Nehalem、正式発表──「Core i7」の機能と導入メリットを考える:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
新しいアーキテクチャを導入したインテルの新世代CPUが正式に発表された。意外と低価格の設定だが、プラットフォーム全体ではいろいろと考える必要がある。
LGA1366とIntel X58 Expressで一新されるプラットフォーム
こうした変更、特にメモリコントローラの内蔵と新しい外部インタフェースの採用により、Core i7はパッケージも従来と異なる。これまでPentium 4後期からCore 2まで使われてきた「LGA775」に代わり、Core i7には「LGA1366」が採用された。CPUのパッケージ側にピンがなく、ソケット側にピンがあるLGAという点では同じだが、ピン数が増えたことでひと回り大きくなっている。この大型化したパッケージを支えるため、プロセッサを固定するリテンションも大型化しており、ヒートシンクにも専用のものが必要になる。インテル純正のヒートシンクも、高さは変わらないものの、直径が10ミリ大きくなった。
このCore i7と組み合わせるチップセットとして提供されるのが、Intel X58 Expressチップセットだ。X58 I/O Hub(IOH)に、Intel G45 Express/Intel P45 Expressチップセットにも使われているICH10/ICH10Rを組合せるIntel X58 Expressチップセットは、QPIに対応した現時点で唯一のチップセットとなる。メモリコントローラがCPUに内蔵されたことで、IOHの機能は、サウスブリッジへのブリッジ機能と外部グラフィックス用インタフェースの提供に絞られる。IOHが提供するグラフィックス用インタフェースは、PCI Express Gen2の16レーンが2本と4レーンが1本の計36レーン。2本の16レーンを4本の8レーンとして利用することも可能だ。
こうしたスロット構成は、AMD(ATI Techlonogies)のCrossFireや、NVIDIAのSLIなど、複数のグラフィックスカードを利用するときに不可欠だ。これまでNVIDIA SLIを利用するにはNVIDIA製のチップセットが必要だったが(nForce 200と組み合わせる例外もあったが)、Intel X58 ExpressではNVIDIAのバスブリッジなどがなくても NVIDIA SLIを利用できる。ただし、そのためにはマザーボードのBIOSが、NVIDIAのライセンスを受けた専用のコードを内蔵している必要があり、すべてのIntel X58 Express搭載マザーボードがNVIDIA SLI Readyというわけではない。
このプラットフォームはハイエンドNehalemだけのものになる
Core i7とIntel X58 Expressチップセットで構成されるプラットフォームで気をつけなければならないのは、互換性が限られることだ。従来のCore 2シリーズと異なるソケット、プラットフォームとなることはすでに述べたが、2009年に登場するメインストリーム向けのNehalem(開発コード名“Lynnfield”。および“Havendale”)とも異なる。
インテルはメインストリーム向けのLynnfieldとHavendaleでは、グラフィックスインタフェース(PCI Express Gen2)やグラフィックスコアを内蔵(Havendale)させ、CPUに直接新しいIOH(開発コード名“Ibex Peak”)を接続することにしている。2チップ構成とすることで、マザーボード面積の縮小、消費電力の削減、低価格化を図ろうというわけだ。
これまでインテルのプラットフォームはローエンドのCeleronからメインストリーム向けのCore 2 Duo、さらにはハイエンドのExtreme Editionまで、同一のマザーボードで利用することが可能だった。Nehalem世代からは、これまで以上にプラットフォームが細分化されることになる。
CPUの価格とプラットフォームの更新コストのバランスに悩む
プラットフォームがメインストリームと異なるなど、ハイエンド色の強いCore i7だが、その価格表を見ると意外にリーズナブルであることが分かる。最上位のExtreme Editionはこれまで通り、999ドルと設定されているが、最下位モデルであるCore i7-920は284ドルに過ぎない。一般のユーザーにも手を出しやすい。
Intel X58 Expressチップセットは、従来のIntel X48 Expressシリーズ同様、6層基板を前提とするため、どうしてもマザーボードの価格が高くなる。DDR3メモリも安価になったとはいえ、DDR2メモリとは比べものにならないし、最適な結果を得るには3枚単位で購入する必要がある。CPU以外でどうしても割高になってしまうが、それでもインテルのハイエンドプラットフォームと思えば、比較的リーズナブルだ。
これからNehalemは、MPサーバ向け、DPサーバ向け、メインストリームデスクトップPC向け、モバイルPC向け、と、続々とファミリーがデビューすることになる。しかし、いずれもプラットフォームごと更新する必要があり、何かと出費がかさむ。米国の金融問題に端を発した現在の経済環境で、プラットフォームの更新がどれだけ順調に進むのかは不透明だが、CPUのエントリー価格を抑えていることを見れば、インテルが本気で移行を進めようとしていることは理解できる。予算が許せば、次世代プラットフォームを体験してみたいところだ。
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