「CPUを購入すればもう1つ入っています」──Quad FXプラットフォームの実力は?:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
開発コード名「4x4」で知られてきた「Quad FX」が登場した。2つ入ってこれまでのAthlon 64 FXシリーズと同じ価格のCPUがもたらすQuad FXの性能に迫る。
全体的な傾向は「Core2 Duo 対 Athlon 64 X2」に近い
それではベンチマークプログラムを利用してQuad FXの性能をチェックしていこう。今回利用したのはAMDから提供されたAthlon 64 FX-74を搭載したシステムで、GeForce 7900 GTX(NVIDIA SLI構成)を組み込んだ状態で測定している。なお、今回はAMDからの指定で、システムの構成を変えることが不可になっており、筆者のベンチマークテストで利用している構成を利用できなかった。HDDは、AMDのリファレンスシステムに「WD1500」という1万rpmのドライブがRAID 0構成になっているが、ほかに同じHDDが用意できなかったので比較対象のCore2 Extreme QX6700搭載システムは、同じ1万rpmのドライブながら世代が前になる「WD360」でRAID 0を構成している。厳密に言えば、同じ環境ではないが、かなり近い環境、ということで結果を見ていっていただきたい。
比較対象として用意したのは、前述の通りCore2 Extreme QX6700だが、チップセットはインテル標準のIntel 975Xではなく、NVIDIAのnForce 680i SLIとなっている。これは、AMDの評価構成がGeForce 7900 GTXのNVIDIA SLI構成であったためで、インテル側でもNVIDIA SLIを構成するために「nForce 680i SLI」搭載マザーを利用することにした。このため、HDDへのアクセスなどのチップセット側の性能は、AMDとインテルでほぼ同じで、主にCPU性能の違いをチェックしやすいと言える。
ベンチマーク結果は以上の通りだ。なお、すでに述べているように、この結果は普段筆者は行っているベンチマーク環境とは異なっているので、以前の結果とは互換性はないので注意していただきたい。
ここでは個々の結果よりも、全体的な傾向を述べるにとどめたいが、やはりクアッドコアになってもCore2 DuoとAthlon 64 X2を比較した結果に近い傾向になっている。基本的にはすべてのベンチマークで、Core2 Extreme QX6700が、Athlon 64 FX-74を上回った。
なお、注意が必要なのは、TMPGencの結果で、このテストでは通常のベンチマークのように、TMPGenc本体でエンコードするのではなく、TMPGencのパッチエンコーダを利用してベンチマークしている。というのも、WMVエンコードの場合、Windows Media側の制限で、2スレッドまでしか利用されないからだ。このため、デュアルコアとクアッドコアではあまり差が出ないことになってしまう。しかし、パッチエンコードを利用して、2つのエンコードを同時に実行すれば4スレッド処理が可能になり、本来の性能を発揮させることができる。そこで、クアッドコアに関しては、パッチエンコードを利用して2つのスレッドを同時に処理させ、その平均時間をタイムとし、デュアルコア(Core2 Extreme X6800)に関しては、エンコードにかかった時間を倍にしてフレームレートを“仮想的に”出してみた。あくまで、クアッドコアのフレームレートは、同時に2つのエンコード処理を行った場合の性能ということになるが、条件をきちんとそろえればこの程度の性能はでるのだという参考にして欲しい。
最大のメリットはデュアルソケット環境が「安価に」入手できること
以上のように、絶対性能という観点で見れば、Athlon 64 FX-74でAMDが王座を奪回したかと言えばそうではないのはベンチマークを見て分かるとおりだ。だからといってQuad FXはすごくないのかと問われれば、否と言いたい。エンドユーザーにとって最大のメリットは、デュアルソケットというこれまではサーバーやワークステーションに限られていた環境を、デスクトップPCでも利用できるというてんだ。とくに、メモリにデスクトップPCと同じUnbufferedのDIMMが利用できる点は、コストパフォーマンスから賞賛に値する。仮にインテルでデュアルソケット環境をつくろうとした場合、FB DIMMというかなり高価なメモリモジュールを利用しなければならないことを考えると、Quad FXのアドバンテージは小さくないと思う(逆に言うと、Unbuffered DIMMが使えるデュアルKentsfieldマザーボードを、インテルはなぜつくらないのかと思うのだが)。
CPUの価格面でも、2つのCPUを1つのCPUの値段で買えるという点もメリットとして挙げられる。よく米国では“1buy、2Get!”(1つ買うともう1つオマケでついてきます、という意味)というキャンペーンをやっていて、“タダ”でもう1つもらえるというのが大好きな国民性なのだが、そうした消費者心理もうまくついているし、AMDの収益にあたえる逆のインパクトには目をつぶれば、「消費者にとって」はかなり美味しい話ではないだろうか。
はっきり言ってクアッドコアも、一般的なPCの使い方(Webやオフィスソフト)ではメリット皆無だし、4つのGPUも株取引やらない人にはあんまりメリットないだろう。しかし、エンコードのようなスレッドをたくさん発行するタイプのアプリケーションを多用しているハイエンドユーザーにはメリット多いし、4つのGPUも将来はNVIDIAがもしかしたら将来NVIDIA SLIで利用できるようにしてくれるかもしれない。
また、AMDが来年リリースを予定しているクアッドコアCPUの“Barcelona”(バルセロナ、開発コード名)を利用することで、将来的には8コアに拡張することも可能になるという(8x4だ!)。
こうした将来の拡張性にも目を向ければ、Quad FXはかなり魅力的なプラットフォームだと言っていいだろう。ただ、今のところ提供予定のベンダは日本では製品を提供していない米国のALIENWAREで、日本でいつ入手できるようになるかは明確ではない。日本でも早期に提供してくれるベンダが現れたり、秋葉原でパーツ単位で買えるようになることに期待したい。
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