なぜ今? 「SMILEBASIC MAGAZINE」の発刊で復活した読者投稿型プログラム雑誌とは:BASIC IS A POWER!(3/4 ページ)
このところ、Amazonのゲームプログラミングカテゴリにてベストセラー1位(原稿執筆時)を走っている雑誌がある。「SMILEBASIC MAGAZINE Vol.1」だ。どうして?
SMILEBASIC MAGAZINE刊行までの道のり
SMILEBASIC MAGAZINE誕生のきっかけは2012年3月のことだった。Twitterで電子版のプログラムマガジンのことに触れたアンビットさあにん@山本直人氏に、ちょうどプチコン3号の開発をスタートさせたばかりのスマイルブーム小林貴樹氏が反応、3年越しで「プチコンマガジン」として実現を果たした。しかし、このときの話はデジタルマガジンだけでは終わらなかった。
山本氏にとってSMILEBASIC MAGAZINEは「公式ガイドブックや『ニンテンドードリーム』の記事などを経て、最終形としてやりたかったもの」だという。マガジンとついているものの、形態としては書籍となり、広告は入らない(雑誌であってもスマイルブームと自社広告しか期待できないという事情はあるが)。部数は1000部未満と非常に少なく、制作は企画・編集・DTPデザイン・ライターへの依頼まで、山本氏が一人ですべてを担当。流通が限定的であるのもそのためだ。
そこまでして山本氏が発刊にこぎつけた目的は「発刊する」こと自体、それと「プログラムリストの復活」だ。監修のスマイルブームもこだわった点はやはり、80年代のパソコン雑誌のイメージだという。ただ、想定外だったのはプログラムリストの長さだった。30年前と比べると、プラットフォームの性能・表現力だけでなく、読者(プレイヤー)の目も、投稿者の実力も格段に向上していたのだ。
SMILEBASIC MAGAZINE掲載プログラムリストは1画面プログラムである「くさかり(kuni氏作)」、218行にまとめた「とびだせ!3Dチキンレース(てっく氏作)」を除くと、どれもかなりの大作である。
大喜利大賞の「FM2K(ゆのみ氏作)」で1781行、最長の「Shooting Life 2014(葛城コニミル氏作)」に至っては3507行、21ページに渡って延々とプログラムリストが続く。マイコンBASICマガジンでは1作品あたり2ページ~4ページ程度だったので、かなりボリュームが大きくなっていることが分かる。しかも、多くの作品は別にグラフィックデータが必要であり、リストをすべて打ち込んでもそのまま遊ぶことはできない。
だが、各プログラムには公開キーが掲載されており、これをプチコン3号のメニューから入力するとスマイルブームのサーバからプログラムやデータ一式がダウンロードできるようになっている。所要時間はわずか数分。長大なプログラムリストを入力する必要はない。
ならば、プログラムリストを掲載する意味はなんなのだろうか。
それは「自分の遊んでいるものがどうやって動いているのか」という回答のため、と山本氏は話す。ゲームソフトが高度化するとともにブラックボックス化していき、開発者というものが見えなくなっている。その中身を見ることで開発者の苦労や、どうやって動いているのか、学ぶことが多いのではないかと。山本氏はこれを「映画を見てから原作を読む」ということになぞらえている。
SMILEBASIC MAGAZINEに掲載されたプログラムリストを見ると、綺麗にインデントをつけていたり、変数に大文字・小文字を混在させるなどモダンなスタイルがあるかと思えば、ENDIFを使わずにすべてマルチステートメントでTHEN節にまとめてしまうクラシックスタイルもある。難易度を変える改造ができる部分にあらかじめ「コラ!」とコメントが入っていたり、ゲームをプレイするだけでは分からない作者の一面が見えてくるのも面白い。
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