「電子国家」なのに不便? エストニアに住む日本人が見た、電子国家の本当の意味:tsumug.edge(3/3 ページ)
「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けします。
国がなくなるかもしれない危機感……電子国家で「国を守る」
旧ソ連であるエストニアは、独立回復時にデータベースが散在していた。しかし大きなデータベースを作るお金もなかったため、分散したデータベースを結合するしかなかったといわれる。政府は一度入力されたデータを二度と入力させない、というのをモットーにしているらしく、日本のように何度も手書きで住所を書かされることはない。
それが住民にとって便利というだけではない。何よりも、電子国家にすることで国としての安全性を高めているという面が大きい。エストニア民族の歴史は凄惨(せいさん)で、若い子たちでも話す時には暗い顔になってしまうほどだ。デンマーク、ドイツ騎士団、スウェーデン、ロシア帝国と次々に支配者が変わり、独立したと思ったらソ連とドイツの挟み撃ちにあい、同じ国の友達同士がソ連側とドイツ側に分かれて殺しあう、ということがつい最近まで起きていた。1990年以降、独立を回復させた後もロシアからのハッキングがしょっちゅうある。
ヨーロッパとロシアの境目にあるという立地条件もあり、国がずっと存続するという楽観は基本的にできない。だから物理的に国が奪われたとしても、電子的に国を存続させることでエストニア民族を守る、という気持ちが根底にあるようだ。
“それは夜明け”
2月24日にはエストニアの独立記念日がある。こちらは1918年のロシア帝国からの独立日だ。エストニアには独立回復記念日が別にもあって、1991年にソ連から独立した8月20日だ。後者は、みんなで手をつないで歌って無血革命(歌唱革命と呼ばれる)したという伝説の日。歌う民族と呼ばれるエストニア人ならではという感じで圧巻だ。この日は毎年ラウルピドゥというフェスのようなイベントが行われる。先日妻がこのチケットを取ってくれたのだが、発売当日にダッシュで買って、最後列しかなかった。国民の3分の一が集まるイベントともいわれる。
ここで毎年歌われるコイト(夜明け)という歌は、自由を獲得したエストニア人の心の叫びだ。
“それは夜明け、王の言霊。大地を呼び起こす勝利の光。”
国を、民族を永続させるためにエストニア人がとった方法が国家の電子化であり、国民の切望でもある。それは単に生活を便利にするというだけではなく、自分たちの森や大地を守るためであり、夏の庭で野いちごを食べられる幸せ、自由を守るためである。日本人の僕には想像できなかった「電子国家」だった。
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