Macで使えるキーボード選びに四苦八苦:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
Mac環境の本格運用を開始したものの、キーボード選びで予想以上に悩まされた。その一部始終をまとめた。
有償のキーボードドライバを導入してみる
1980年代半ばに、PC/AT互換機のユーザーになって以来、基本的に英語キーボード(英語キーボードベースのAXキーボードを含む)を使い続けてきた筆者だが、その前は日本語キーボード(JIS配列)のマシンを使っていたこともある。また量販店で購入したMacBookのキーボードは当然のことながら日本語配列だ。できれば英語配列が好ましかったが、日本語配列ではキーをたたけないというほどではない。
結局、今、この原稿を書いているのに使っているのはRealforce91Uだ。ところが、そのままでは無変換キーや変換キーなど、アップルの日本語キーボードとスキャンコードの異なる日本語関連キーは利用できない(実際は「a」が入力されるなど、むしろ不具合が生じる。下記表を参照)。このままではわざわざ日本語キーボードに変更する意味がない。日本語関連キーを活用するため、トリニティーワークスのWinK for OSXと呼ばれるキーボードドライバ(有償)を組み合わせることにした。
WinK for OSXにはWindowsキーありの日本語キーボード用と英語キーボード用、Windowsキーなしの日本語キーボード用と英語キーボード用の計4バージョンあるが、筆者の場合Windowsキーのあるジャストシステム版のRealforce91UにWindowsキーなしの日本語キーボード用WinK for OSXを組み合わせて使っている(というより、これができることが91Uを使っている理由だったりするのだが)。Windowsキーありの日本語キーボード用ドライバだと、変換キーがスペースになってしまうのに対し、Windowsキーなしの日本語キーボード用ドライバだと変換キーがアップル日本語キーボードのカナキーとして使えるためだ(下記の表を参照)。
その副作用として、91UのカタカナキーがCommandキーとなり、右のAltキーがOptionキーなのに、左AltキーはCommandキーになるなど、いよいよキートップと実際の機能が一致しなくなってしまう。さらにややこしいのは、仮想環境下のWindowsでマップされるキーアサインが、本来の91UをWindowsのネイティブ環境で使った場合とも異なってしまうことだ。筆者はVMwareのFusion 1.1を使っているが、その環境でのキーアサインは表の通りだ。要するに、筆者が使う91Uのキーアサインは、キートップとは全く合致しないし、Mac OS X環境と仮想環境のWindowsでも異なってしまう。
Realforce91Uカスタマイズキーボード for ATOKのキーアサイン | |||||
---|---|---|---|---|---|
Realforce 91U | CapsLockキー | Windowsキー | 左Altキー | 無変換キー | スペースバー |
ドライバなし | CapsLock | Commandキー | Optionキー | なし(aが入力される) | スペース |
WinK Windowsキーあり対応版 | CapsLock | Optionキー | Commandキー | 英数キー | スペース |
WinK Windowsキーなし対応版 | CapsLock | Optionキー | Commandキー | 英数キー | スペース |
上+VMware Fusion 1.1 | 英数キー | Altキー | Windowsキー | 英数キー | スペース |
Realforce91Uカスタマイズキーボード for ATOKのキーアサイン | |||||
Realforce 91U | 変換キー | カタカナキー | 右Altキー | アプリケーションキー | 右Ctrlキー |
ドライバなし | なし(aが入力される) | なし(aが入力される) | Optionキー | なし(^Pが入力される) | Ctrlキー |
WinK Windowsキーあり対応版 | スペース | カナキー | Commandキー | システム環境設定起動 | Ctrlキー |
WinK Windowsキーなし対応版 | カナキー | Commandキー | Optionキー | システム環境設定起動 | Ctrlキー |
上+VMware Fusion 1.1 | ひらがなキー | Windowsキー | Altキー | システム環境設定起動 | Ctrlキー |
重要なのは操作の一貫性だ
だが、筆者は意外と気にしていない。キーボードを打つ時、いちいちキートップは見ないから、表示の違いに頭を悩ます必要はない。問題は、各環境で操作が一貫しているかどうかであり、特に日本語関連の操作が一貫しているかどうかだ。これを統一するため、MacとWindowsの両方にATOKをインストールし、そのカスタマイズ機能を使って基本的なキーアサインを一致させている。こうしておけば、そのうち指が覚えてしまう。複数のユーザーで共有するシステムでこんな勝手なことをすれば迷惑だろうが、1人で利用するシステムであれば問題はない。それより入力モードの切り替えという、かなり頻繁に利用する機能に、親指1つで簡単にアクセスできる方がうれしい。
こういったキーの割り当ては人それぞれ、千差万別だから、どれが正しいというものはない。また、気に入らなくても、ソフトウェアで解決できることが少なくない。少なくとも現在のMac OS Xは、CapsLock、Control、Option、Commandの4つのキーについては、OSの標準機能の一部としてカスタマイズ可能になっており、これを併用することで、かなりのことができる。これはキーボードのレイアウトドライバを複数同時にロード可能な点(英語キーボードと日本語キーボードの両方を同時に接続し、それぞれを正しいキーレイアウトで利用できる)と合わせ、Mac OS Xが優れている部分だと思っている(Windowsではこれができない)。
こうしたソフトウェア面での健闘ぶりに比べると、ハードウェアとしてのキーボード環境は決してよいとはいえない。Windowsにしても、良質なキーボードはサードパーティによるものだが、シェアの問題もあってかHHKB Pro2を除きMac版は存在しない。アップルはハードウェアベンダーでもあるのだから、もう少しキーボード(の外観以外)に気を遣ってほしいと思うのは筆者だけだろうか。少なくとも今のキーボードは、プロユースを対象にしたMac Proにはふさわしくないのではないかと思う。
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