コラム
エストニアに住む日本人が見た、既にロボット配達が展開中の今:tsumug edge(3/3 ページ)
「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けする。
現代にジョゼフ=ルーランはいるか
テクノロジーが行き届きすぎると、人間らしいやりとりが少なくなることに何かフワッとした危機感を抱く人も多いだろう。僕もそんな一人ではある。しかし今の宅配業界が人間らしいかというと、それも疑問だ。
フィンセント・ファン・ゴッホは晩年、世話になった人の家族の肖像画をよく描いていた。その家族の長はジョゼフ=エティエンヌ・ルーランといという郵便係だ。
ゴッホといえば、手紙好きである。弟のテオとの手紙のやりとりは、彼にとっての生命線ともいえるくらい重要なものだった。そんな彼の奇遇ともいうべき郵便係のジョゼフは、彼にとって精神的な支えとなり、ゴッホが自身の耳を切り落とした時にも家族ぐるみで付き添っていた。
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今、物流会社の配達員にゴッホを支えるような精神的余力があるだろうか? 長い残業時間に過労死寸前で歯を食いしばる彼らに。平成の時代に100倍になった配達量は極力自動化しつつ、本来の気持ちを届ける仕事に集中できるようにできないだろうか。本来の誇り高く、誰かを支える仕事に。
そう思いながら、今日も不在票のQRコードをスキャンしている。
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