やはり中身もNetbookとは大違い――「VAIO type P」を丸裸にする:完全分解×開発秘話(2/2 ページ)
厚さ19.8ミリ、重さ600グラム前後の薄型軽量ボディに打ちやすいキーボードと1600×768ドット表示のワイド液晶を詰め込んだ「VAIO type P」。その内部構造に迫る。
基板の工夫で小型化と軽量化を実現
VAIO type Pのマザーボードは主に、CPUとチップセット、メインメモリが実装されたメインボードと、Mini PCI Expressスロットおよびデータストレージ接続用のコネクタが設けられたサブボードの2枚に分かれている。
CPUはAtom Z520(1.33GHz)/Z530(1.6GHz)/Z540(1.86GHz)から選択でき、いずれの場合も冷却用のファンは搭載されない。CPUとIntel System Controller Hub(SCH) US15Wチップセットの発熱はマグネシウム合金製フレームを伝って拡散され、左側面にある通風口が放熱を助ける仕組みだ。Netbook用のAtom N270(1.6GHz)や超低電圧版Core 2 Duoなどを採用していれば、ここまで放熱機構を簡素化できなかったに違いない。
メインメモリはオンボードで2GバイトのDDR2-533 SDRAMが実装され、拡張用のメモリスロットはない。もっとも、チップセットのIntel SCH US15Wは最大メモリ搭載量が2Gバイトなので、最初から上限まで搭載していることになる。
サブボード上のMini PCI Expressスロットは2基あり、その1基にハーフサイズのIEEE802.11b/g/n(11nはドラフト準拠)の無線LANモジュールが標準搭載されている。もう1基はワイヤレスWANやワンセグチューナーを装着するためのスロットだ。つまり、ワイヤレスWANとワンセグを同時に使う構成は選択できない。
HDDの接続インタフェースはUltra ATA/100のParallel ATAだ。データストレージは、Parallel ATAインタフェースで1.8インチ/5ミリ厚の60GバイトHDD(ZIFコネクタ仕様)か、Serial ATAインタフェースの64バイトもしくは128GバイトのSSDが選択できる。SSDのインタフェースはSerial ATAだが、マザーボード側のインタフェースはParallel ATAの独自端子なので、変換アダプタ経由で接続される仕組みだ。パフォーマンスを優先してSSDはSerial ATAタイプを選択したわけだが、変換アダプタ経由でのParallel ATA接続が多少はボトルネックになっていると予想される(それでもHDDよりは高速だが)。
これは余談だが、ユーザーがHDD搭載の店頭モデルを購入し、将来的に自己責任でHDDを交換しようと考えた場合、筐体に収まるサイズのSerial ATA SSDもしくはHDDを入手してもマザーボードに接続するための変換アダプタがないため、換装は困難だろう。
※記事初出時、ソニーへの取材で得た情報として、マザーボード側のデータストレージ接続用インタフェースをUltra ATA/66と記載していましたが、検証結果をもとに同社に再確認したところ、正しくはUltra ATA/100であると判明しました。おわびして訂正いたします(2009年1月21日)。
拡張ボードや本体両側面に振り分けたコネクタ類のボードで特徴的なのは、通常のリジット基板とフレキシブルケーブルを一体化したプリント基板の採用が目立つ点だ。このようなリジットフレキシブル基板はデジタルカメラや携帯電話によく見られるが、構造が複雑になり通常のリジット基板よりコストがかかるため、ノートPCで積極的に使うことは珍しい。わざわざこの一体化基板を採用したことで、基板上のコネクタを減らすことができ、本体の小型化や軽量化が図れたというわけだ。
ソニーならではの凝った設計は低価格ミニノートPCでも健在
こうして分解されたVAIO type Pをじっくり見てみると、内部の作り込みは価格が2倍以上する同社のモバイルノートPCにも引けを取らず、細部まで考え抜かれていることが分かる。Atom N270(1.6GHz)搭載のNetbookはコストを重視するため、比較的シンプルな設計のマザーボードを採用していることが多いが、それとは対照的だ。正直なところ、低価格帯のミニノートPCでこれほど内部を作り込んでいるとは予想外だった。
ソニーはVAIO type Pを「あくまでNetbookとは別のコンセプトを持った“ポケットスタイルPC”」と語るが、実際はその見た目と価格帯からNetbookと同一視されることも多いだろう。しかし、内部構造だけを見ても、Netbookとは明らかに違うことが確認できた。
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