北京五輪まで1年を切ったレノボの北京本社に行って、見た!:ThinkPadの“本丸”はココ(2/2 ページ)
北京オリンピック2008のワールドワイド・パートナーをつとめるレノボ。北京郊外の“シリコンバレー”にある本社ビルを訪れた。
北京プラントではコンシューマー向け/法人向けデスクトップPC、サーバを生産
レノボは、中国国内では北京、上海、恵陽、シンセン、厦門(アモイ)の5つのプラント(工場・生産設備)を持っている。北京プラントではコンシューマー向けデスクトップPC、法人向けデスクトップPC、サーバを受け持ち、上海、恵陽、シンセンの3拠点ではコンシューマー向けデスクトップPCと法人向けデスクトップPC、ノートPC、恵陽ではこれらに加えてプリンタやデジタルミュージックプレーヤーなどのデジタル製品の生産を担当する。ThinkPadシリーズなどのハイエンド製品はシンセンでのみ生産されている。なお、厦門は携帯電話専用のプラントだ。
中国国外ではブラジル、チェコ、ハンガリー、インドに稼働中のプラントがあり、さらには2008年中に米国、メキシコ、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域)に新プラントがオープンする予定という。
北京プラントは、レノボ メインオフィスの3階と4階の2フロアを占めている。下層階は無人操業の梱包ライン、上層階は流れ作業による組み立てラインと、多様なテストや出荷に関するマネージメントを行うラボだ。また、プラントの奥にはパーツ倉庫が併設される。
各ラボは、小さな部屋の中で無人~数人程度の従業員のみで操業されており、クライアントからの直接注文と、マーケティング部門が予測する出荷オーダーの両方を管理するほか、生産される各PCにシリアルナンバーを割り振る「Information Team」、システムごとに異なるインストールイメージを作成してテストを行うラボ、生産状況のモニタリングを行う「Analysis Lab」、ハードウェア的な故障の原因を突き止める「Joint Failure Analysis」、組み上がったPCにインストールイメージをコピーするサーバが設置されたサーバルーム、「Counter Strike」や「Diablo」などのゲーム、TV視聴アプリケーション、オフィスアプリケーションなどを使って実際のユーザーの動作を想定したシナリオに沿って、タスクを実行してPCに問題がないかを確認する「Customer Simulation Assuarance」などがある。
パーツ倉庫は、幅40メートル、奥行き24メートル、2階建てぶんの吹き抜けの空間に76列の棚が設置され、デスクトップPC約10万台分のパーツが収納可能だ。これらのパーツの管理は、以前は100人以上によるオペレーションが行われていたが、SAPの統合エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)パッケージを参考に、レノボが独自開発した在庫管理システムを導入することにより、現在ではわずか5人のスタッフによる集中管理を実現している。しかし、それでもやはりパーツが足りなくなる事態がごくまれに発生するようだ。なお、倉庫の壁には防火素材が使われていた。
組み立てを行うのは、全自動化された無人の生産ライン2本とBTOに対応する手動のセル方式の生産ライン3本だ。セル方式の生産ラインでは1台ごとにパーツ構成が異なるため、迅速、かつ確実に組み立てが行えるように各所で工夫が見られる。具体例を挙げると、パーツリストをスキャンするとパーツが置かれた棚にランプが点灯して必要なパーツが一目でわかるようになっているほか、実際に組み立てを行うセルではパーツリストをスキャンするとモニターに組み立て方法が表示される。
また、作業の進捗状況を示す青・黄・緑のランプが各セルの上部に設置され、どのセルで遅延が生じているのかがリアルタイムでマネージャに伝わるようになっている。なお、1台のデスクトップPCの組み立てにかかる時間は平均7分、最短記録は5分で、北京プラントの月産台数は12万台という。なお、受注から出荷までの平均日数は約7日間で、完成品の在庫は一切持たないとのことだ。
北京プラントで組み立てを行う従業員は、義務教育終了後にレノボによって選考が行われ、3年間の教育と半年間のトレーニングを経て実務に就く。平均年齢は21歳、男女の割合は半々で、同じセルでペアを組んで作業にあたる男女が実際のカップルとなる例も少なくないそうだ。
プラント内は整然としていて、日本の製造業やサービス業などで生まれた「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の概念やセル生産方式が取り入れられているなど、洗練されたイメージを受けた。
中国国内でのサポート電話は1日3万件にものぼる――コールセンター
レノボは、中国国内ではオンライン、電話、オンサイトによる製品サポートを提供しており、サポートサイトは1日50万件のアクセス、電話による問い合わせは1日3万件にものぼるという。これらの電話による問い合わせに対応するのが、本社内に設置された中国国内向けのコールセンターだ。
コールセンターは、メインオフィスから道路を渡ってすぐのビルの4階から6階までの3フロアにある。このコールセンター内では700本ものIP電話回線を通じて約600人のオペレーターがサポートを行っている。
サポートセンターに着信した電話は、2~3分以内にオペレーターによって対応がなされ、それでも問題が解決しない場合はエンジニアによって2時間以内に解決法が示される1.5次サポート、さらには上位エンジニアによる2次サポートが受けられる。オンライン、電話、オンサイト対応のいずれもがサポート事例のデータベースをリアルタイムで共有し、より迅速な回答ができるようになっている。また、トラブルシューティングだけでなく購入前の相談も受け付けており、1回のユーザー登録だけで相談から注文、購入後のサポートまでをシームレスに利用可能だ。
中国国内のレノボ製PCでは、2時間以内に問い合わせへの回答を行い、翌日のオンサイト対応・修理を365日提供する「2×2×365」サポートがデスクトップPCに付属している。このほか、購入後にエンジニアが自宅を訪れてPCの設置からセットアップまでを行う「Door to Desk」サービスや、PCの基本的な使い方を教える「Desk to Brain」サービスも用意されている。
修理対応については、中国国内に1063カ所のサービスセンターがあり、5700人のエンジニアが作業にあたる。また、北京と中国南部の2カ所に中央倉庫、13カ所の地域倉庫、300カ所の地方倉庫があり、修理用のパーツを取り寄せにかかる日数が最小限に抑えられている。
コールセンター内部の様子は、パーティションで区切られたブースにオペレーターが1人ずつ着席し、次々と着信するコールに対応し、さらには壁の電光掲示板にセクションごとに対応待ちの呼び出しが何件あるかがリアルタイムに表示される。オペレーターは各大学を卒業後に1カ月トレーニングを受けた人材で、その大半が男性だ。トレーニング期間中は毎週試験が行われて知識を問われるほか、ブース内の壁には鏡がかけられ、太陽のように朗らかな対応を意味する「Sunshine Service」を提供できるよう細心の注意が払われている。
レノボのコールセンターの評価は高く、2003年から2006年までの4年間連続で中国最大のIT関連分野の調査・コンサルティング機関であるCCID Consultingから中国企業で1位の評価を獲得し続けているという。また、2006年のトリノ冬季オリンピックに続き、2008年北京オリンピックへのアウトソーシングも行われるとのことだ。
各建物の内部撮影ができなかったのは残念だが、今回は普段はなかなか訪れることができないレノボ本社の模様をお伝えした。今後、数回にわたって2008年の北京オリンピックと聖火リレーのワールドワイド・パートナーをつとめるレノボの現状をお伝えする予定だ。楽しみにしてほしい。
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