AWS Summit Japan 2026
“開かずの基幹システム”、450人月→実質2カ月で解読 創業100年のカクヤス、生成AIで挑む「転生」(1/2 ページ)
老朽化した基幹システムの刷新に、生成AIを持ち込む企業が増えている。設計書が残っていなくても、AIがソースコードを読み解き、業務ロジックを洗い出す。人の手では現実的でなかった規模の解析を、数カ月で終える例も出てきた。
酒類販売を手掛けるカクヤスもその1社だ。30年間動き続けた基幹システムは「触れない、読めない、直せない」状態に陥り、人の手で解析すれば450人月と試算する規模に膨らんでいた。この解析を、生成AIは実質2カ月に縮めたという。親会社ひとまいる(東京都北区)でグループシステム部門特命担当を務める石井氏が、AWSジャパンが6月25日から26日にかけて開催した「AWS Summit Japan 2026」(幕張メッセ)で、その舞台裏を明かした。
30年働いた「基幹システム」が硬直──社名まで変えた背水の陣
カクヤスの基幹システムは約30年前に当時の「Visual Basic」(現在のVB.NET)とOracleのデータベースで構築、酒類卸の業務に最適化してきた。だが建て増しを重ねた結果、2025年には保守ベンダーへの依存が常態化。誰も中身を把握できなくなっていた。サーバを効率的に動かす基盤ソフト「VMware」の契約が27年7月に切れるという、動かせない期限も迫っていた。
刷新の背景には業態転換がある。ひとまいるグループは25年7月、持株会社の社名をカクヤスグループから変更し、「酒を運ぶ会社」から「運ぶことで稼ぐ会社」──酒類卸から物流業への転換を宣言した。石井氏はプロジェクトを「会社そのものを生まれ変わらせる、最初で最後の心臓手術」と位置付け、社名変更を「引き返せない場所まで自らを進めた、背水の陣の旗印」と表現する。
設計書なし、コードも一部紛失──試算は450人月
プロジェクトに参画した石井氏が目にしたのは、設計書がなく、プログラムの一部も失われ、本番と同じ状態で試せる環境もないという現実だった。操作画面は2200、データを保管する表は3000に上る。だが、その全体を把握している人は社内に誰もいない。しかも売価や在庫の計算といった中核業務を処理するシステムの多くは、外から中身の見えないプログラムの奥深くに埋もれ、誰も取り出せなくなっていた。
人の手で解析した場合の試算は450人月。石井氏は「1年たっても地図すら描けず、期限は2年後に迫っていた。沈没寸前だった」と振り返った。
AI駆動と業務駆動、「両輪」で突破
突破口は「AI駆動開発」と「業務駆動開発」の2本立てだった。AI駆動開発では、米Amazon Web Services(AWS)の生成AI基盤「Amazon Bedrock」上で米Anthropicのコーディング支援AI「Claude Code」を動かし、1200本のストアドプロシージャを解析。テーブル間のデータ移動、在庫の評価額計算、売価計算、与信計算、在庫の引き当て、そして酒類業界独特の商習慣である空容器の回収という、6つの業務ロジックを抽出した。本番のOracle環境をAWS上に再現し、挙動を突き合わせて検証できる足場も整えた。
もう一方の業務駆動開発では、営業、商品、店舗、物流、経理の各部門から人を集め、AIの解析結果を現場の業務の言葉に翻訳した。使われなくなった画面や、似て非なる画面を仕分け、2200あった画面を業務に必要な約800へ凝縮。石井氏はこれを「機能の削減ではなく、物流業として走るための筋肉質の再設計」と説明し、「AIだけでも現場だけでも進まなかった。両輪がかみ合って初めて前に進めた」と語った。
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