOROはペット飼育と統計的に有意な正の相関関係を示しており、操作変数として適切に機能していることが確認されている。
分析の結果、猫と犬の飼育はともに生活満足度を大幅に向上させることが判明。さらに、収入と生活満足度の関係を分析するため「給与明細情報」と「父親の教育年数」(回答者が14歳のときの父親の最高学歴)を追加の変数として活用した。
この方法により、ペットを飼うことの金銭的価値を算出したところ、猫の飼育は年間約7万3044ポンド(約1380万円)、犬の飼育は約6万6264ポンド(約1250万円)の価値があると推定できた。これは、先行研究で示された「家族や友人と週に1、2回会うこと」や「結婚していること」を金銭的価値に変換した数値に匹敵するとしている。
Source and Image Credits: Gmeiner, M.W., Gschwandtner, A. The Value of Pets: The Quantifiable Impact of Pets on Life Satisfaction. Soc Indic Res(2025). https://doi.org/10.1007/s11205-025-03574-1
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