“PCにEdyを載せる”プロジェクト、半年経った今、現状と課題は……? (2/2 ページ)
PCにFeliCaポートを内蔵し、ネット決済をEdyで簡単に――インテル、ビットワレット、マイクロソフトの3社が進めるプロジェクトが始まってから約6カ月が経過した。当初の目標は達成できたのだろうか。
“PCでEdy”今後の課題は?
決済時に「かざすだけ」で済むEdyには、小銭をやりとりしなくてよいだけでなく、本人認証もできるという大きなメリットがある。パスワードやIDを入力したり、クレジットカードの番号を入力したりするのに比べ、はるかにユーザーの手順が簡単になるEdyは、確かにネット決済に向いている。しかし一見順調そうな本プロジェクトにも、課題はある。
1つは、FeliCa対応のリーダー/ライターの普及がまだまだだということだ。2006年度上期の国内PC出荷台数は621.5万台(11月30日の記事参照)。一方、FeliCaポート内蔵PCの出荷台数は、増えたとはいえ半年間で約75万台しかない(2006年6月から12月頭までの数字)。調査期間が違うので単純計算はできないが、FeliCaポートを内蔵したPCはまだまだ“珍しい”存在である。
また、現在FeliCaポートを内蔵したコンシューマ向けPCを出荷しているのはソニーとNECの2社しかない。「秋モデルで追加され、今後はほとんどの日本メーカーから(FeliCaポート内蔵のPCが)出てくる」(インテル)とはいうものの、非接触ICのなかでもFeliCaは日本発の規格であり、特にヨーロッパや米国では認知度が低いため、デルやヒューレット・パッカードといった海外メーカー製PCにFeliCaポートが内蔵される可能性はほとんどないのが現状だ。
FeliCaポートを内蔵するとなれば、その分のコストも発生するが、本プロジェクトでは3社ともそのコストを負担していない。そのため内蔵していない製品に比べ、どうしてもリーダー/ライターを搭載したPCの価格は高くなってしまう。ちなみに、PCにUSB接続して利用するFeliCaリーダー/ライター「PaSoRi」の販売価格は2000円台。内蔵タイプはもちろん同じ値段ではないが、PC購入時にFeliCaポートの有無を決めてとするユーザーがほとんどいない現状では、これは大きなマイナス要因になる。
もう1つ気になったのは、これまでPCを使わなかったシニア層へアピールするには、ソフト面での使い勝手の大幅な改善が必要になるが、マイクロソフトはその役割を担いそうにないということだ。
今回の実証実験では、タッチパネルを使ってネットショップへアクセスし、そこでEdyをかざして決済を行うため、“キーボード&マウスで細かい操作を行わなくても商品を買える”というところがメリットになっている。しかしEdy対応サイトまでタッチパネル操作でたどり着けたとしても、実際に何か買おうと思えば、住所や名前、電話番号の入力といったキーボード&マウスでの操作が欠かせない。オンラインサービスの利用に必要な操作を本当に簡単にし、誰にでも使えるものにするためには、ソフト面の作り込みが不可欠だ。
実証実験ではインテルがポータルを制作していたが、オンラインサービスへ誘導する目的があるのなら、Internet ExplorerなどWebブラウザがその役目を担うのが自然だろう。また、デジタルコンテンツの購入であれば、Windows Media PlayerなどのプレイヤーがEdy決済に対応していく必要も出てくるはずだ。しかし本プロジェクトでマイクロソフトが担う主な役割は「FeliCaポート用ドライバのVista対応支援」。Internet ExplorerやWindows Media Playerといった同社製ソフトの作り込みまでは言及していない。
なお、マイクロソフトが提供している、キーボード&マウスを使わないオンラインショッピング用UIとしては、Media Centerの機能である「メディアオンライン」(2005年10月26日の記事参照)がある。物販ではなく、デジタルコンテンツをMedia Center対応リモコンで購入できる機能だ。今後、メディアオンラインにサービス提供している事業者がFeliCa(Edy)対応する予定とのことで、マイクロソフトは「リモコン操作が可能なMedia Center搭載PCで、FeliCaポート対応のVista対応マシンがこれから出てくる」と期待を寄せている。
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