「AirPods Pro 3」の魅力は「ライブ翻訳」だけではない! 実機を試して分かった買うべきユーザー(1/3 ページ)
Appleがスペシャルイベントで発表したさまざまなデバイスが、9月19日から販売される。まずは新型イヤフォンの「AirPods Pro 3」をチェックしよう。
Apple本社での新製品発表会取材中、金沢の友人からのメッセージ通知が画面に表示された。
「ついに、ほんやくコンニャク誕生!」
一瞬吹き出してしまった。しかし、まさにその通りだった。目の前で話している外国人の言葉を、母語/母国語に同時通訳してくれるAirPods Pro 3の目玉機能「ライブ翻訳」。その発表を会場で参加プレスのために同時通訳していた人たちはどんな気持ちで訳していたのだろう。
日本での機能提供は年内と少し先になりそうだが、Apple最小のウェアラブルコンピュータはただの優れたヘッドフォンを超え、また一歩SFの世界へと足を踏み込んでいった。ただし、あまり伝わっていないが、AirPods Pro 3はこの飛び道具のような目玉機能を差し引いても十分大きな進化となっている。
9月19日に発売される「AirPods Pro 3」。一見すると、これまでのAirPods Proとほとんど変わっていないように見えるが、実は本体形状やケースのデザイン、そして音質や中の機能までが新しくなっている。正直、ここまで変わっているとは筆者も思わず、原稿が当初の予定よりも大幅に長くなってしまった
伝わりにくい「AirPods Pro 3」のすごさ
AirPods Pro 3は、レビューワー泣かせの製品だ。写真やスペック表だけを見せても、前モデルのAirPod Pro 2との違いがなかなかよく分からない。伝わるのは新機能の「心拍計測」とライブ翻訳くらいだろう。
では、本当にそれしか違いがないのかというと、そんなことはない。実はスペック表に表れにくい品質の部分が全面的に見直されて良くなっている。これらの新機能を差し引いても、十分魅力あふれるアップデートとなっている。
最初、数十分試した段階では「確かにフィット感も良くなったし、音質もクリアで良くなった気がするけど、記事でうまく伝えられるだろうか、思い込みもあるかもしれないし、本当にそう書いていいものか」と不安に思っていた。
しかし、数十分の検証の後にAirPods Pro 2に戻ると、それまでの「気がする」が「確証」に変わった。
「損失回避(loss aversion)」 という言葉があるそうだ。人間は性能向上には比較的すぐに感覚順応してしまい、なかなかそのすごさを実感しにくい。しかし一度、その品質に慣れて、そこが参照点となった後、それを下回る水準のものを試した場合、すごさの損失は敏感に感じられるという(実験設定や個人差によって1.5~4倍程度の差があるらしい)。
確かに、AirPods Pro 3に慣れた後でAirPods Pro 2に戻ってみると、音質やフィット感など全ての面においてAirPods Pro 3より見劣りすることがハッキリと感じとれた(それでもAirPods Pro 3を知らなければ、今でも十分に満足できる製品だとは思うが)。
違いを細かくみていこう。
AirPods Pro 2(左)とAirPods Pro 3(右)のケースとイヤピース。実はケースの違いはすぐに判別できる。これまでのケースの中央にあったLEDの小さな窓がなくなり、ケースの内側から光るようになった。イヤピースは変わっていないように見えるが、イヤーチップ部分の角度などを見てもらうと変わっていることが分かる
背面から見たAirPods Pro 2(左)とAirPods Pro 3(右)のケースとイヤピース。ケースは背面からペアリング用のボタンがなくなった。ペアリングは、ケースの正面を指の腹で2回タップすることで行われる
見た目は変わらず、中身は別物
まずは外観だ。最初は「見た目は(従来のAirPods Pro 2と)一緒か」と思っていた。実際に写真で見る限り製品の外観はそっくりだ。しかし、旧製品を使い込んでいる人は、ケースから出した瞬間に違いに気が付くはずだ。
イヤーピースから伸びた長い部分、ステムの太さが見た目には分かりづらくても、指でつかめば明らかに太くなっているのだ。ノギスを使って正確に測ってみたところ、AirPods Pro 2のステムの直径が5.82mmだったのに対してPro 3は6.79mmで0.97mmほど太い。
飛躍的進化を遂げたのだから当たり前と言えば当たり前かもしれないが、この小さな容積アップを活用して今回の進化を生み出したのだろう。形状が異なるので正確な比較はできないが、同じ長さあたりの容積率は36%増えている計算になる。
よく見るとイヤピース部分も形が変わっていて、少し小型化し面の角度やイヤーチップの角度も異なっている。これらはフィット感向上のための工夫のようだ。
幸か不幸か、筆者は歴代AirPodsの全てが標準のイヤーチップで問題なくフィットしてズレ落ちない耳の形なので、そうでない人の気持ちは分からない。しかし、確かに一部の友人から、今でも「耳に合わない」「落ちる」といった声は聞いている。
Appleは1万人以上の耳の形を累計10万時間以上のユーザー調査を元に再デザインを行い、その結果、イヤーピースの本体部分を小さくし、新たにイヤーチップも、これまでのXSよりさらに小さいXXSというサイズを加えた5種類になり、これまでで最も多くの耳にフィットするように進化しているという。ぜひ、直営店などで試してみて欲しい。
イヤーチップそのものの作りも、フォーム材入りに進化している。正直、指で触っても「言われてみると弾力が強くなっている?」という程度であまり分からなかったが、これも何度か着脱を繰り返した後に、AirPods Pro 2を使ってみて「あれ? AirPods Pro 2って、実はちょっと緩かった?」とその差に気が付いた。
このフィット感のおかげで、後に検証するノイズキャンセリング機能においてもそもそも耳につけた時点での音の密閉感は確実に高まっており、これがフォーム材入りイヤーチップの効果のようだ。
同時に、従来のシリコン製と比べて耳の形状により自然にフィットし、長時間装着しても不快さがないという。実際、この記事を書きながら既に4時間近くAirPods Pro 3を耳につけっぱなしにしているが、(プラセボ効果の可能性はあるが)確かに不快さは感じていない。これがAirPods Pro 2だと、東京から大阪・関西万博への移動で新大阪駅や伊丹空港に着く(3時間くらいだろうか)辺りからちょっと外耳が痛くなり、一度外して耳を休ませる(もっとも、これは個人差が大きそうだ)。
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