中国ネットカフェの“デンジャラス”な宿泊事情:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(3/3 ページ)
日本では「安価な宿泊場所」として長期滞在者が増えつつあるネットカフェ。日本以上に生活と密着している中国ネットカフェの「居住性」を紹介する。
ワレ、街はずれのネットカフェで終夜苦悶セリ
夜が更けたころ、人気のネットカフェを出た。終バスに乗って、その街のはずれにある住宅地へ向かった。何のあてもなく終バスに乗ったが、運良くネットカフェを発見した。人通りも絶えて寝静まった住宅地でキラキラと輝くそのネットカフェは、多くの若者が利用してほぼフル稼働状態であることがドア越しからも確認できる。夜11時15分、そのネットカフェに足を踏み入れた。
中国のネットカフェにも、中国語で「通宵」(トンシャオ)と呼ぶナイトパックが存在する。筆者が利用したネットカフェでは、一般席の通宵が朝9時までで10元(150円強)、ワンクラス上の席が朝9時までで15元(約230円)となっている(店員からは「10元の手前の席と15元の奥の席とどちらがいい?」と質問された)。このネットカフェもお金を払うだけで、パスポート番号の登録なしに利用できた。
使えるかもしれない中国語:お泊まり編
日本文:ご休憩
中文 :休息
発音 :「しゅうし」
日本文:ご宿泊
中文 :投宿
発音 :「じゅうすぅ」
日本文:徹夜
中文 :通宵
発音 :「とんしゃお」
ネットカフェのなかはほとんどが男性だ。女性はカップルで少数がいるだけ。皆ヘッドフォンをつけ、思い思いに音楽を聴きつつ、ゲームをしたり、チャットをしたりしている。深夜というのに周りを気にせず騒ぐ輩もいる。
この15元という価格は、中国の簡易宿泊所こと「招待所」や「旅館」とそう変わらない(ただし、一般的に外国人は招待所や旅館には泊まれないことに注意されたし)。足を伸ばしてゆっくり寝るならネットカフェより招待所のほうが安眠できる。日本ではネットカフェを定宿とする人たちのことがようやく問題化されているが、その理由は宿泊施設より宿泊代が安いあたりに一因がある。しかし、招待所に泊まる値段とネットカフェを夜通し利用する値段が同じ中国において、ネットカフェで一夜を過ごすということは、徹夜して遊ぶことを意味する。
零時を過ぎると女性客がいなくなった。ほかの面々はナイトパックを利用するのだろうか、大通りでも車が姿を消したというのに、ネットカフェの中は思いっきり盛り上がっている。
未明の2時。誰もがオンラインゲームで遊んでいる。寝る人はいない。3時になっても4時になっても、ネットカフェのつわものどもは、睡眠をとらずにひたすら遊び続けている。3時を過ぎたころ、店員がパンとホットミルクを利用者全員に無料で“配給”した。そんなサービスを期待していなかっただけに、不覚にも筆者はパンと牛乳に感動するのであった。
家でも靴を履いたまま生活する習慣を持つ中国では、礼儀上、公共の場所で靴を脱ぐことは大変恥ずかしいこととされてる。とはいえ、ネットカフェでひと晩中靴を履き続けるのはなかなか厳しい。しかし、ずっと靴を履き続けているだけに、いったん靴を脱ぐと「匂いがキツイ」といわれているが、そういう、靴を脱ぐ人から漂うほのかな香りは、なかなか我慢ならないものがある。
足の臭気もさることながら、喫煙ルールなし、深夜に騒ぐ人あり、スペースは狭いのに隣との仕切りがない、こういう中国のネットカフェを宿代わりにするのは「耐え難きを耐え」なければならなくなる。睡眠を重視したいならば、ネットカフェのナイトパックではなく、24時間営業のマクドナルドで仮眠を取ることを強くお勧めする。
……といいながら、睡魔に負けた筆者は4時半の記憶を最後に6時まで寝てしまった。近くの利用者の叫び声で飛び起きた筆者は、安眠できる場所を探すために、ネットカフェから撤退して、始発バスの時間を確認するのであった。
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