「日本社会の幸福がなくてはBoxの幸福はない」 古市社長がこだわる組織作り:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/2 ページ)
ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。ここでは、大河原克行氏による経営者インタビュー連載のBox Japan 後編をお届けする。
ポストコロナ時代に入ったが、世界情勢の不安定化や続く円安など業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。前編の記事はこちら。
Boxは11月12日と13日、米サンフランシスコで同社の年次イベント「BoxWorks 2024」を開催した。「Content+AI」をテーマに、「Box AI Studio」や「Box Apps」による新たなイノベーションを発表。インテリジェントコンテンツマネジメントの未来像を示してみせた。
インタビュー後編では、BoxWorks 2024において発表したBoxの新たな方向性を交えながら、日本における今後のBoxの取り組みについて、Box Japanの古市克典社長に聞いた。また、Box Japanにおける「働きがい」と「働きやすさ」へのこだわりについても語ってもらった。
企業内データの活用を促す仕掛けを多数発表した年次イベント
―― 2024年のBoxWorks 2024は5年ぶりのリアル開催となりました。どんな意味を持ったイベントになりましたか。
古市 BoxWorks 2024では「Content+AI」をテーマにAIを活用し、業務の自動化を一層促進するためのさまざまなサービスや機能を発表しました。インテリジェンスと自動化という方向性において、新たなイノベーションを提案できたと考えており、大きな進化を遂げたといえます。
今回発表した新たなサービス群によって、Boxが目指す「インテリジェントコンテンツマネジメント」(ICM)の世界を、より理解してもらいやすくなったのではないでしょうか。ICMの進化に終わりはありませんが、インテリジェンスと自動化を実現する機能を提供できる土台ができたといえます。
発表したサービスの中で、目玉の1つがBox Appsです。コンテンツ中心のビジネスプロセスを管理するインテリジェントなアプリケーションを、従来よりも簡単に作成できるノーコードソリューションです。業務の進ちょく状況を可視化するためのダッシュボードを簡単に開発できます。
また「Box AI metadata extraction」を活用することで、画像を含めたコンテンツにも、メタデータを自動的に付与し、AIによって自動で仕分けをすることも可能です。
このように、ノーコードツールとAIによってビジネスプロセスの自動化を実現することになります。
もう1つの目玉が「Box AI Studio」です。企業がコンテンツにAIを活用する際に、より柔軟なカスタマイズやコントロールが可能になります。MicrosoftのAzure Open AI Serviceを始め、世の中で普及している主要な大規模言語モデルを使用でき、その中からBox AI Studioが処理に最適なAIを選択してくれます。もちろん、自分で選択することも可能です。お客さまのコンテンツを守りながら、アクセス権限をコントロールして、AIによるコンテンツ解析ができるようになります。
その他、「AI-powered security」ではAIを活用した文書の自動分類が可能であり、内容を判別しながら機密レベルを提示して管理します。「Box Archive」では、規制やコンプライアンスに対応するための長期的なコンテンツ保存の簡素化が行え、「Box Content Recovery」ではランサムウェア攻撃からコンテンツを復元し、数千のファイルを数時間で復元できます。
また重要な発表の1つが、2025年1月から提供を開始する新プランの「Enterprise Advanced」です。この中に、Boxが提供するインリジェンスと自動化を満載したといえます。これらで提供される新たな機能は、2024年末以降にリリースすることになります。
Enterprise Advancedで提供するBox Formsは、Boxにネイティブに統合されたノーコードフォームビルダーで、データ入力を促すフォーム画面をユーザー自身がノーコードで作成できます。さらにBox Doc Genでは、Box Formsで作成した機能をドキュメントの中に埋め込むことができます。またワークフロー機能であるBox Relayによってドキュメント生成や承認タスクの割り当て、フォームの更新などを行えます。もちろん、電子署名の「Box Sign」と連携させた利用も可能です。
―― 2025年1月締めとなる2025年度は、Box Japanにとってどんな1年になっていますか。
古市 上期までを見ても業績はとても好調です。ARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)や受注高、継続率も計画を上回る形で進ちょくしています。「Box Relay」や「Box AI」といった新たな製品群に対する評価が高まっていることも成長に貢献しています。国内ではCxOラウンドテーブルを頻繁に開催し、お客さま同士で情報交換できる場を提供するなど、Boxに対するお客さまの理解が促進されたことも追い風になっています。
特筆できる成果の1つがBox Consultingサービスです。一般的にコンサルティングサービスというと導入コンサルティングを指すことが多いのですが、Box Consultingサービスは構想ビジネスコンサルティングというもので、Boxの導入についてはまだ構想段階というお客さまに対して、Boxを活用することで生まれるメリットや価値をご提案するものになっています。
有償サービスとして提供し、かなり詳細な提案を行いますから、導入してからすぐに価値を感じることができたり、導入後の定着率が高まったりするという成果にもつながっています。ARRや受注高が伸びている理由の1つに、Box Consultingサービスによる獲得案件が増加していることが挙げられます。
成長に合わせて人材の確保も積極化しているのですが、ここはやや遅れ気味になっていることが反省点です。
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