FMVがモバイルノートPC市場でシェアNo.1となる――FCCL大隈社長が目指す新たな頂:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)
ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。ここでは、大河原克行氏による経営者インタビュー連載の富士通クライアントコンピューティング(FCCL) 後編をお届けする。
一過性のものではなく継続的にキャンパスライフを応援したい
―― こういった議論において結論を出す際に、立ち返る考え方のようなものはあったのですか。
大隈 FMV Note Cで当初から打ち出していたのが、「Noiseless Design」「ComfortableSilence」「Original Apps」へのこだわりです。
例を挙げると、Noiseless Designというのは、製品のデザインだけでなく体験も含まれます。分厚いマニュアルが残ってしまっては、ノイズレスにはなりません。全ての議論において、ここに立ち返るんだということを言語化し、それを共通認識としてプロジェクトを進めていきました。最初に、ここに時間をかけて立ち返るものを作れたことが良かった思います。
―― FMV Note Cの開発で採用した若手中心のモノ作りへのアプローチは、何か参考にしたものはあるのですか。
大隈 私は、コンサルティング時代に製品企画や製品開発の現場でアプローチ方法を提案し、一緒にプロジェクトを進めた経験があります。動きが速いコンシューマー製品の場合には、製品やブランドが目指すべき方向性や姿を、強い権限と経験を持って引っ張っていくリーダーが必要であることを体験的に知っていました。
今回のFMV Note Cは、これと同じアプローチを取った方がいいと判断しました。違うのは経験を持った人がリードするのではなく、ブランドマネージャーに若手を抜擢し、足りないところや意思決定は私がカバーする形にした点です。
世界最軽量の「FMV Note U(旧LIFEBOOK UH)」であれば、経験がある人をブランドマネージャーに据えるのがいいのですが、FMV Note Cだからこそ、若手の感性を生かし、それをベテランエンジニアが実現し、若手の力では足りないところを私がカバーする体制がいいと思いました。
―― 経営トップの立場から、気を付けていたことはありますか。
大隈 この製品がビジネスとして成り立つように、ちゃんと仕上げることを一番に考えていました。ブランドマネージャーには、自由に無邪気に、やりたいことを突き詰めてもらい、どうしたら利益を確保できるかという点については私が責任を持ちました。
事業としての収益性と、ブランドマネージャーが目指すコンセプトを両立させるための最適なポイントを実現すべく、価格や仕様のバランスについては毎日のように議論し、判断していきました。
実は、パソコン少年だった私の立場で本音を言うと、ついつい口を出したくなってしまうんですよ(笑)。色一つを取っても、これがいいと私が言ってしまうと、それに決まってしまいますし、細かいところまで口をはさむと、自然と忖度(そんたく)する動きが出てきてしまいます。言いたいけれど、言ってはいけないという点で、モヤモヤしたり、モゾモゾしたり。そこは、苦しかったですね(笑)。
―― FMV Note Cの仕上がりは、合格点ですか。
大隈 FMV Note Cは、全く新しいことに全く新しい体制で挑戦したものです。思いっ切り振り切った開発方法を取り、新たなことを始めたため、想定外のことが起きて紆余曲折はありましたが、自信を持って、お客さまに届けられる製品に仕上がったといえます。
現時点で見れば、100点満点中100点の製品になったと思っています。将来に向けて、120点、150点と加点できるように進化させたいですね。よくなる余地はまだまだありますし、そこは、お客さまからのフィードバックを得て、進化させていきます。
―― 若年層に向けての訴求はどんなことを考えていますか。
大隈 FMV Note Cの発売に合わせて、全9話のTikTokミュージックドラマ「うぇいだけが青春ですか?」を制作し、主演には、俳優の八木莉可子さんを起用しました。店頭展示もシンプルに伝えられるようにこだわりました。
プロモーション企画をお願いしている代理店も、20代の若い人たちが参加しており、FMV From Zero Projectのチームと同じ言語で会話をし、同じ感性で考えてもらっています。
―― 新たに「GOOD CAMPUS LIFE Project」をスタートしました。これはどんな狙いから始めたものですか。
大隈 大学生がパソコンを購入するのは3月~4月に集中し、その後は関係が切れてしまいがちになります。もっと継続的に、学生の暮らしやキャンパスライフを応援したいと考え、その取り組みとして、GOOD CAMPUS LIFE Projectを開始しました。
継続的なエンゲーシメントを通じて醸成されたFMVのイメージが大学生の間に広がり、親しみやすいブランドとして浸透を図ることを狙いとしています。
―― 第一弾として、早稲田大学繊維研究会と連携して、「CUSHION JUMPER」を発表しています。背中と腕にクッションが入り、収納式フードはネックピローになり、長時間のパソコン作業をサポートするというユニークなものですが、これは販売することが目的ですか。
大隈 CUSHION JUMPERは販売することが目的ではなく、FCCLで販売することはありません。GOOD CAMPUS LIFE Projectの狙いは、大学生たちの活動をサポートすることで、キャンパスライフを元気にすることです。
また、こういった活動を通じて、その感性をFMVの商品開発や活動に生かしたいとも思っています。見えるアウトプットを求めたり、直接ビジネスにつなげたりするというのではなく、キャンパスライフを豊かにすることを支援したり、FCCLの企業文化のアップデートにつながったりすればいいと思っています。
CUSHION JUMPERのような大きな企画は、年に2回ぐらいやりたいですね。ここでは、数値的な成果は求めておらず、学生たちの活動を支援し、少しでもハッピーになってもらえるように支援したいと思っています。
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