台湾製の“最強NAS”「QNAP TS-409Pro」を試す(前編):そこにしびれるあこがれる(3/3 ページ)
さすが台湾製、国内メーカーができないことを平然とやってのけるッ! と思わず口走ってしまう「TS-409Pro」を検証する。前編では基本的な機能から紹介しよう。
ベンチマークテストで性能を検証
ベンチマークテストプログラムには「CrystalDisk」を使用した。環境の都合上、用意できたドライブはばらばらのものだったので、まずは単独ドライブモードで各ドライブの性能を比較した。結果はドライブによる差はほとんどなく、シーケンシャルリードが56~58Mバイト/秒、シーケンシャルライトが35~37Mバイト/秒(ジャンボフレーム有効の場合)と、かなりの好成績だった。
次に各モードごとのテストを行った。目につくのは4台構成時のRAID 5のパフォーマンスの高さだ。リード/ライトとも単独ドライブと比較しても遜色のない結果が出ている。3台構成ではライト時に3割程度のパフォーマンス低下が見られるが、それでもかなりの高水準と言える。基本システムに高速なCPUと大容量メモリを採用した効果だろう。
逆に高速化が目的であるはずのRAID 0ではほとんどパフォーマンス向上が見られなかった。単独ドライブ、RAID 0、リニアでほぼ同等の結果となったので、各ドライブの容量が異なっている場合には、ディスク容量をむだなく利用できるリニアを選択するのがよさそうだ。ただし、RAID 0、リニアともにデータを保持したままの拡張やほかのRAID構成への移行はできないので注意してほしい。
一方、パフォーマンスの落ち込みが激しかったのはRAID 1だ。スロットの空きさえあれば、HDDをもう1台追加してRAID 5にするほうがよいだろう。RAID 1を構成するドライブの半分以上の容量のHDDがあれば、RAID 5でもRAID 1と同じ容量を確保できる(例えば500Gバイト×2で構成したRAID 1の容量は250Gバイト×3で構成したRAID 5に等しい)。念のため同一容量のHDDを2台使って試してみたが、同様の傾向だった。
ベンチマークテストの結果を見ると、データ保護を考えるならRAID 5かRAID 6、高速性も考慮すると4台構成のRAID 5、という結論になるが、1つ注意が必要なのは4台構成のRAID 5を、データを保持したまま3台構成にはできないという点だ。
例えば、1台の500Gバイトドライブと3台の1Tバイトドライブを使ってRAID 5を組んでいた場合、利用可能容量は500Gバイト×3=1.5Tバイトになるが、500Gバイトのドライブを外して3台でRAID 5を組み直せば容量は2Tバイトに増える。このように構成台数を減らすことで容量が増える場合は特に注意が必要だ。「HDDがあまっているから」と不用意に4台構成にすると、後でデータ移行に苦労することになるケースがあるかもしれない。とはいえ、同一容量のドライブで組んだRAID 5であれば4台構成時の容量効率は全体の75%になる。メリットとデメリットをよく考えてスケジューリングしてほしい。
NAS導入のすすめ
個人が所有するデータの容量は日増しに大きくなってきている。それにともなってバックアップの重要性も高まってきているはずだが、データ量のあまりの大きさに、HDDのバックアップ先のメディアとして現実的に考えられるのはHDD以外にない、という状態になっているのもまた事実だ。大容量で、高速で、かつデータ保護もできる安価なメディアという万能のソリューションがない以上、用途やそのデータの性質ごとにどのように管理していくかが重要になる。
そういった観点でローカルドライブのファイル類を眺めてみると、いくつかに分類できることに気づく。例えば、「ダウンロードしてきたオンラインソフト」「動画や音楽、画像などのメディアファイル」「古いメール」「自分で作成した古い文書」「家族で共有する写真や動画」……こういったファイルは、RAID 1/5/6などでデータ保護されているNASに移動させてしまってもいい。
逆に、「自分で作成した新しい文書・作成途中の文書」「頻繁にアクセスするデータ」「ネットワーク経由だと速度が問題になるようなデータ」などはローカルにあるべきだ。
もちろん、そのようなデータの場合でも定期的なバックアップを取る必要があることは言うまでもないが、そのバックアップ先としてもNASは有効だろう。TS-409ProはNASとしては高速な部類だが、それでもローカルドライブと比較すると速度は落ちる。用途に応じてローカルドライブと使い分けることでコストをセーブしつつ安全に運用していくことができるのだ。
さて、ここまでTS-409Proの基本的な機能や性能を紹介してきたが、実はこの製品の本当の魅力は“NASの枠を超えた部分”にある。後編ではさらに深く掘り下げてTS-409Proの真価に迫る。
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