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「iPhone Pocket」に結実したイッセイ ミヤケとAppleのジョブズ時代から続く縁(1/3 ページ)

iPhone用の新アクセサリー「iPhone Pocket」が登場した。イッセイ ミヤケとAppleが歩んできた道のりを、林信行さんが読み解いた。

 2025年、iPhoneはウェアラブルコンピュータに進化しようとしている。9月発表の「iPhone Air」や「iPhone 17」「iPhone 17 Pro」シリーズにはクロスボディーストラップという純正ケースに通して身につけるApple純正のストラップが別売りされていたが、Appleのデザイナーたちは彼らが敬愛する世界的ファッションブランドにも、iPhoneを身に付ける方法の模索を依頼していた。

 その頼まれていたブランドというのが、日本のイッセイ ミヤケグループのデザインディレクターでもある宮前義之氏が率いるチームだ。

 こうして出来上がったのは、見ているだけでも楽しくなってくる8つのカラーバリエーションと2つのサイズバリエーションがある「iPhone Pocket」だ。

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11月14日、イッセイ ミヤケとAppleの協業による「iPhone Pocket」が登場。身につけ方は自由なiPhone専用の新しいポケットだ。二重ニットの真ん中に開いた穴からiPhoneを滑り込ませる。写真はショートストラップデザイン/レモン(黄色)とマンダリン(オレンジ)モデルだ(写真提供:©ISSEY MIYAKE INC.)
イッセイ ミヤケの人気バッグ、baobaoのアニメーション広告をほうふつとさせるイッセイ ミヤケ制作の広告動画「Movie Courtesy of ©ISSEY MIYAKE INC.」

iPhoneのために作られた新しいポケット

 iPhone Pocketは、iPhoneをこれまで以上に身近に感じるための新しいポケットだ。世界中の人々がイッセイ ミヤケと聞けば連想するプリーツ加工(衣服に立体感を出すためなどに施される「ひだ」や「折り目」)が施された細長いニットのポケットで2種類のサイズが用意されている。

 iPhoneの高さの2.5倍ほどの長さのショートストラップデザイン(2万5800円)は鞄の持ち手に巻き付けたり、手に巻き付けてハンドバッグのように持ったりすることもできる。

 ショートストラップのちょうど倍の長さのロングストラップデザイン(3万9800円)は肩に斜めがけにすると、ちょうどiPhoneが腰のあたりにくる。

 もちろん、あえて結び目を大きくしてロングストラップをカバンに巻きつけたり、ショートストラップをそのまま腕にかけたりして持ち歩くといった使い方をしても構わず、使い方はユーザー次第だ。


iPhone Pocketの身につけ方は自由だ。カバンの持ち手に巻きつけて使うこともできる(写真提供:Apple)

 製品の特徴をいくつか挙げると、

  • モデルを選ばない設計:素材が伸縮するため、小さなサイズのiPhoneから大きなサイズのものまで全モデルに単一の製品で対応
  • スクリーンの変化を感じとれる透過性:生地の隙間からディスプレイが透けて見えるので着信やメッセージ通知が届いたことが分かる
  • 衝撃吸収:3D構造により適度な厚みを持ち衝撃をやわらげる

 実際に手に取ると非常に軽く、触り心地も良く、伸縮性は楽しく、色展開も美しく身に付けると心も軽やかになる。

 一見単純な製品に見えるかもしれないが、実は非常によく考えられ、非常に高品質な作りになっている。単純にこれと同じような形の布を切ったり縫い合わせたりするだけで作れるか想像してほしい。

 同様の形状を作ろうとしても、おそらく真ん中に穴を開けると、そこから製品が裂けて穴が広がってしまうだろうし、素材選びを間違えれば熱がこもってしまう。そもそもこれだけ軽やかで柔軟性があり、発色のきれいな製品はなかなか作れない。

 そして特筆すべきは、製品の横についた「issey miyake」と書かれたタグの根っこにすら縫い目が見当たらない。本来、製品のこんな中腹のあたりとなると、通常のミシンでは縫製が困難な箇所である。

 こういった部分の実現には、イッセイ ミヤケの3Dニットの製造技術と、今日の技術では難しい加工も諦めず、場合によっては加工をする道具の開発までして形にしてしまうAppleの技術力が結びつくことで実現している。

 世界トップクラスのデザイン力を持つテクノロジーブランド「Apple」と日本でトップクラスのデザイン力を持つブランド「イッセイ ミヤケ」のコラボレーションは、世界のデザイン業界にとっても大きな衝撃を与えるはずだ。


レモン(黄色)/マンダリン(オレンジ)/パープル/ピンク/ピーコック(エメラルドブルー)/サファイア(濃紺)/シナモン(茶色)/ブラックの8色展開のショートストラップデザイン。ちょうど倍の長さのロングストラップデザインは、写真右端の3色(サファイア/シナモン/ブラック)だけ用意される(写真提供:Apple)

8色のカラーバリエーションはイッセイ ミヤケ側が選んだものだが、色の提案をした際、オレンジのモデルだけは最終製品に残してほしいと言われたという。デザイナーの宮前義之氏は、iPhone 17 Proでコズミックオレンジが用意されているのを見て理由を知ったという。写真はショートストラップデザイン/オレンジモデル(写真提供:Apple)

 iPhone Pocketは、11月14日から世界の8つの国と地域で限定品として提供される。日本ではApple Ginza、海外ではApple SoHo(ニューヨーク) 、Apple Regent Street(ロンドン)、Apple Marche Saint-Germain(パリ)、Apple Piazza Liberty(ミラノ)、Apple Orchard Road(シンガポール)、Apple Jing'an(上海)、Apple Canton Road(香港)、Apple Xinyi A13(台北)、そしてApple Myeongdong(ソウル)といったAppleとイッセイ ミヤケの両方のブランドが強い地域の旗艦店と、その国のオンラインストアで販売する(イッセイ ミヤケの店舗では販売しない)。


同じ作りなのに、色一つでこれだけ表情豊かなのがイッセイ ミヤケのモノ作りの魅力だ。イッセイ ミヤケの各ブランドの製品は、マンスリーカラーといって同じ形のアイテムが年間計画に沿って毎月数量限定で作られ販売される。そのため人気色はすぐに売り切れてしまうが、それだけに他の人と被らないファッションアイテムとしての価値が高まるだけでなく、無駄に作らない環境にやさしいモノ作りにもなっている(写真提供:©ISSEY MIYAKE INC.)

 なお、実際にどの程度の数量が提供されるかは不明だが、イッセイ ミヤケの製品に精通している人なら分かると思うが、同社の各ブランドの商品は毎月、予告されている通りのカラー展開が決められた日に発売されると人気色は数日中に売り切れになる。

 iPhone Pocketも同様になるかは不明だが、ファッションアイテムはあまりにも全員が同じものを持ってしまうと特別感がなくなってしまうこともあるため、やはり量はある程度は絞られるのではないかと筆者は想像している。

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