“未知の遺跡”をAIと地形データで発見──奈良文化財研究所 一般の人の取り組みにも期待(3/3 ページ)
高精度な3次元の地形データを活用し、AIによる分析で古墳を発見する研究について、奈良文化財研究所の高田祐一主任研究員に話を聞いた。歴史研究を加速させ、文化財保護にもつながる取り組みだという。
オープン化によって一般の人も未知の遺跡を調査可能に
地形データとAIを組み合わせた遺跡発見の取り組みが研究段階から実践段階へと進んだ現在、今後はさらなる地形データの提供範囲の拡大と、地形データの密度(解像度)の向上が期待される。
「データの密度の向上については、2つの観点があります。1つめは飛行機から飛ばすレーザーの密度をどれだけ細かくするかという話と、もう1つはデータ処理の話です。データ処理については技術的な改良の余地があると思っていて、これまではフィルタリングによって樹木や建物などを一律に消していましたが、このフィルタリング処理の技術をAIによって向上させることにより、埋もれてしまった古い祠や板碑(石碑の一種)など、忘れ去られた人工物を特定できるようになるかもしれません」(高田氏)。
地形データが一般公開され、誰もが入手できるようになったことにより、これらの地形データを使って作成されたCS立体図や赤色立体地図などの3D地形図から、一般の愛好家や研究科が目視によって未知の遺跡を発見するケースも見られるようになった。高田氏はこのような専門家ではない一般の人の取り組みにも期待を寄せている。
「これまで遺跡の調査などは専門家が行うものだと考えられていましたが、高精度な地形データが一般公開されたことにより、専門家だけで囲い込む時代ではなくなってきています。データが誰でも手に入る時代になったことで、みんなが同じ土俵で遺跡を探せるようになり、それは社会としての裾野が広がることにつながります。そして次に大事なのは、発見したものをどのように評価するかという点で、それこそが専門家の役割であり、私たちが矜持を持って取り組まなければいけないと考えています」(高田氏)。
高田氏はこうした研究にあたって、これまで調査された遺跡の位置情報および遺跡の範囲のデータベースの整備も行っている。奈文研では全国の遺跡情報を集約したデータベースを運用しており、50万件の遺跡位置と20万件の遺跡範囲を保持している。このデータの見直しと修正を行った上で、文化財の基盤情報として整備した。このデータベースは「文化財総覧WebGIS」として無料で公開されている。高田氏は今後も遺跡情報のデータベースの整備を続ける予定で、考古学や歴史学のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを進めていく方針だ。
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