レビュー

Core Ultra搭載のAI PC「HP Spectre x360」で仕事は変わるのか? 実機を試してみた「目指せ↑ワンランク上の仕事術」デジモノ探訪記(2/2 ページ)

最新の「Core Ultra 7」を搭載した2in1 PC「HP Spectre x360 14」を試用する機会を得ました。今までのCoreシリーズ搭載モデルと何が違うのか、どのように仕事で生かせるのかを中心に試してみました。

前のページへ |       

Core Ultra目玉のNPUが活躍する場はまだまだこれから

 HP Spectre x360 14でタスクマネージャーのパフォーマンスタブを開くと、見慣れない「NPU」という表示が増えています。これがまさにAI用のプロセッサです。


こうした表示が増えるとワクワクするのは、私だけでしょうか?

 しかし、いろいろなソフトを使ってみたものの、現時点でNPUは一向に稼働しません。常に0%です。冒頭に紹介した通り、Intel製CPU内蔵のNPUを使うソフトウェアがまだまだ広まっていないためです。今後のWindows 11のアップデートでAI関連の機能強化がアナウンスされています。そうした機能でNPUが使われるようになるのかもしれませんが、まだプレビュー版の機能も多く、手元で試せないものがほとんどでした。

 既に搭載されているAI関連処理の1つ、Snipping Toolにて「スクリーンショットからテキストを抽出できる機能」は試せましたが、NPUは使っていなさそうでした。

advertisement

手書きではないので、NPUを使うほど難しい処理ではないのかもしれません

 唯一、NPUの稼働を確認できるソフトがWindows Studio Effectsです。これはカメラの背景ぼかしや、人を画像中心に移動させる自動フレーミング機能など、オンライン会議で便利に使える機能が備わっているものです。

 これはMicrosoft Teamsだけでなく、Zoomなど他ソフトでも汎用(はんよう)的に利用できます。こうした機能を稼働させることで、ようやくNPUの稼働を目にすることができました。


「NPUがやっと動いた!」という謎の感動

 特に自動フレーミングはオンライン会議でも便利に使えるおすすめ機能です。カメラを動かさなくても、顔が中心となるように回りの画像をカットするような処理をしています。

 オンライン会議で円滑にコミュニケーションするには、カメラに写る顔の表情も一つ重要な要素だと思います。こうした機能が充実していると、オンライン会議における特有のストレスを軽減できるでしょう。

 ちなみに画像をトリミングする場合、カメラの画素数が高い方がきれいです。HP Spectre x360は約900万画素(およそ4K)という高精細なWebカメラを搭載しているので、その点は本機特有の強みとなります。

 また、こうしたAI処理にCPUやGPUではなく専用のNPUを使うことで、省電力になるという大きなメリットがあります。これはすなわち、他のソフトを同時に使う余力があるということでもあります。オンライン会議をしながらPowerPointのスライドを表示させて──といった場面で、背景ぼかしなどの処理の重さに引きずられることが少なくなります。また、NPU自体がCPUやGPUに比べて電力効率が高いため、同じ処理をしても省電力、バッテリーの持ちもよくなるというわけです。

ソフトが対応してくる将来が楽しみ

 正直、NPUの活用はソフトウェアがまだまだこれからといったところです。現時点において、わざわざCore Ultraのためだけに急いでPCを買い換える必要はないと感じます。

 しかし、ちょうど買い換えタイミングなどでPCを新調したいと考えている方は、前世代の第13世代Coreプロセッサではなく、最新のCore Ultra搭載モデルをおすすめします。この先、NPUの活用が広がることで、より長く使い続けられるPCとなるでしょう。

 それはなぜか? 端末側である程度のAI処理が実用的な速度で処理できるということは、仕事上でも生産性に大きく影響してくると考えられるからです。

 「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」といったサービスが続々と登場していますが、これらはクラウドベースで処理をしています。こうした大規模な生成AI関連サービスを将来的に端末内で完結できるかは別の問題ですが、生成AIを要素技術として取り入れたサービスがローカル処理できるようになれば、ネットワークの環境に依存しなくなり、セキュリティ面でも大きなメリットとなります。

 特定の業務に特化した生成AIモデルを端末にインストールし、その端末単独で生成AIを業務に活用できる──そうしたことが実現できると、さらに場所を問わず高度な業務が行えることにもつながり、それは企業の競争力に直結するようになるのかもしれません。


今購入するのであれば、未来を見据えて「Core Ultra」搭載モデルを選択するのがおすすめです

 最後に、PCやCore Ultraといった話からは少し脱線しますが、こうしたAIの活用において個人的に実現してほしいのは、端末のみで稼働する高性能な翻訳機です。これが実現できれば、多くの人が世界とつながる助けになると感じます。テクノロジーがより世界を豊かにする、そんな未来を楽しみにしています。

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.