レビュー

ヘリウム充てんの8テラ「WD Red」は“本家”と何が違うのか「そっくり」な2モデルを比較(2/3 ページ)

WD Redの8TBモデル「WD80EFZX」は、HGSTの「Ultrastar He8」よりも実売で3万円近く安い。見た目は一緒なんだけどなぁ……。

違いは回転数とファームウェアか

 ではこの2モデルの違いは何か。

 スペック上明らかなのは回転数だ。Ultrastar He8が7200rpmであるのに対し、WD80EFZXは5400rpmクラスとされている。また、WD80EFZXはWD Redシリーズであり、NAS専用ファームウェア「NASware3.0」を採用している。

 まずはSATA600で直接接続した場合のパフォーマンスを見てみよう。HD Tune Pro5.60で計測した結果は次の通りだ(測定したマシンのスペックは、Corei7-2600(3.4GHz)を搭載したZ68ベースの64bit版Windows 10マシン)。

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HD Tune Pro5.60によるリード速度。左がWD80EFZX、右がUltrastar He8
HD Tune Pro5.60によるライト速度。左がWD80EFZX、右がUltrastar He8

 WD80EFZXがRead最大186.2MB/秒、最小86.4MB/秒、平均143.3MB/秒、Write最大169.5MB/秒、最小85.1MB/秒、平均139.5MB/秒。それに対し、Ultrastar He8はRead最大204.0MB/秒、最小90.0MB/秒、平均163.4MB/秒、Write最大176.1MB/秒、最小90.7MB/秒、平均154.9MB/秒。すべての項目においてUltrastar He8が3~14%高速、という結果になった。これは回転速度の違いが出ているものだと思われる。

 次に実際の転送速度を測るため、CrystalDiskMark 3.0.3(x64)の計測結果を見てみよう。

左がWD80EFZX、右がUltrastar He8

 回転速度の差がパフォーマンスに出やすいシーケンシャルリード/ライトで16%ほどUltrastar He8が高速であることを除けばほぼ同等、4K/4K QD32のライトでは逆にWD80EFZXが43~142%ほど高速という結果になった。

 最後にWD80EFZXの本来のメインターゲットであるNAS利用時のパフォーマンスを見ることにする。NASプラットフォームにはSynologyのNASキット、DiskStation DS216jを使用した。DS216jは2ベイモデルなので、WD80EFZXとUltrastar He8を1本ずつ挿してシングルボリュームを2つ作って計測している。

 シングルボリュームでの計測結果は次の通り。

左がWD80EFZX、右がUltrastar He8

 やはり、コンスタントに回転数の影響が出やすいのはシーケンシャルリードで、WD80EFZXの93.12MB/秒に対し、Ultrastar He8では104.8MB/秒と、13%程度高速な結果が出た。しかし、その他の項目についてはWD80EFZXのほうがわずかに高速だ。4Kライトに関してはWD80EFZXの方が52%ほど高速という結果が出ている。NCQの計測となる4K QD32では逆転しているが、CIFS経由でどれほどの影響と効果があるのかは不明だ。

 次にRAID 1での性能を比較してみよう。

左がWD80EFZX、右がUltrastar He8。RAID 1での性能比較

 シーケンシャルリードの差が詰まり、Ultrastar He8のほうが3%高速という結果になった。RAID 1では書込み時には複数のディスクに同じ内容を書き込むが、読込み時にどのディスクから読込むかは実装・負荷分散アルゴリズムによって異なる。DS216jの場合は観測した限りでは常にDisk1から読込みを行うようで、それがシングルボリューム時の傾向のまま、定量的なオーバヘッドが乗った形として現れたのだろう。一方、4KライトではWD80EFZXが52%高速と、シングルボリューム時と優位性は変わらない。4K QD32で逆転が見られるのも同様だ。

シーケンシャルリード計測時のDS216jのリソースモニタ。読込み用のデータを両方のディスクに(同一内容で)書き込んだ後、片側のディスクに対してのみリードが行われる

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