「Radeon HD 3870 X2」は1枚の価格で2個分の性能を発揮できるか:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
Radeon HD 3000シリーズの最上位ラインアップとなる「Radeon HD 3870 X2」がAMD(ATI Technologies)から発表された。“鬼門”のデュアルGPUはユーザーに受け入れられるだろうか。
その実力はGeForce 8800 GTXを超える(ただし条件付き)
比較対象には、GeForce 8800 GTXとGeForce 8800 GTS(G92世代)、そして、Radeon HD 3870の測定データを用意した。なお、一部のデータではこれまでのレビューで紹介した測定結果も使っている。評価システムの構成も、過去の測定結果と比較しやすいようにAMDが提唱する「Spider」プラットフォームではなく、Core 2 Extreme QX6700とnForce 680i SLIを基幹とした。
CrossFireが有効に、もしくは、効率が高いベンチマークテストにおいて、Radeon HD 3870 X2の測定結果はシングルGPUの構成を軽く上回る。この傾向は、3DMark06の3DMark Score、同じくHDR/SM3.0 Score、ゲームベンチマークテストでは、Crysis Single Play demoのDirectX 10設定、Company of Heroes 2.103.0、Unreal Tornament 3(vCTF-Suspense FlyThrough-PC、DM-ShangriLa-FPS-PCのどちらも)の重負荷条件で顕著となる。
ただし、CrossFireがそれほど効果的に機能しないゲームベンチマークの結果では、この優位性は確認できない。主にDircetX 9モードで動作している条件においてこの傾向は明らかとなる。それでも、負荷が重くなるにつれて「実売価格相当」の序列、「GeForce 8800 GTXの下」「GeForce 8800 GTSの上」という立ち位置に落ち着く。
実売価格で並ぶ「GeForce 8800 GT×2枚」と比較する
搭載できるプラットフォームを選ばない「グラフィックスカード1枚構成」の環境で比較した場合、Radeon HD 3870 X2は、「最低でも実売価格相当、うまくすれば、GeForce 8800 GTXを超える」実力を見せてくれる。単体のグラフィックスカード構成で最も高い性能を発揮するのがRadeon HD 3870 X2と評価しても(現時点では)かまわない。
ただ、同じマルチGPU技術を利用するという視点で「NVIDIA SLI構成」と比較した場合、その優劣はどのようになるだろうか。特に、GeForce 8800 GTは2枚組みの実売価格がRadeon HD 3870 X2にほぼ匹敵する。そこで、GeForce 8800 GTと、実売価格的にこちらも同じになる旧世代GeForce 8800 GTS(320Mバイト)のNVIDIA SLI構成とRadeon HD 3870 X2のベンチマークテストの結果を比較してみる。
マルチGPU環境で比較した場合、価格が一つ上のグレードになるGeForce 8800 GTS(512Mバイト)にかなわないのはいいとして、価格帯が同じになるGeForce 8800 GTのNVIDIA SLI構成も下回ってしまう。これは、CrossFireがそれほど有効に機能しないDirectX 9世代のゲームベンチマークの結果だけでなく、マルチGPUの有効構成が顕著に表れやすい3DMark06の結果でも同様だ。
グラフィックスカード1枚、という汎用性の高い構成において、Radeon HD 3870 X2は現時点における最強のグラフィックスカードとなりうる。ただし、それは、ゲームがCrossFireを有効に活用している場合に限られる。今回行った評価の結果に限っていえば、DirectX 10に対応し、かつ、CrossFireに対応していると思われるゲームタイトルをプレイするユーザーであれば、Radeon HD 3870 X2は有力な選択肢となるだろう。インテルプラットフォームのユーザーなら、Radeon HD 3870 X2を導入することで、3D性能を格段に向上させることが可能になる(条件さえ満たせば)。
これまで、なかなかメジャーになれなかったデュアルGPUのグラフィックスカードだが、この「コストパフォーマンス」なら、より多くのユーザーに「キワモノではない、普通のハイエンドグラフィックスカード」として受け入れてもらえるのではないだろうか。
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