初のコンシューマー向けTabletPC「dynabook R10」のマーケティング戦略を聞くインタビュー(2/2 ページ)

» 2005年02月25日 17時30分 公開
[平澤寿康,ITmedia]
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ペンとアプリケーションで何ができるのかを訴求

ITmedia これまで「TabletPC=手書き認識で文字入力ができるPC」という部分ばかりがクローズアップされ、それ以外のTabletPCの良さがあまり語られてこなかったように思われます。今回dynabook R10を出されたことで、今後東芝として、どのようにTabletPCに対するユーザーの意識を変えていこうとお考えですか?

根岸 確かに、これまで東芝も含めて、TabletPCは「手書き認識で文字入力ができるPC」という売られ方がされてきました。しかし、ペンによる文字入力は緊急的なもので、やはりキーボードを利用した方が圧倒的に有利です。ですのでこれからは、TabletPCを利用することによって「これまでとは違った新しいPCの楽しみ方ができますよ」といったことを、アプリケーションも活用して訴求していけたらと考えています。

 例えば、今回のdynabook R10には「小学国語漢字ドリル辞書」というアプリケーションが付属していますが、これなどはペンがなければできないソリューションですし、TabletPCの良さを簡単にわかってもらえると思います。

「小学国語漢字ドリル辞書」の画面。ペンで漢字の書き取り練習が行える

 また、TabletPCは液晶画面を直接ペンで操作しますので、外付けのタブレットを使うよりもはるかに操作がしやすくなります。ですので、デジカメで撮った写真を外付けタブレットを使って画像編集しているユーザーなどに対してアピールすれば、その価値がご理解いただけるのではないかと思っています。

 逆に今回は、手書き認識で文字入力ができるという部分はあまり前面に出していません。

ITmedia これまでTabletPCが一般の量販店で販売されることはほとんどありませんでしたが、dynabook R10はどういったルートで販売されるのですか?

根岸 基本的には、従来の一般向けdynabookと全く同じルートで展開することになっています。もちろん販売店によって扱う・扱わないはあるかと思いますが、一般向けdynabookを販売しているショップで同じように扱われることになります。その場合には、他のdynabookと並べる形で展示されることになるかと思います。

 ただ、店頭での展示方法については難しい部分があります。dynabook R10は、単にディスプレイを開けて置いておいただけでは、通常のノートPCとほとんど見た目が変わらないということもありますので、展示方法なども含めて、TabletPCの良さをどうアピールしていくかが今後の課題だと思っています。

dynabook R10と根岸氏

ITmedia dynabook R10のプロモーションで何か考えられていることはありますか?

根岸 画面を回転させて置けるような展示台を利用することなどを検討していたのですが、販売店でのPCの展示は、ある程度形が決められてしまっているということもあって、なかなか思うようにいかない部分があります。例えば、盗難防止のために液晶パネル部分を金具で固定する量販店もありますが、そういったところでは、液晶パネル部分を回転できるようにするのは難しいと思います。

 ただ、是非ともペンの使い勝手を体験してもらいたいということもあり、ペンならではのソフトを体験していただけるようなデモンストレーションソフトをご用意しています。また、あわせて従来からやっていることではありますが、パームレスト部分に貼る販促ラベルや液晶周りに飾るポップなどに、TabletPCであることがわかるような内容をたくさん盛り込んで訴求していくということをやっていこうと考えています。

 カタログについては、従来とは趣向を変えています。従来のカタログでは、製品のスペックを前面に持っていき、アプリケーションに関しては後ろの方で小さく紹介するだけというのが基本となっていますが、dynabook R10では、ペンとアプリケーションを使ってどういったことができるのかということに多くのページを割き、スペックは後ろの方で控えめに紹介するという形にしています。

ITmedia 実際の販売に関してですが、販売店に特別にお願いしていることなどはありますか?

根岸 今回の製品は、ファミリーをターゲットにしていますので、家族連れでPC売り場に来られた場合に、お子様から親御様までこれ1台で幅広く使えますよ、ということをアピールしてもらうよう販売店様にはお願いしていきたいと思います。

 ただ、アプリケーションを含めたTabletPC特有の機能のPRなどもお願いしてはいますが、そのあたりはなかなか難しい部分もあるようです。というのは、コンシューマー向けのTabletPCはまだこれだけですので、販売員の方に機能面などを完全に理解してもらい、他のノートPCとはこういう部分が違うんですよ、といった感じで説明してもらえるようになるには、多少時間がかかると思っています。

ITmedia 例えば、東芝自らが販売店の店頭などでTabletPCを直接ユーザーにアピールするといったことはあるのでしょうか?

根岸 具体的に決まっているものはありませんが、もちろんそういったことも考えていますので、今後何らかの形で実現していきたいと思っています。

ITmedia dynabook R10の出足や反響はいかがでしょうか。

根岸 先週末(2月18日)に店頭に並んだばかりですので、出足については今ちょうど集計している段階です(※注:インタビューは2月21日に行った)。ただ、コンシューマー向けとしては新しいコンセプトの製品ですので、今の段階ではdynabookシリーズのトップ3に入るといったことはなかなか期待できないかもしれません。しかし、まだ手探り的な部分もありますが、TabletPCの良さをじわじわと訴求して、盛り上げていきたいと思っています。

ITmedia では最後に、今後のTabletPCに対する意気込みをお聞かせください。

根岸 我々もまだTabletPCの使用者像を完全には掴み切れていませんので、ユーザーの方からのたくさんの声をいただいて次につなげていきたいと考えています。また、コンシューマー向けの製品を出すことによって、企業向け製品のユーザーからも新しい声が上がることを期待しています。こういった製品のニーズは確実にあると思いますし、ラインナップの強化という意味も含めて、今後もユーザーのニーズに合った製品を開発し、提供していきたいと考えています。



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