ちょっと待て! いや待つな! 保護シートの初回ロットがややこしい:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
売り手的にも買い手的にも、同時発売同時購入が常識のiPhoneやiPadの保護シート。しかし、初回ロットの出来が“的外れ”ということが“少なからず”ある……。
初回のロットだけ品質が高くなる? その理由は!
これとは逆に、ふだん生産している海外の工場だとどうしても時間がかかってしまうため、初回のロットだけは国内の下請けに発注するメーカーもある。この場合、初回のロットだけ品質が高くなることが起こりうる。普段は原価の安い(その代わり品質が低い)海外に発注しているが、納期優先で日本の工場に発注した結果、いつもより品質がよくなってしまうケースだ。
メーカーの基本姿勢として、原価が上がるようなことはしたくない。特に、保護シートは本体が廃番になればまったく売れなくなり、廃棄処分するしかなくなるので、売れる時期になるべく高い利益で売っておかなくてはならない。保護シートは超高利益商品だったりするが、だからこそ「売れるとき売る!」という考えが浸透している。メーカーにとって保護シートは、ほかの製品の低粗利をカバーしてくれる、大事な収益源でもある。
ただ、品質を下げて納期を優先するよりは、多少原価が上がっても品質は維持すべしと考えるメーカーも多い。こうした場合、原価が上がることには目をつぶりつつ、国内の下請けに初回だけという条件で作らせることによって、販売店の要求する数量を期日にそろえることになる。
発売から時間が経って、状況が落ち着いてきたとき、こうしたメーカーは海外に生産を移行することで原価が下がり、それとともに品質も下がる。発売直後に購入したユーザーが「あれはすごくよかった」と絶賛していた保護シートが、いざ買ってみたらそうでもなかった、となるわけだ。そして、初回ロットを購入したユーザーが同じメーカーの同じ製品を後日購入することは普通ありえず、初回ロットと次発ロットを比較することもないので、こうした事実が露見することは以下同文、となる。同じシチュエーションに対してまったく異なるアプローチがなされ、そして結局同じ結論に着地するというのが、実に興味深い。
ドヤ顔で評価したら、実は自分がイレギュラー
この裏に潜んでいるのは、「型番が同じであればすべて同じ品質で同じ仕様」「同じメーカーの製品はすべて等しい品質基準で作っている」というユーザーの思い込みだ。いや、思い込みといったら失礼で、型番が同じであればすべて同じ品質で同じ仕様であるべきだし、同じメーカーの製品は、すべて等しい品質基準で作るべきだ。
しかし、納期が異常なまでに優先する(あるいは優先することを強いられる)ケースでは、例外を認めざるを得ない。ユーザーがハズレを引く場合もあれば当たりを引く場合もあるこの状況では、初回ロットで製品の品質を判断すると誤っている場合があることを意識しておく必要ある。初回ロットに限らず、通常の何倍にも及ぶ数量を扱う大口案件などでは、通常の検品プロセスから外れた生産を行うために、紹介してきた事例が起きやすい。
実際に製品を購入して試したからといってドヤ顔で評価していたら、実は自分がイレギュラーだったということが、保護シートの世界では少なくない。こういう、理不尽な状況下にある保護シートでハズレを引かないようにする、または、ハズレを引いてもダメージを軽くするためには、新製品の本体が出荷するタイミングで登場する保護シートの初回ロットは購入しないか、買い替えを前提に安い製品を購入するのが妥当だろう。
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