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未来のMacを先取り!「OS X Yosemite」特大プレビュー林信行が「OS X v10.10」を徹底分析(2/7 ページ)

Macに新しい進化の道を示すOS X v10.10「Yosemite」。林信行氏がその思想的背景から新機能の魅力までを徹底解説する。

「Continuity」という“攻めの連携”

 Yosemiteの持つ最大の機能的特徴は「Continuity」(連続性)である。これは何か1つの機能を指すものではなく、複数の機能の総称だが、iOS機器とMacが時には1つの機器であるかのように滑らかに連携をすることを可能にしている。

 これまでを振り返ると、Mavericksまでの進化はMacの土台部分を大改修してiOSと共通のモダンな要素を取り入れることだった。これに対してYosemiteでは、ついに土台がそろった2つのOSを使って、本格的に相互連携していくという新時代の提案をしている。

「Instant Hotspot」によって、iPhoneユーザーはテザリングがさらに簡単に利用できるようになる

 具体例の1つは「Instant Hotspot」という機能だ。これは近くにLTEなどでネット接続が可能な自分のiOS機器が近くにあると、それを勝手に見つけてきてMac側のWi-Fiメニューに項目を表示する。そしてその項目を選ぶことで、テザリング機能をMacの側からオン/オフできるというもので、iPhoneやiPadをカバンの中に入れたまま操作できる快適さがある。おまけに、Macがネット接続をしていないと、きちんとMacの側がiPhone側のバッテリー寿命を気遣って、自動的に接続を切断するといった見えない連携も行なっている。

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 2つ目は「電話」で、iPhoneにかかってきた電話を、カバンの中や遠くの部屋にあるiPhoneを探し出さなくても、Macを電話の子機として受け答え可能にする、という機能だ。スピーカーファンとして通話することもできれば、iPhone付属のヘッドフォンマイクで受け答えをすることもできる。また、通話を拒否して留守電に回したり、「今、電話に出られない」旨をさっとSMSで返信することもできる。

 3つ目は「SMS」の進化。実はアップルが用意したiMessageという機能は、以前からOS Xに搭載されており、画面上で青いフキダシで表示されるiPhoneやiPadとのやりとりはMacでも受け答えが可能だった。

 しかし、iPhone以外の電話の利用者が混じっていると、その人からのメッセージだけは緑のフキダシで表示されていた。これはSMSという電話会社による通信機能で送受信されたメッセージで、メッセージの1つ1つに対して通信料がかかるやりとりだ。しかも、このやりとりはiPhoneやiPad内のSIMカードにひも付けられた電話番号に対して送られてくるものなので、ほかの機器では受けることができないし参照もできないものだった。

iPhoneにかかってきた電話をMacで受け取れるほか、他社製スマートフォンからのSMSをMacで受信できるようになる

 一方、Yosemiteでは、機器同士がWi-Fi通信できる距離にあれば、それを利用してMacとiOS機器の間でSMSメッセージのリレーをし、あたかもMacでSMSの送受信が可能になったかのように思わせる。地味ながら、かゆいところに手が届く改良で、アップルがiOS機器とMacとの行き来を、どれほど滑らかにつなごうとしているのかが分かる機能でもある。

 4つ目にして、最大の目玉は「Handoff」で、これはMacとiOS間の行き来を劇的に変化させ、ライフスタイルや仕事のスタイルまで変えてしまう機能といえる。これはMacの上で、メール、Safari、Pages、Numbers、Keynote、マップ、メッセージ、リマインダー、カレンダー、連絡先といったアプリで作業をしていると、iOSの画面左下にそのアプリケーションの線画アイコンが表示され、それを上にスワイプすると、Macでの作業画面とほぼ同じ状態のものがiPhoneやiPad上で再現されて作業の続きができる機能だ。

 もちろん、逆も可能で、iOS上で上記の対応アプリを利用していると、Macのドック上に「Handoff」のアイコンが現れ、それをクリックするとiPhone/iPad上での作業画面がMac上でも再現される。

作成中の資料や書きかけのメールがあっても、OS XとiOS間でデバイスの違いを意識することなく、シームレスに作業を続けられる

 例えば、企画会議の前にMacで資料を作成している状況を思い浮かべてみよう。会議の時間は目前に迫っており、悠長にデスクでMacを開いて内容チェックしている時間はない。それを移動時間の間にiPhoneで修正し、会議室についたらiPadでプレゼンテーションする、ということが「アプリを起動して、書類を開く」といったステップを踏まず、スワイプ操作1つで行なえるようになる。

 Yosemiteは1つのことを明らかにした。それは、これまでLionからMavericksまでのiOS連携は、実はただの基礎固めでしかなく、Yosemiteからが本当の“攻めの連携”が始まるということだ。それはつまり、世界に5億人いるiPhoneユーザー、2億人いるiPadユーザーたちがさらなる便利さと快適さを求めて、ほかならぬ「Macが欲しくなる」ようにしむける連携だ。

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