新生活にピッタリなのは「第12世代Coreプロセッサ」を搭載するPC? インテルが理由を説明(2/2 ページ)
インテルが新生活をテーマにした「第12世代Coreプロセッサ」の説明会を開催した。PCのある新生活には第12世代Coreプロセッサを搭載するPCが最適なのだというが、なぜなのだろうか?
これからの時代に応える選択肢が「第12世代Coreプロセッサ」
PCに求められるスペックは多様化しているが、土岐氏によると大きく「高性能重視」と「効率性重視」に二分できるという。
この両方の使い方に対応できるCPUとして、同氏は第12世代Coreプロセッサを紹介した。この世代では、処理パフォーマンスを重視した「高性能コア(Pコア)」と消費電力当たりの処理効率を重視した「高効率コア(Eコア)」のハイブリッド構成を採用している(※1)。
スマホやタブレット向けのSoC(System-On-a-Chip)のCPU部分は、このようなハイブリッド構成を取るものがほとんどである。しかし、PC向けのメインストリームCPUでは事実上初めてだ。
(※1)デスクトップ向け製品の一部製品はPコアのみ搭載
土岐氏は、PコアとEコアを「走ること」に例えて説明する。
Pコアは短距離に最適化された走者だ。CPUの放熱設計にもよるが、フルパワーを出し続けることは難しい。しかし、出せる“フルパワー”は非常に強力で、短時間で処理を完了できる。短時間のみ非常に高いパフォーマンスを必要とする用途に向いている。
一方、Eコアは長距離(マラソン)に最適化された走者である。瞬発力こそあまりないが、そこそこ高いパフォーマンスを長時間に渡って持続できる。処理内容によっては、「短時間で超高性能」よりも「長時間に渡ってそこそこの性能」の方がゴール(最終的な処理結果)に早くたどり着けることもある。
問題は、短距離走の選手(Pコア)と長距離走の選手(Eコア)の出番を割り振る方法だ。Pコアが得意とする処理をEコアに割り振ったり、Eコアが得意とする処理をPコアに割り振ったりしてしまっては、宝の持ち腐れである。
その采配を取る“監督”に当たる機能が「Intel Thread Director(ITD)」である。ITDはWindows 11のタスクスケジューラー(処理をコアやスレッドに割り振るソフトウェア)と協調して動作するようになっており(※2)、処理の内容を分析してPコアまたはEコアに割り振るだけでなく、PコアからEコア、逆にEコアからPコアへの処理の移管も担っている。
「処理の移管?」と思うかもしれないが、1つのタスクでもPコアである程度処理が進んだらEコアに移した方が全体的な処理パフォーマンスを向上できることもある。一方で、ある程度Eコアで進めてきた処理をPコアで「最後の仕上げ」をすると全体的な処理時間を短縮できることもある。そう言う意味では、ITDは“交渉人(ネゴシエーター)”でもあるのだ。
(※2)Chrome OSのタスクスケジューラーもITDへの最適化を実施予定
PコアとEコアが8基ずつある場合、Intel Thread Directorは基本的にPコアに優先してタスク(作業)を配分する。Pコアを使うタスクが多くなってくると、処理内容を判断した上で新しいタスクをEコアに回したり、Pコアで行っていたタスクをEコアに移管したりする
2種類のコアは効果てきめん?
一部を除きPコアとEコアのデュアル構成となる第12世代Coreプロセッサだが、過去世代と比べると性能に大きな違いは出るのだろうか。土岐氏はノートPC向けの第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)と、ノートPC向けの第12世代Coreプロセッサの処理パフォーマンスを比較したグラフを示した。
このグラフでは、前世代のCore i7-1195G7(2.9GHz~5GHz、4コア8スレッド)の最大消費電力におけるパフォーマンスを「100%」としている。このグラフを見ると、第12世代のCore i7-1265U(Pコア2基4スレッド+Eコア8コア8スレッド)は同じ消費電力のCore i7-1195G7を上回るパフォーマンスを発揮している。
その上位製品であるCore i7-1280P(Pコア6基12スレッド+Eコア8基8スレッド)は、最小消費電力こそCore i7-1195GやCore i7-1265Uよりも高くなってしまうが、同じ消費電力ならCore i7-1265Uよりもさらに高い処理性能を示す。
土岐氏はこれが、ハイブリッドコアの効果であると力説する。
Core i7-1195G7の最大消費電力時(28W)の処理パフォーマンスを100%とした場合のパフォーマンス比較のグラフ。第12世代Coreプロセッサは、ハイブリッドコア構成とすることで同じ消費電力でもより高いパフォーマンスを発揮できるという
快適さはCPUコアだけでは決まらない
PCの全体的なパフォーマンスを見る上で、土岐氏はCPUにおけるハイブリッドコア採用に加えてDDR5/LPDDR5規格のメインメモリへの対応、Wi-Fi 6E規格の無線LAN(6GHz帯のIEEE 802.11ax)の搭載(※3)、そしてPCI Express 5.0バスへの対応(※4)も大きな効果を持つという。
これらの効果は、以下の通り全て「自動車と道路」で例えられる。
- DDR5/LPDDR5メモリ:データが通る車線が4本から5本になって高速化
- Wi-Fi 6E(Wi-Fi 6):複数の端末で同じ車線を使っていた所を、端末ごとに専用車線を設けられるので混雑が少なくなる
- PCI Express 5.0バス:データが通る車線が2倍となるため、同時に走れる自動車も2倍に
第12世代Coreプロセッサは全体的に「速く快適に」が貫かれたCPUであるといえるだろう。
(※3)日本を含む多くの国/地域では6GHz帯での通信に非対応(その場合は2.4GHz帯/5GHz帯を使うWi-Fi 6として通信可能)
(※4)デスクトップ向け製品のみ対応
ノートPCでは250製品以上の搭載製品が登場予定
今後、第12世代Coreプロセッサ(Uプロセッサ/Pプロセッサ)を搭載するノートPCは2022年末までに250製品以上登場予定だという。土岐氏は「好みや実際の作業環境に応じてPCを選んでいただくことになるが、必ずや皆さんにふさわしい製品が登場するだろう」と胸を張る。
デスクトップPCも含めると、第12世代Coreプロセッサを搭載する製品はまだ少数派である。今後、搭載製品がどれだけ増えるのか、注目したい。
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