「AirPods Pro 3」の魅力は「ライブ翻訳」だけではない! 実機を試して分かった買うべきユーザー(3/3 ページ)
Appleがスペシャルイベントで発表したさまざまなデバイスが、9月19日から販売される。まずは新型イヤフォンの「AirPods Pro 3」をチェックしよう。
心拍数も測れるように
このように見た目はほとんど変わらないながら、全方位的に良くなったAirPods Proだが、2つ新機能も搭載されている。
1つ目は「心拍計測」の機能だ。Apple Watchのユーザーであれば、既にApple Watchに同様の機能があるが、Apple Watchを持っていない人が恩恵を受けるだけでなく、Apple WatchとAirPods Pro 3の両方を身につけている時にも情報を相互補完して精度を上げてくれる。
ちなみにApple Watchの心拍計というと、たまに暗い部屋で見かけるApple Watch背面から漏れる怪しげな緑色の光を連想する人が多いかもしれない。だが同機能の搭載であなたの耳が緑色に光ることはないので安心してほしい。Apple Watchと違って、AirPods Pro 3の心拍計測はリモコンから発せられるのと同じ、目に見えない赤外線を使って計測している。
昨今の機械学習(広い意味でのAI)と25万人が参加しているAppleの「Apple Heart and Movement Study」という研究の賜物で、正確な心拍計測に加え、アクティビティやカロリー消費も計ることができる。
Apple Watchと異なるのはAirPods Pro 3は画面を備えていないため、AirPods Pro単体で心拍の値を知ることはできない点だ。「ヘルスケア」アプリを起動し「心拍数」の項目を開いて記録された値を確認する形になる。
AirPods Proが夢の「ほんやくコンニャク」に
そして、もう1つの目玉機能が、冒頭でも触れた「ライブ翻訳」――目の前の人が話している内容を同時通訳してくれる機能だ。残念ながら発売時点では日本語に対応していないが、下記の表に挙げた言語間の翻訳には対応している。
ライブ翻訳を利用するには、あらかじめ翻訳してほしい言語と翻訳先の言語のデーターをiPhoneの「翻訳」アプリでダウンロードしておく必要がある。そう、実はライブ翻訳はAirPods Pro 3単体で処理しているわけではなく、翻訳そのものはペアリングされたiPhone上の「翻訳」アプリで行っている(つまり、iPhoneがない環境では使えない)。
AirPods Pro 3には両耳のAirPods Pro 3のステムを摘むというジェスチャーを行うと、「ライブ翻訳」機能が起動する。あらかじめダウンロードしておいた言語間でリアルタイム翻訳をしてくれる。現在はβ版の機能として提供されており、まだ日本語には対応していない
これにはいい点もある。例えばあなたがパリの朝市を訪れた英語話者だとしよう。あなたはiPhoneにあらかじめフランス語と英語(アメリカ英語とイギリス英語が用意されている)のデータをダウンロードしておく。するとお店の人がフランス語で話した内容が、リアルタイムで翻訳されAirPods Proから英語で聞こえてくる。
でも、あなたがフランス語を全く話せないとして、商品についての質問などはどうしたらいいのだろうか? 心配は無用で、そのまま英語で質問をすればいい。すると、AirPods Proがあなたの質問を拾って、iPhoneの画面に文字でそのフランス語訳を表示してくれる。
ここで、もし相手もAirPods Proを持っていれば、iPhone不要でお互い自分の言語で話し続けて会話をできる。
翻訳のスピードだが、これは言語の組み合わせ次第で、例えばドイツ語などでは、長々と文章を話しておいて、最後の最後に「nicht(~ではない)」という否定の言葉を言うことで、それまで話していたことの意味が全て正反対になることがあるため、いったん最後まで話を聞いてからでないと英訳ができない。
一方でスペイン語とポルトガル語など近い言葉同士であれば、もう少し早いタイミングで翻訳が始まり、かなり快適に使えた。試したところ、スペイン語の発声はやたらと流ちょうだが、iPhoneにとっては母国語であるはずのアメリカ英語も含めて通訳の音声は少したどたどしい。
会話のやりとりはiPhone上の翻訳アプリが翻訳している。ただAirPods Proで通訳がされるだけでなく、翻訳アプリ上に会話の記録が残る。各吹き出しの上の小さな文字が声を文字起こしたもので、その下に大きな字で表示されているのが翻訳文だ。青いパートはポルトガル語からスペイン語への翻訳。下の白い文字は筆者が話したスペイン語をポルトガル語に翻訳した様子だ。画面を相手に見せて文字で読んでもらうこともできれば、再生ボタンを押してiPhoneに発声してもらうことも可能だ
参考までにGoogleはスマートフォン「Pixel」の新機能として電話での通話時に翻訳する機能を提供中で、既に日本語と英語のリアルタイム通訳にも対応している。
しかも、こちらはちゃんと話者の声色を真似する仕様になっていて、技術的には進んでいる印象がある(ただし、話者の声と機械による通訳の声の区別がつきにくいのは場合によっては混乱を招くかもしれない)。
とはいえ、AirPods Pro 3というインイヤーのイヤフォンを使って、目の前にいる人の声の翻訳がノイズキャンセルされた状態で自分の耳に直接入ってくる体験は、まさに「ほんやくコンニャク」的で新鮮で面白く、遠からず世界の観光名所の新スタンダートになっていそうに感じた(筆者は自力で現地の言葉を話すのが好きなので、ラテン語圏では使わないと思うが、アジア語圏ではぜひ使ってみたいと思う)。
耳の健康機能や価格はそのまま
これだけ大きな進化を遂げながら直販価格は3万9800円で、AirPods Pro 2から据え置きとなる。もちろん、今回紹介できなかった「耳の健康」に関する機能――つまり、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が近藤真彦さん(マッチ)を起用して勧めている聴力テストをいつでも受けられる機能も搭載していれば、万が一、難聴と診断された時には聴力補助も行ってくれる機能などもそのまま継承しており、耳の健康を維持するための道具としても強くお勧めできる製品だ。
既にこの機能を搭載しているAirPods Pro 2ユーザーにとってはかなり悩ましい存在だが、まだAirPods Proを使ったことがない人や初代AirPods Proを持っている人には強くお勧めできる製品に仕上がっている。
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