Special
» 2004年07月14日 16時40分 公開

TabletPCとOneNoteの現状と将来サラリーマンのためのタブレットPC使いこなしガイド 最終回

ノートPCが進化したひとつのカタチ――それがタブレットPC。より進化する次期バージョン「Windows XP Tablet PC Edition 2004」リリースを控え、最後に「タブレットPCとは結局なんたるか」ということを探っていくことにする。

[神崎洋治(トライセック),ITmedia]
第28回へ戻る

 タプレットPCはノートPCが進化したひとつのカタチだ。先進のインタフェースであるタッチパネルとペンによって、入力や選択業務が著しく効率化される可能性を持っている。しかも、使用する場所をデスクの上に限定されない、本当の意味でのモバイル性や機動力も持ち合わせている。

タッチパネル型のモバイル端末としてのタブレットPC

 マイクロソフトのウェブサイト「Microsoft Windows XP Tablet PC Edition 導入事例」のページでは、タブレットPCの導入事例がいくつか紹介されている。

 中でも、エレベータ・メンテナンスのエンジニアたちが電子マニュアルをタブレットPCで参照するシーンなどははっきりと目に浮かぶようだ。作業現場で、膨大な量の技術文書や図面の中から目的のページを検索し、画面上に表示して確認する様子は、まさにタブレットPCの形状が最適であり、タブレットPCでなければ効率化は実現困難だったと言えるかもしれない。オンラインであれ、オフラインであれ、膨大な情報から見たい情報を選択して閲覧することはタブレットPCの最も適した環境のひとつである。

 また、タブレットPCとは「選択画面を中心としたタッチパネルのモバイル版」として利用するのには最も最適なハードウェアであり、それは疑いのないことだと、私は思っている。

 銀行であれ、官公庁であれ、コンビニであれ、タッチパネル型の端末は既に普及していて、コンピュータ操作のスキルをほとんど持たない顧客であっても、画面を見ながら気軽に、確実に操作できる点がメリットとして認知されている。これをモバイル形状にしたものがタブレットPCだと考えれば、専用システムで、タブレットPCがより高い効率性を生み出すかは容易に想像できるだろう。

ブレインストーミング中は右脳で操作したい

 企画畑でもタブレットPCは認知度を上げている。いわゆるプレイン・ストーミング(ブレスト)やアイディア・プロセッシングの現場だ。

 既に参加している人はご存じだろうが、ブレストとはあるテーマに大して意見を出し合う技法のことで、企画会議や情報交換会などによく用いられる。できるだけ数多くのアイデアを自由に出しあい、他人の意見を批判せず、意見に対して更に建設的な意見を出していくことが重要とされる。つまり形式にはまったことはやめて、自由でラフであることが求められる仕事だ。

 私は、こういう会議にはノートPCを持ち込まず、手書きのシステム手帳でメモすることに決めていた。ノートPCで使うワープロやテキストエディアは、垂直水平に整理されたフォーマットが原則だから、自由でラフな意見はテキストにした途端に表現力を失う気がするのだ。

 さらに、広告のデザインにも同じことが言えるように思う。ラフスケッチをワープロやDTPソフトで切る人がいるが、デザインは垂直水平が原則ではなく、いろんな角度に飛び跳ねていいのである。

 少し抽象的な話になってしまったが、たくさんの人のアイディアを、より正確に書き留めておくには手書きが最適だと思う。また、アイディア・プロセッシングは、いわば一人版ブレストだから、同様にアイディアは手書きで発展させていきたいのである。

OfficeとタブレットPC

 前述のような限られたビジネスシーンでは、タブレットPCは導入の成果を明確に出し始めているようだ。しかし、多くの人は単一の機能に秀でたPCを望んでいるのではなく、アレもコレもと、いろいろできるツールとしてPCを使いたいと感じているはずだ。

 辞書機能だけ望んでいれば電子辞書が最適だし、スケジュールや電話帳替わりに持って歩きたいならPDAの方が実用的だ。パソコンはいろいろできるから望まれるのだ。

 私の周囲の友人の多くがこう尋ねる。

「Microsoft Officeとかで、タブレットPCって役に立つんですかねぇ?」

 つまり、フツーの、どこにでも見られるビジネスシーンにおいて、タブレットPCはプラスアルファの予算を確保してまで購入する価値があるものなのか、という疑問だ。

 このコラムでは、主にタブレットPCとOneNoteの活用方法を紹介してきたが、ペン入力は「Microsoft Office」上のほかのアプリケーションでも利用できる。例えば、Excel 2003、Word 2003で作成した表や文書画面上に、タブレット・ペンの手書き入力により直接コメントや図を追加することができる。

 表や文書のチェックや校正、目立たせたい箇所にマークを追加したいときなど「手書きでチョコチョコっと書き込めないかなぁ」と感じた人も多いはず。この機能を使えば、プリント印刷した書類に赤ペンで手書きする感覚で自由にコメントや絵などが追加できるわけだ。

キー入力とペン入力のシームレスな操作性が鍵

 実はここに、タブレットPCの利点と課題が同居している。

 私が使っているタブレットPCはキーボードとタブレットペンの両方を装備している。そしてそれは作業によって完全に使い分けられている。テキスト入力を主体とする作業、そして手書きを主体とする作業だ。しかし、それは本来、切り替えないでもどちらも使いやすいインタフェースが実現されるべきだ。

 ソファに深々と腰を埋めた状態で、ペンを使って快適なネットサーフィンをしているとき、検索エンジンにキーワードを入力する操作が煩わしくないインタフェース。キーボードで文章を入力している最中に、自分のイメージを画面上に正確にペンでトレースできるインタフェース。タブレットCPがノートPCの次世代のカタチとして標準化するためには、キー入力とペン入力のシームレスな操作性がポイントになるだろう。

 元来、PC進化の歴史は、ハードウェアとソフトウェアが交互に進化、研鑽してきた。しかしここ数年、どちらも際立った進化の足を緩めてしまっている。ノートPCからほんの少しの進化を遂げたタブレットPCが、本当に使いやすいものになるかどうかは、更なるハードウェアとソフトウェアの研鑽(けんさん)にかかっているように思う。

――半年間、全29回に渡って紹介してきた「サラリーマンのためのタブレットPC使いこなしガイド」はいかがでしたでしょうか。タブレットPCとデジタルノートアプリケーションに興味を持つ読者の方にとって、少しでも役立つものになったなら幸いです。


著者紹介
神崎洋治:トライセック代表取締役。パソコンや周辺機器、インターネットに詳しいコラムニスト。シリコンバレー在住時は、取材による米ベンチャー企業の最新技術動向をレポート。ペン・コンピューティングデバイスの先駆けである「Palm Pilot」を、製品写真や開発者取材を通して日本のメディアに初めて紹介したひとり。
 マーケティングにも精通し、ライターやデザイナーとしても幅広く活躍中。主な著書は「ひと目でわかるMicrosoft Office OneNote 2003 マイクロソフト公式解説書」「学び直すDVDのしくみ」(日経BPソフトプレス)ほか。
 Webサイトではコラム「進め!インターネットマン21」を連載中。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.