“宣言することに意義がある”シーゲイトのSSD参入
日本シーゲイトは9月7日に新製品を発表し、同日国内の関係者に向けた説明会を行った。そこでは、先日参入を表明したSSDへの取り組みについても言及した。
“問題提起”から”参入”に転じたシーゲイトCEOのSSD観
新製品説明会で、日本シーゲイト代表取締役社長の小林剛氏は、8月にシーゲイトCEOのビル・ワトキンス氏が明らかにした「SSD参入」について、シーゲイトの考えを説明した(なお、このソースは雑誌のインタビューにおける発言で、シーゲイトのSSD参入に関して同社から正式なリリースは2007年9月初めの時点でまだ出されていない)。
小林氏は、シーゲイトの考えるフラッシュメモリとHDDとの関係について「1対1の競合ではなく、フラッシュメモリはHDDの敵でもない。それぞれが長所を持っていて、優れたところを取り込むことでストレージのビジネスを成長させる」と述べる一方で、「フラッシュメモリベースのデバイスで利用するコンテンツのデータは、PCに保存されたHDDから持ってくることになる。フラッシュメモリを搭載したデバイスが普及するほど、HDDの需要を喚起することになる」と、将来においてもデータストレージの圧倒的多数がHDDであるとの考えを強調している。「HDDとSSD、フラッシュメモリは、それぞれが補完しあって進化していく」(小林氏)
シーゲイトは、SSDベースの製品を2008年に投入するとしているが、価格のイメージや容量、どのカテゴリーから投入して行くのかといった具体的な計画について、説明会では「まだ未定」と明らかにしていない。また、SSD参入を示唆したワトキンス氏本人が、日本で行ったインタビューで、SSDの否定的な意見(SSDの技術的なメリットに現実的な意味はないことや、データ書き込み回数に関する問題など)を述べていたが、そこで示された見解と、今回のSSD参入発言の関係についても、とくにコメントは示されなかった。
新製品の出荷は2007年第4四半期から2008年半ば
日本シーゲイトが説明会で紹介した新製品は、「Maxtor OneTouch 4」ファミリー、Cheetah 15K.6、Momentus 5400.4、Barracuda 7200.11 FDE、DB35.4、SV35シリーズ、D.A.V.E.ファミリーの7製品。このうち出荷が最も早いとされているMaxtor OneTouch 4ファミリーが2007年第3四半期に、次いで、Momentus 5400.4が2007年の第4四半期、Cheetah 15K.6、SV35、DB35.4が2008年第1四半期にそれぞれ出荷される。最も遅いBarracuda 7200.11 FDEは2008年の中頃というスケジュールが示された。なお、今回発表された製品群の日本市場における展開は現在検討中で、このすべてが日本で出荷されるとは限らない。
なお、D.A.V.E.ファミリーは周辺機器ベンダーでサンプルの評価作業中とされているが、D.A.V.E.を採用した製品が出荷される時期の見通しについては「明らかにできない」と日本シーゲイトは説明している。また、そのほかの製品についても、出荷までまだ時間があるため、容量、インタフェース、キャッシュ容量、回転数などの主要項目以外のスペックで具体的な数値は示されなかった。
Maxtor OneTouch 4ファミリーは、バックアップ用の専用ボタンを設けて簡単な操作を実現した外付けHDD機器シリーズの最新モデルで、その筐体サイズと容量から「Maxtor OneTouch 4」「Maxtor OneTouch 4 Plus」「Maxtor OneTouch 4 mini」の3製品が用意される。
従来の製品でも採用されていた「バックアップ」「同期」「セキュリティ」機能に加えて、Maxtor OneTouch 4では「Maxtor SafetyDrill」と呼ばれる新機能が登場する。これは、従来モデルで実装されていた「Maxtor Backup」を発展させたもので、Maxtor Backupが、HDDのデータファイルのみをバックアップするのに対して、Maxtor SafetyDrillは、ファイルだけでなくインストールされているアプリケーションやその設定、OSイメージのバックアップとリストアに対応する。
ノートPC向けの2.5インチ厚HDDの「Momentus 5400.4」は最大容量250Gバイトモデルが登場する。Momentus 5400.4は、第2世代の垂直磁気記録技術を導入しており、スライダーサイズの微細化が進むなどのブレイクスルーによって、記録密度は240Gビット/平方インチを実現しただけでなく、耐衝撃性能も非動作時で900G、動作時で325Gを実現している。
「Barracuda 7200.11 FDE」は、すでにノートPC向けの「Momentus 5400 FDE」でも導入された、ハードウェアベースのセキュリティ技術「FDE:Full Disc Encryption」を採用する。FDEでは、暗号化アルゴリズムにAES(Advanced Encryption Standard)を採用してHDDの全領域を暗号化する。
「Cheetah 15K.6」は、企業用基幹システムのストレージデバイスとして使われるHDDで、最大容量は、従来のCheetah 15K.5の300Gバイトから450Gバイトに増やされ、MTBFも1400万時間から1600万時間と向上した。また、最近強くなっているデータセンタの消費電力削減志向に応ずるために、省電力技術「PowerTrim」を導入する。これは、HDDのステータス(read、write、seekなど)ごとに、使用する回路を特定し、使われていない部分への電力を細かくカットすることで消費電力を削減すると、日本シーゲイトフィールドアプリケーションエンジニアリング部の佐藤之彦シニアマネージャーは説明している。
DB35.4、SV35シリーズ、D.A.V.E.ファミリーはいずれも家電機器に組み込まれるHDDで、DB35.4はDVR用に1Tバイト級の大容量デバイスが用意される。SV35は、監視カメラシステムに組み込まれるHDDで、長時間連続書き込みを前提として開発されている。D.A.V.E.はBluetooth 2.0、もしくはIEEE802.11g/bといったワイヤレス規格で本体と接続する外付けHDDで、最大60Gバイトのドライブが登場する予定になってる。ただし、D.A.V.E.を採用した製品はすべてOEMに出荷される予定でエンドユーザーが直接D.A.V.E.対応HDDを購入することはできない。現在、OEMベンダーで評価作業中とのことだが、具体的なベンダー名や製品が登場する時期については明らかにされなかった。
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