“G92”世代「GeForce 8800 GTS 512M」の微妙な立ち位置を探る:イマドキのイタモノ(4/4 ページ)
「価格は半分なれど性能差はわずか」という衝撃のGPU“GeForce 8800 GT”の上位モデルが登場する。昔から微妙な“GTS”の意味付けはどう変わるだろうか。
やはり、気になるのは“GTS”の「微妙な立ち位置」
ベンチマークの結果からは、「GeForce 8800 GTXには届かないけどGeForece 8800 GTよりは上。しかし、オーバークロック設定の“GT”には追いつかれる」という序列が見えてきたが、ベンチマークテストの結果における3者の差の「絶対値」はわずかで、「世界が変わる!」ほどの違いは、GeForce 8800[GTX|GTS|GT]にはないと考えていい。ただ、搭載するグラフィックスメモリの差によって、2560×1600ドットという超高解像度のベンチマークテストにおいて、GeForce 8800 GTS 512MはGeForce 8800 GTと同様、「まともに動かない」という状況に陥るケースがあった。しかし、それも、現時点におけるPCユーザーのディスプレイ環境を考えれば、GeForce 8800 GTS 512Mの致命的な欠点とはいえないだろう。
パフォーマンスの違いは“わずか”だが、価格差は、ずいぶんとはっきりとしている。7万円後半から8万円という実売価格を維持してるGeForce 8800 GTXに、3万円台後半と実売価格がなかなか下がらないばかりか、最近では上昇傾向にあるというGeForce 8800 GTにたいして、GeForce 8800 GTS 512Mは、5万円前後という実売価格で製品が出荷されるようだ。ベンチマークテストの結果で示した差以上に、価格差は大きい。
GeForce 8800 GTS 512Mの脅威となるのは、やはり、GeForce 8800 GTだろう。オーバークロック設定状態でほぼ拮抗するGeForce 8800 GTはリファレンスデザインで採用しているクーラーユニットの問題で、オーバークロック動作に不安を感じるユーザーも多いという現状ではあるが、それでも、ベンダーが動作を保証するオーバークロック設定の製品は出荷されており、GPU自体にそれだけのパフォーマンスマージンがあるということは、クーラーユニットの問題さえ解決できれば、3万円台後半で5万円前後の製品に匹敵するパフォーマンスを発揮できてしまうことになる。
カードベンダー(今回取り上げたXFXやELSAではない)からは、「GeForce 8800 GTS 512Mの扱いは難しい」という声も少なからず聞こえてくる。GeForce 8800 GTとの明確な差別化を図るために、「NVIDIA SLIコネクタを2つ用意する」「グラフィックスメモリで640Mバイト搭載バージョンを用意する」という策もあるかもしれないが、そうすると、今度はGeForce 8800 GTXとの差別化が難しくなるかもしれない(GeForce 8800 GTS 512MのPureVideo HDが第2世代であるだけに)。
GeForce 8800 GTよりパフォーマンスの絶対値が高いGPUを求めていて、ユーザーのディスプレイ環境が最大1920×1200ドット、そして、将来登場するとみられている「2枚以上のカードを使ったNVIDIA SLI」構成に関心がないなら、GeForce 8800 GTS 512MはGeFroce 8800 GTXよりいい選択肢となるだろう。しかし、価格差にして1万5000円程度とみられるGeForce 8800 GTとの差がわずかであることを「納得」しておくことが、購入したあとで後悔しないためには必要だ。
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