2種類のコアで「省電力」と「高パフォーマンス」を両立――Intelが「Alder Lake」の概要を公開 「Sapphire Rapids」にも新情報(1/3 ページ)
Intelが報道関係者に技術動向を説明するイベント「Intel Architecture Day 2021」を開催。このイベントでは、次世代のCoreプロセッサとして2021年秋に登場する予定の「Alder Lake」の概要が公開された。
Intelは8月18日(日本時間)、オンラインイベント「Intel Architecture Day 2021」を開催。同社のCPUやGPUなど、同社の技術開発に関する動向や方針が報道関係者などに披露された。
この記事では、クライアント向けCPU「Alder Lake」と、データセンター向けCPU「Sapphire Rapids」(共に開発コード名)について、このイベントで明らかとなった新情報をお伝えする。
「高効率コア」と「パフォーマンスコア」の2本立て
今回のイベントの発表において、ハイライトの1つが「新しいx86コア」だ。
これは消費電力当たりの処理効率を最適化した「高効率コア」(開発コード名:Gracemont)と、処理の遅延とシングルスレッド性能を極限まで高めた「パフォーマンスコア」(開発コード名:Golden Cove)の2種類からなり、Alder Lakeでは両者を組み合わせたいわゆる「big.LITTLE」構造を取っており、Sapphire Rapidsではパフォーマンスコアに機械学習用の演算をさらに高速化する仕組みを取り入れている。
高効率x86コア(Gracemont)
高効率コアは「フロントエンドの深化」「広いバックエンド」「最適化された設計」の3点に注力して開発された。稼働に必要な電圧を低くすることで、消費電力を抑えつつパフォーマンスを引き上げる余地も設けているという。
第6世代Coreプロセッサ(開発コード名:Skylake)とシングルスレッド性能を比較すると、この高効率コアは同じ消費電力なら最大で40%程度高いパフォーマンスを発揮するという。
同様に、2コア4スレッドの第6世代Coreプロセッサと4コア4スレッドの高効率コアを比べた場合、高効率コアは同じ消費電力なら最大80%のパフォーマンス改善、同じパフォーマンスなら最大80%の消費電力削減を実現しているという。
……と、この説明で何となく察したかもしれないが、高効率コアはハイパースレッディングに対応しない。
パフォーマンスx86コア(Golden Cove)
パフォーマンスx86コアは「より広く」「より深く」「よりスマート」の3点に注力して開発されたという。先述の通りシングルスレッド性能を極限まで高めた他、処理の遅延も極限まで抑制する工夫も凝らしている。
これにより、一般的なPCの用途において、同じクロック(周波数)で稼働する第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)と比べて相乗平均で19%のパフォーマンス改善を図っているという。
データセンター向けのSapphire Rapidsのパフォーマンスコアには、タイル行列乗算を高速化する拡張「Intel AMX(Advanced Matrix Extensions)」も搭載される。
従来の機械学習用命令セット(VNNI)を使った場合と比べると、AMXはINT8(8ビット整数)演算の速度が最大8倍で行えるという。機械学習に関する処理のさらなる高速化を期待できる。
コアの“割り振り”を行う「Intel Thread Director」
先述の通り、Alder Lakeはbig.LITTLE構造を取っている。big.LITTLE構造のCPUでは、タスクを高効率コアとパフォーマンスコアに“割り振る”作業が全体パフォーマンスを大きく左右する。
例えば、処理負荷の大きいタスクを高効率コアに振り向けてしまうと、処理に余計な時間が掛かってしまう。逆に、処理負荷の低いタスクをパフォーマンスコアに振り向けてしまうと消費電力的な意味で無駄が生じてしまう。
Alder Lakeにおいて、このタスクの割り振りを受け持つのが「Intel Thread Director(ITD)」だ。ITDはOSの「スケジューラー(処理の割り振りを決めるプログラム)」と協調して動作するようになっており、処理作業の負荷、他の処理の進み具合、CPUの発熱状況、電源の供給状況などを総合的に判断した上で処理を行うコアの割り振りを行う。パフォーマンスコアで「ループ(ビジー)ウェイト」が生じた場合は、処理を高効率コアに移管することも可能だ。
仕組み上、ITDはOS側でも対応が求められるが、Microsoftが2021年秋にリリースする予定の「Windows 11」は最適なパフォーマンスを発揮できるように調整されているという。
関連記事
- Intelが一般向け高性能グラフィックス製品ブランド「Arc」を立ち上げ 2022年第1四半期に製品投入
Intelが、コンシューマー向けの高性能グラフィックス製品ブランド「Intel Arc」を立ち上げる。ブランドの初製品は、2022年第1四半期に登場する予定だ。 - 2025年までに「1.8nm相当」に――Intelが半導体生産のロードマップを説明
Intelが半導体生産のロードマップを説明するイベントを開催した。2022年には7nmプロセスの製品が、2024年には新技術を取り入れた製品が登場する見通しだ。 - Intelが「次世代Xeonプロセッサ(Sapphire Rapids)」をチラ見せ 広帯域メモリ内蔵バージョンを用意
スーパーコンピューターの世界的なイベント「ISC 2021」に合わせて、IntelがHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に関する取り組みを発表した。その中で、次世代のXeonスケーラブルプロセッサ(開発コード名:Sapphire Rapids)にHBM(広帯域メモリ)を内蔵するバージョンが用意されることが明らかとなった。 - Intelが次世代のクライアントPC向けCPU「Alder Lake」を2021年に投入
Intelは8月13日(現地時間)、オンラインイベント「Intel Architecture Day 2020」を開催し、次世代のクライアント向け製品「Alder Lake」について発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.