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「Mac Studio」「Studio Display」を試して実感した真の価値 小型・高性能に加えてAppleの総合体験も提供本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

「Mac Studio」を使い始めてみると、コンパクトで省電力ながら高いパフォーマンスを発揮できるのはもちろん、別の画期的な点にも気付いた。それは「Studio Display」と組み合わせた場合のAppleが注力している総合的な体験レベルの高さだ。

 Appleは、恐らく最後の「M1」ファミリーになるだろう「M1 Ultra」チップを投入。M1 UltraとM1 Maxを選択できるコンパクトなデスクトップコンピュータ「Mac Studio」と外付けディスプレイ「Studio Display」を3月18日に発売した。そのパフォーマンスに注目していたが、使い始めてみると別の画期的な点にも気付いた。


小型デスクトップの「Mac Studio」と27型5Kディスプレイの「Studio Display」

 M1 Ultraの高性能の秘密は、M1 Maxのダイを2個高速に接続することで、共有メモリアーキテクチャのよさを生かしながらスケールアップしたことだった。M1のアーキテクチャを踏襲することで、同クラスのPCと比較して圧倒的な省電力も実現している。

 しかし、これは採用するSoC(System on a Chip)視点の話だ。システムとしてい見た場合のMac StudioとStudio Displayは、これまでのセパレート型Macでは実現できなかったさまざまな要素が盛り込まれている。

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 これはStudio DisplayにもiPhone 11やiPad(第9世代)と同じ「A13 Bionic」チップが組み込まれ、内蔵のカメラ、マイク、スピーカーを、M1ファミリー搭載Macが内蔵する各種デバイスと同等の信号処理で活用しているためだ。

M1 Ultraがフル稼働しても余裕ある設計の「Mac Studio」

 実のところ、使い始めてみると、Mac Studioそのものは(高いパフォーマンスを備えることは確かだが)極めてシンプルな製品だと感じた。


Mac miniを縦に長くしたような外観のMac Studio。前面には2基のUSB Type-C、SDXCカードスロットが並ぶ

 高い冷却性能を備えた小型デスクトップコンピュータに、モバイル向けとして最高峰の性能を誇るM1 Maxを搭載。さらにM1 Maxを2個連結し、1つのSoCとして振る舞うM1 Ultraまで搭載できる。

 M1 Max搭載機とM1 Ultra搭載機では重さが異なり、後者は銅製のヒートシンクを用いた高効率の冷却システムを採用している。この点で、M1 Ultra搭載機に高い負荷をかけた際、放熱容量がギリギリになる可能性もあるのだろうかと心配したが、杞憂(きゆう)だったようだ。

 試しに、全CPUの性能を使いきることで知られるベンチマークテストのCINEBENCH R23を動かしつつ、背景でライブストリーミング映像を合成、エンコード、送出するOBS Studioでライブ配信を行い、映像にGPU負荷の高いプラグインも用いたところ、CPUはほぼ完全に、GPUも7割以上を消費する状態となった。


CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)スコア(M1 Ultra搭載モデル)

 冷却システムがフル稼働すると思われる場面だが、耳を近づけると冷却ファンの動きが感じられる程度だ。本体に触れても熱さを感じないどころか、ほんのり温かい程度の熱しか帯びなかった。Mac Studioの熱設計はかなり余裕がありそうだ。

 GPUの性能こそキレイにM1 Maxの2倍にはならないものの、CPU性能やNeural Engineによる機械学習処理はおよそ2倍にまで達する。

 しかもCPU性能、GPU性能ともに業界最高速ではないが、最高クラスに分類される実力を持ちながら、圧倒的な省電力動作で197(幅)×197(奥行き)×95(高さ)mmの小さな本体を実現した。冷却ファンの動作が全く気にならないことと合わせて、極めて完成度の高い小型デスクトップといえる。


背面には電源ボタンと各種インタフェースに加えて、排気口となる小さなホールが多数開けられているが、動作音は気にならない
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