「タブレットPCでビジネススタイルを変革したい」──富士通タブレットPC開発陣インタビューインタビュー(2/2 ページ)

» 2005年11月01日 13時20分 公開
[平澤寿康,ITmedia]
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ノート/タブレットどちらでも違和感なく使えるデザイン

「マシンのデザインは使う人の気持ちになって考えることが重要。これが我々の姿勢です」
T8210/P8210のデザインを担当した総合デザインセンター ビジネスシステム・ソリューションデザイン部 チーフデザイナー 川見充彦氏

 富士通が製品を開発する上で基本としているのが、顧客の立場に立ってデザインするということだ。顧客がどういう製品を求めているのかを常によく吟味し、押しつけのデザインにならないよう心がけているという。もちろん、今回投入されたコンバーチブル型タブレットPC 2モデルも、その考えに基づいてデザインされている。

 B5ファイルサイズのLIFEBOOK Tシリーズの開発は2003年末から始まった。T8210はTシリーズの2代目モデル(初代は欧米市場向けの製品)となるが、ノートPCとタブレットPCの使用頻度を50:50としてデザインしているのだという。

 例えば、ノートPCとしてもタブレットPCとしても違和感なく利用できるように、利用スタイルによる見た目の差異がなるべく小さくなるようなデザイン(「シングルフェースデザイン」と呼ばれている)を採用したり、本体角に丸みを持たせて持ちやすくする、タブレットPCスタイルで持ったときに邪魔にならない位置に外部コネクタ類を配置する、などだ。

 こういったことを聞く限り、LIFEBOOK Tシリーズは、ノートPCとしての使用感を損なうことなく、タブレットPCスタイル時の使用感をいかに向上させるかという方向でデザインされていると言っていいだろう。事実、見た目のデザインだけでなく、ディスプレイ部を本体に固定するラッチをプッシュ式ボタンで解除できたり、タブレットPCスタイル(縦長画面の向き)で持った場合の本体上側の位置(ノートPCスタイルでは本体左側)に空冷ファンを配置するなど、細かな部分のタブレットPCスタイルで使用する際の使い勝手や使用感を十分考慮してデザインされていることがよくわかる。


「T8210は、モバイルのタブレットPCとしても、デスクで利用するメインマシンとしても、快適に利用できる絶妙なところを狙っています」
T8210の製品企画を担当したモバイルPC事業部 第二技術部 嶋崎麻雄氏
「使いやすさを損なうことなく、持ちやすくコンパクトにまとめるという点に苦労しました」
T8210の設計を担当したモバイルPC事業部 第三技術部 佐藤正彦氏

 一方、「LOOX S」を彷彿とさせるP8210。ベースとなっているのは「LIFEBOOK LS」という前モデルだが、1キロを切る重量や8.9インチワイド液晶搭載、タッチパネル採用などの特徴はそのまま受け継ぎつつ、コンバーチブル型タブレットPCへの変更を実現している。本体角に丸みを持たせて持ちやすくしたり、ノートPCとしてもタブレットPCとしても違和感なく使えるといった基本のデザインコンセプトはT8210と共通だ。

 ちなみにP8210では、デザイン面で少々おもしろい試みも盛り込まれている。それは「オセロコンセプト」と呼ばれているもので、ノートPCスタイルではシルバーが強調され、タブレットPCスタイルではブラックが強調されるというというものだ。マシンに個性を持たせるという意味で興味深い。

P8210に盛り込まれた「オセロコンセプト」デザイン。ノートPCスタイル(上)ではシルバーが強調され、タブレットPCスタイル(下)ではブラックが強調される

 P8210はそのサイズや仕様を考えると、いわゆるビジネスノートという枠を超え、さまざまなシーンで活用できるポテンシャルを備えている。特に、サブノート的に気軽に持ち歩ける重量・サイズということもあり、対面営業ツールとして利用する機会も必然的に増えてくるはずだ。そこで、見た目のシャープさや堅牢感を表現するためにデザイン面にもこだわったのだという。


「前モデルとほぼ同じサイズ・重量の中で、前モデルの不満を改善し、さらに最新の機能を搭載するという方向で開発しました」
P8210の製品企画を担当したモバイルPC事業部 第二技術部 栗林健氏
「ラッチレスの回転ヒンジを搭載しつつ、十分な強度を確保して1キロを切る。この点はかなり苦労しました」
P8210の設計を担当したモバイルPC事業部 第三技術部 田中開悟氏

 当然だが、外形がタブレットPCとして使いやすくデザインされているだけでなく、ハード面がタブレットPCとしても通常のノートPCとしても申し分なく使えるようにしっかりと設計されているのは言うまでもない。

 例えば、ノートPCとして使う場合には、CPUパワーやメモリやHDDの容量といったスペック面は非常に重要になるが、T8210、P8210ともに最新CPUを採用し、メモリやHDDもWindows XP Professional(Windows XP TabletPC EditionはWindows XP Professionalのスーパーセットである)や各種アプリケーションが快適に利用できる容量が確保されている。ハードがしっかり作り込まれているからこそ、デザインのこだわりが大きな意味を持ってくるのだ。


まずはビジネスシーンでのニーズを高める

 T8210およびP8210は、冒頭でも紹介したようにビジネス向けモデルとして展開される。ビジネスシーンにこそコンバーチブル型タブレットPCが活躍できる場面が多いという考えがそのベースにあり、その考えに基づいて顧客にタブレットPCの有用性をアピールしていくという。

 叶氏は、「コンシューマー向けとして発売すれば、マニア層を中心に数千台レベルで一気に売れるでしょう。しかしその後も継続して一般コンシューマーの方に買っていただけるのか。そこが重要なのです」と語っていたが、確かにその通りだろう。コンシューマー向けPCが高機能でAV性能を重視したマシンで埋め尽くされている現在の状況の中では、タブレットPCの訴求ポイントは地味で、どんどん売れるという状況にはないと思われるからだ。

 しかし、それに対してビジネスシーンでは、タブレットPCの特長を活かして有効に活用できる状況がすでに数多く存在している。そういった意味で、まずはビジネスの現場にタブレットPCを浸透させていくという富士通の方針は非常に理にかなっている。

 とはいえ、完全にコンシューマー向けの展開を諦めているわけではないはずだ。ビジネスシーンでタブレットPCが普及すれば、その有用性・有効性を実際に体感する人も増えていく。その課程で、ビジネスだけでなくプライベートでも使いたいと考えるユーザーも増えていくだろう。富士通としても、そういったシナリオを少なからず考えているのではないだろうか。開発に携わった方々の話をうかがって、筆者はそのような印象を感じた。

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