「Apple Music Classical」はクラシック音楽リスニング体験の再発明だ 著名音楽家たちが大きな期待を寄せる理由:海外ではついにリリース(3/3 ページ)
Appleは3月28日(現地時間)、クラシック音楽専用のアプリ「Apple Music Classical」の提供を開始した。Apple Musicのサービス内で提供し、最大192kHz/24bitの音質で500万曲以上を聞けるという。本アプリの狙いや経緯をひもといていこう。
音楽家たちから寄せられる大きな期待
「クラシック音楽を始め、全ての文化で根本的に大切なことは、つながること、時間と空間を超えて理解の絆を結ぶこと」、「このようなイノベーションは、そのつながりを可能にし、私たちの好奇心を刺激し、慣れ親しんだものを再発見し、予期せぬものを喜ぶための場所を提供してくれるのです」と語るのは、冒頭でも引用した世界的チェリストのヨーヨー・マ氏だ。
同氏はこのようなアプリケーションの必要性について、初期からの話し合いに参加してきたという。同じく冒頭で引用したRadioheadのジョニー・グリーンウッド氏、グラミー賞3度受賞のヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン氏も、同アプリの開発に協力してきたという。
そのハーン氏は「Apple Musicが、ストリーミング時代のクラシック音楽の新たな基準を打ち立てるためにイニシアチブをとっていることに感激しています」と語る。
彼女は「Apple Musicが本来持つ高品質の非圧縮オーディオなら、私の演奏、楽器、そして演奏している空間の繊細さを伝えてくれると信頼しています。また、ソロであってもクラシック音楽のレコーディングには深い共同作業が伴います。Apple Music Classicalの豊富なメタデータにより、作曲家/編曲者/指揮者/演奏者/プロデューサー/音楽出版社など、全ての人がそれぞれにふさわしい評価を得られるのです」と語る。
同時に「アプリが過去と未来をつなぎ、リスナーが自分自身の物語と共鳴できる音楽を見つけられる」ことへも期待を寄せている。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団はAppleと独占契約を結び、2026年夏のシーズンまで同楽団の最新の演奏を、Apple Music Classicalを通して空間オーディオで届けることを発表した。それに先立って過去および現在のシーズンから、サブスクリプションユーザー限定だった6つの演奏の録音の提供を始める
ジョニー・グリーンウッド氏は、Apple Music Classicalの検索機能で、自分が好きな作曲家の知らなかった曲を発見できるなど、検索性に大きな魅力を感じているというが、一方で、このアプリの教育的価値にも大きな期待をしているという。
「作曲家たちの人生について、ちょっとした詳細で人間味を出すことができるだけで、音楽とのつながりが間違いなく変わると思う。学校の先生には、ただの赤毛の作曲家くらいの説明しか受けていなかった人物像が、突然、イタリア語の本を読み、美しい音楽を書く人物として頭の中に思い描けてくる。ただ、高みから何かを授けてくれる神様のような存在ではなく、人間的なつながりを感じるようになると思う」と説明する。
ヨーヨー・マ氏も、このアプリが生み出す「つながり」に期待を寄せている。
「皆さんご存知のように、クラシック音楽は、あらゆる文化と同様に、人と人とのつながりを大切にしています。そして、そのようなつながりをより可能にしてくれるアプリがあれば、人々はより好奇心を持ち、慣れ親しんだものを再び探求し、予想外のものを楽しみにするようになるでしょう」と語る。
また作曲家で、実業家でもあるゴードン・P・ゲッティ氏は「Apple Music Classicalの登場は、私たちの職業にとって特別な節目です。さまざまなアーテイストを称え、伝説的な録音を尊重し、私たちみんなの好奇心を刺激する、他に例を見ない音楽配信サービスです。Appleは、私たちの情熱にふさわしいユニークな体験を作り出しました。私は、このサービスが何世代にも渡って音楽の目的を前進させると確信しています」と語り、このサービスの登場を歓迎している。
面白いのは、各氏ともこのサービスのリリースを、ただの新サービスの発表という以上に、クラシックリスニング体験そのものの再発明として、大きな期待を寄せていることだ。
世界中のクラシック愛好家からの大きな期待を集めてリリースされたこのアプリ、日本でも発表時から大きな話題になっているが、ついに海外でのリリースがされた今、次に気になるのは日本でのリリースがいつになるかだ。
Appleは近日中としているが、1日も早いリリースを期待したい。
※一部表記を修正しました(2022年3月30日21時)。
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