「あらやだ、中国製なのこれ」──上海セレブにみる中国富豪のIT事情:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
中国奥地のIT事情には涙が止まらないが、上海は高級舶来PCやPSPであふれていた。「お、同じ国ですか」と思うほどに異なる中国最先端都市の電脳街を紹介しよう。
Best Buyにオタクビル、上海だからMacも買える
先に述べたように、徐家匯の電脳街に「Best Buy」(百思買)の中国1号店が登場した。中国のPCショップでは、店に入ると同時に接客員がやってきて説明を始めてしまうので、客が商品をゆっくり吟味できなかった。これは中国の商習慣であるため、PCショップだけでなく、雑貨店や駄菓子屋に入っても状況は同じだ。ところが、Best Buyは店員の説明を行わないので商品をじっくり試すことができる。客が自分のペースでじっくり製品を見て触れられる、中国で初めての、実に画期的な販売店がBest Buyによって出現したことになる。
Best Buyは家電量販チェーンなので、PCだけでなく、AV機器や白物家電、携帯電話、ゲーム機も扱っている。上海に店を構えただけあって、品ぞろえは有名ブランドや高級品が中心で、中国メーカーの製品は、外資系メーカーが中国で扱わないデスクトップPC以外に見当たらない。ゲーム機は中国で唯一販売が公に許可されている、任天堂の中国向けゲーム機「神遊機」(NINTENDO64)やゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDS「のみ」を扱っており、ソニーやマイクロソフトの製品は影も形もない。米国発のチェーン店だから、Apple製品ももちろん販売している。ちなみに今後Best Buyは2号店として南京に出店する予定だ。
Appleの製品は、iPodやMacを問わずBesy Buyや電脳街だけでなく、ショッピングモールや、カルフールなどのスーパーマーケットにあるPC売り場でも扱っている。中国のほかの都市でApple製品を買える店がごくわずかであることとは対照的である理由の1つが、多数滞在している外国人と、高額商品をためらうことなく購入してしまう豪気な高所得中国人の存在だ。
スーパーマーケットや電脳街に見る上海とそのほかの地方都市の違いは、このような街に溢れるApple製品だけでない。TVにしても、シャープ、日立製作所、松下電器産業、ソニー、Samsungなどの薄型テレビばかりが目立つコーナーで販売されていて、中国製家電は片隅に追いやられている。これも、給料数カ月分をIT機器に費やすことをいとわない、かつ多数の高所得層が存在する上海だけに見られる典型的な現象だ。
上海にはフィギュアやプラモデル、ゲームのみを扱う店が集中するビルも存在する。フィギュアなどを扱う店なら、どこの地方の大都市にもあるが、そういった店だけで1つのビルが形成されてしまうのは、上海ぐらいである(“大陸”に限定しなければ香港にも同種のビルがある)。
そのビルの最寄駅はハイソな雰囲気で知られる地下鉄2号線「静安寺」駅だ。ショッピングストリートで知られる「南京西路」を西に進んでいくと右手に見えてくる「弦動楽百城」という建物がそれだ。その1階と2階がフィギュアゾーンとなっている。ちなみにこのビルがこのようになったのは3年前のことだ。移り変わりの激しい上海において3年続くというのは実にたいしたことで、フィギュア文化が上海に根付いた証拠と見ることもできる。
中国の山間部は100年前の写真に写る風景と区別がつかないところもあるが、進化の最先端を行く上海は、その変化の速度も早い。この夏休みに上海へ行こうという人にはここで紹介する話は意味のある情報であるが、数年後には、まったく時代遅れの記事になっている可能性も高い。これはあくまで2007年の「夏限定」ということでよろしく、なのだ。
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