「究極の液タブ」は小型化しても究極のまま? ワコムの「Cintiq Pro 17」をプロ絵師がレビュー:ある日のペン・ボード・ガジェット(2/4 ページ)
ワコムが10月に発表したプロクリエイター向け液晶タブレット「Wacom Cintiq Pro」シリーズ。今回は、より小型な「Wacom Cintiq Pro 17」をプロイラストレーターのrefeiaさんが試します。
持ち運び用途は事実上困難に
従来の中/小型機からの移行で一番障害になりそうなのが、出張や二拠点制作などの用途を見込んでいる場合でしょう。縦横のサイズは以前とほぼ同じですが、分厚くなり、内蔵スタンドはなくなり、背面にはグリップの出っ張りがあります。なお、価格からくる心理的な持ち運びづらさは一旦無視します。
専用スタンドを使用している場合も、簡易スタンドを使用している場合も、ネジなどの取り外し作業をしない限りは運びやすい形になりません。純正以外のスタンドを使うなど、表面上の解決がないわけでもなさそうですが、このモデルはそもそも頻繁な運搬は想定されていないと理解して使うのが安全そうですね。
Adobe RGBの優先度が低いディスプレイ
本機は、サイズ以外は基本的にCintiq Pro 27と同じ、と書きましたが、いくつかの注意すべき差もあります。
- 上面のねじ穴が減っていて、対応アクセサリーも異なる
- USBホスト(キーボードやUSBドングルが接続できる)端子が省かれている
- HDMIケーブルとDisplayPortケーブルが付属しない
- 表示できる色域がCintiq Pro 22やCintiq Pro 27ほど広くない
特に注意したいのが最後の項目です。表示モードを「ネイティブ」に設定して計測すると、Adobe RGBよりもDCI-P3やDisplay P3を目標に作られたディスプレイらしきことが伺えます。
Adobe RGBカバー率も公称で88%(CIE 1931)あるとはいえ、これくらいの価格域は妥協なく使いたいディスプレイでもあります。印刷物の制作に広色域を重視して挑みたい人は、Cintiq Pro 27や22などを優先して検討するとよいでしょう。
ハードウエアキャリブレーションに対応
今までは触れないでいましたが、旧モデルから引き続き、Cintiq Proシリーズはワコムの純正カラーキャリブレーター「Wacom Color Manager」に対応しているのも見逃せないポイントです。
カラーマネジメント自体は他社の製品もできますが、この組み合わせの特徴は「ハードウエアキャリブレーション」に対応していることです。通常は「ディスプレイの表示特性をOSに知らせて、逆算で正しく表示してもらう」というものですが、ハードウエアキャリブレーションを使うと、ディスプレイ自体を目標の特性に近づけることができます。
つまり、本体設定のsRGBモードやAdobe RGBモードみたいな表示を自宅で作れるわけですね。Cintiq Proは最初から調整された各種モードが搭載されているので、それを使えばいいとも言えますが、そうとも言い切れません。液タブは高価な買い物で、とても長い間使うことも想定できます。長い間使えば色がずれてくることもあるわけです。
ディスプレイは年々性能向上していますし、経年での発色の変化も穏やかになっているはずです。だからといって大丈夫とも言い切れませんし、もし色が変わってきたとしても助かる道があるなら、それに越したことはありません。
筆者が知る限り、ハードウエアキャリブレーションに対応した液タブはCintiq Proシリーズだけです(Xencelabsも2023年移行に対応予定とされているものの、執筆時点では未対応)。液タブは長く使う機材です。いざというときに助かる可能性があることと、キャリブレーションの方式によって助かり方が違うのを勉強したり検討したりする余地があることも、覚えておくと損にはならないでしょう。
関連記事
プロが選ぶ液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro」シリーズに17型と22型が登場 実機を見てきた
ワコムは10月19日にProクリエイター向け液晶タブレット「Wacom Cintiq Pro」シリーズに「Wacom Cintiq Pro 17」と「Wacom Cintiq Pro 22」を追加した。それぞれ専用スタンドもオプションで用意した。究極の液タブは55万円! ワコムの新モデル「Cintiq Pro 27」をプロ絵師がレビュー
ワコムから待望の新型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」が登場した。発売に先立ち、イラストレーターのrefeiaさんが実機を試してみた。新モデルの出来栄えは、いかに?ワコムが26.9型の液晶ペンタブレットの新モデル「Wacom Cintiq Pro 27」を発表 税込み48万1800円
ワコムが26.9型の液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」を発表した。プロの声を集約して反映させた新モデルは、10月12日から発売される予定だ。ワコム、「Wacom Cintiq Pro 27」直販価格を値上げ 11月1日から
ワコムは、同社製27型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」および専用スタンドの直販価格改定を発表した。高級左手デバイスはどんな人に向いている? プロイラストレーターが「TourBox Elite」を試して分かったこと
昨今、人気を集める「左手デバイス」。さまざまなカスタマイズが可能で、ユーザーの生産性アップに貢献してくれます。プロイラストレーターのrefeiaさんが導入した体験記をお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.