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App Storeに加えられる3つの改善――林信行がフィル・シラーにインタビューWWDC直前の重大独占ニュース!(3/3 ページ)

WWDCの開催に先駆けて実施した電話インタビューで、AppleはApp Storeに関する重要な取り組みを明かした。Apple幹部のフィル・シラー氏が語るアプリ開発者にとっての重要なトピックとは?

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開発者にもユーザーにもフェアな広告システム

 2008年、iPhone 3Gの発表と共にオープンしたアプリ販売市場のApp Storeだが、登録アプリの数は、今なお増え続け、2015年のWWDC時点でも既に140万本以上のアプリが登録されている。

 それだけ大量のアプリの中から、自分の気に入る新しいアプリを発見するのはなかなか大変なことだが、Appleはこれまでにも、欲しいアプリが見つかりやすいようにさまざまな施策を行ってきた。

 App Storeの画面1つをとっても、ユーザーが毎日眺めて楽しめるように、最近では「おすすめ」タブの内容を毎日日替わりで更新するようにしており、特定のテーマに沿って集めたキュレーテッドリストという形でアプリ紹介も充実させている(キュレーテッドリストとは、例えば「アースデイ」であれば、地球についてもっとよく知るためのアプリを集めて紹介するといった形で、特定のテーマに沿って集められてきたアプリやコンテンツの一覧のこと)。

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 それに加えて、AppleはTwitterなどのソーシャルメディアを通してアプリ情報の発信も行っている。だが、アプリの発見性をさらに高めるべく、秋ごろからさらにいくつかの新施策を始める。

 施策の概要は本記事の1ページ目で紹介したが、現時点で明らかになっているのは、以下の4つだ。

  1. 「おすすめ」タブで既に持っているアプリを非表示にして、他のアプリの露出機会を増やす
  2. カテゴリータブの復活
  3. 3D Touchでお勧めアプリを共有
  4. 検索広告

 検索広告は、ユーザーの65%がアプリを検索してダウンロードしている、という実績に基づいて企画されたもので、検索をiOS次期バージョンからはApp Storeでキーワード検索をすると、検索結果の一番上に「広告」であることを明示した青文字のラベルを伴ってアプリ名が表示される。

 広告の出稿方法はオークションだが、開発者が高いお金を払いすぎないように、出稿料はSecond Price Auctionという方式、つまり2番目に高いビッドの価格に設定される。

 また、開発者が特定のキーワードの広告を独占することはできず、複数の会社が出稿できる。複数の広告主がいる場合は広告がローテーション表示される。その際のローテーションの順番は、Apple側がユーザーにとっての関連度によってランク付けが行われ、その判断はAppleが行う。

 Appleはどのようなキーワードで広告を出すかも審査を行うが、この仕組みも面白い。まず、開発者が特定のアプリの広告を出そうと管理画面をのぞくと、そのアプリに対してふさわしい検索キーワードの一覧が表示されるので、それをそのまますべて選択して広告を出すこともできれば、一部のキーワードだけを選択して広告を出すこともできる。さらにはリストにはないキーワードを自分で提案して広告を出すこともできる(その場合にはAppleの審査が入る)。

 広告出稿者は、広告のクリック数に対して広告料を支払う。つまり、広告が表示されても、クリックされなければ広告料の支払いは不要だが、その場合、その広告はユーザーの関心度が低いと判断されて、場合によってはローテーション表示の優先度が下がる。

 「検索広告は、開発者にとっても非常にフェアな設計にしたつもりだが、何よりも大事なのはユーザーだ。特にユーザーのプライバシーの保護には何よりも大きな重きを置いている」とシラー氏は語る。

 Appleは、App Storeで検索に使われたキーワードも記録しなければ、検索を行ったユーザーのプロフィール情報を作ったりするようなこともしない。開発者に対してはユーザーに関する情報を一切共有しないことをルールとしている。開発者が唯一受け取るのは、どのキーワードでの広告がどの程度の効果を発揮したかなどの効果測定のレポートのみだ。検索広告の機能で、もう1つ面白いのが若年層に対しては広告を隠す機能で、ユーザーが13歳以下の場合には、検索広告は表示されない。

 検索広告のサービスは、この夏、iOSの公開β版を通して試験運用され、β期間中の広告出稿料は無料とのことだ。その後、秋ごろに新iOSがリリースされたら、まずは米国で展開が始まるという。

 シラー氏は「これまで多くの開発者が、自分のアプリを知ってもらうために、Webページなどさまざまな場所にアプリの広告を打っていたが、アップルの検索広告は、アプリの入手先であるApp Storeに内蔵されているので、ユーザーにとっての導線もいいし、きっと多くの開発者にとって喜ばしい効果をもたらしてくれるだろう」と自信のほどを見せた。

WWDC 2016ではどんな発表が行われるのか

 WWDCは、アプリ開発者の祭典。異例の事前発表の内容、一般ユーザーは地味に感じるかもしれないが、これはアプリの開発・販売をビジネスにしている人にとっては、非常に重要なニュースである。事前発表の内容だけでも、これだけ大きなネタを用意しているとなると、基調講演本番ではどのような発表が行われるのか、楽しみにしている開発者は少なくないはずだ。

※記事初出時、サブスクリプションを「月額課金」と翻訳しておりましたが、Appleから「実際には3カ月ごとの課金モデルなども用意される」と指摘があり、「定額課金」に表現を改めています。おわびして訂正いたします


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