「Apple 銀座」が2003年にオープンした地に帰還! 22年間で何が変わって何が変わらなかったのか(1/2 ページ)
米国外で初の出店となった「Apple 銀座」が、9月26日にリニューアルオープンする。一足先に現地に向かった林信行さんがレポート。
日本初のApple Storeとしてオープンした「Apple 銀座」が、9月26日の午前10時に開業の地である銀座3丁目に戻ってくる。
2003年11月30日に、米国外で初となるApple直営店としてスタートした「Apple Store Ginza」だが、その後も名称を変えて親しまれてきた。2022年8月末に、サヱグサビルの建て替えのため一時閉店し、銀座8丁目の隈研吾建築都市設計事務所が手がけた木造ビル「HULIC & New GINZA 8」で仮営業を続けてきた。
だが、その仮店舗も9月22日に営業停止となった。9月26日からは、約3年間の建て替え期間を経て全面リニューアルした新店舗での営業がスタートする。東京で最もアクセシビリティに配慮したストアとして、広く大勢の人に愛されるストアを目指すという。
銀座3丁目に戻ってきた「Apple 銀座」。松屋通り側を3分割し、2フロア単位で区切ることで正方形に近い形になっている白い格子と、それをさらに細かく分割した黒い格子が入れ子状態になっている。よく見ると、正面の銀座大通り側の格子は黒格子が1列多く横長になっていることが分かる
銀座という“特別な地”への帰還
Apple 銀座は単に日本初のApple直営店ではなく、ブランド直営店として最も成功している米国外1号店であり、Appleにとっても非常に重要なショップだ。
22年前のオープニング時には同社共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が訪れ、そのオープンを祝った。
2003年当時、AppleはまだiPodを出したばかりで「Appleは最近、iPodで注目を集めつつあるまだマイナーなPCメーカー」という状態でもあった。当時のMacintoshのOSである「Mac OS X Jaguar」が採用し始めた、メタリックのウィンドウデザインを踏襲したメタリックの外装が象徴的だった。
開店に向けた発表会に集まった記者の1人からは、「(コンピュータメーカーなのに)なぜ、秋葉原ではなく地価も高い銀座に店をオープンするのか」という質問が出た時代だ。
ジョブズ氏は、「AppleのPC市場シェアは1割ほどで、Appleのことを既に知ってくれている人たちが買いに来てくれるような場所(秋葉原のこと)ではなく、Appleというブランドをまだ知らない一般の人々の往来も多い一等地に素敵な店をオープンして、それまで顧客でなかった人たちに知ってもらうことに意義がある」といったことを述べていた。
22年の間に世界は大きく変わった。今では、Appleは最も成功しているスマートフォンのメジャーブランドであり、世界中のApple直営店は常に人であふれかえっている。
Appleにとっても重要な銀座に、再オープンした同店はどのように生まれ変わったのだろうか。
新店舗の建築デザイン
新しくなったApple 銀座は、店内と店外に壁を作らない大きなガラス窓で構成されているのが特徴だ。
建物を外側から見ると、大きな白い枠で区切られた格子状の見た目になっている。実はこの白枠の格子の中に、さらに黒枠の格子がある入れ子の格子になっているのだ。これは「Apple 京都」で採用された日本の障子をイメージした格子のモチーフを表したものだと思われる。
Apple 京都では格子の間が白く、店内の様子がシルエットとして少しだけ透けて見える作りだったが、Apple 銀座は透明な窓ガラスになっている。ガラスは二重構造になっており、間にベネシャンブラインド型のルーバーが設置されている。
太陽のまぶしさや熱を抑えつつも、店内で柔らかい自然光が入るように太陽光の角度に応じて自動で調整されるという。
店内は1階〜2階が吹き抜けだ。2003年にApple 銀座がオープンした時、スティーブ・ジョブズ氏と当時のリテール部門責任者が銀座中央通りで他店を研究していたが、その時に気に入って指を指しながら話していたのが、通りに面したガラス張りの吹き抜けがあったハリー・ウィンストン銀座店だった(2024年8月に移転)。今回の入口の吹き抜けは、それを想起させる
1フロアあたりの床面積は、約32m×12mのおよそ380m2と決して広くはない。
かつてのApple 銀座は、2基のエレベーターと階段をガス灯通り側に寄せていた。今回のリニューアルでは、松屋通り側の長さを堪能できるように、フロア移動の動線は入って右側の奥行き約3mのスペースに集約している。
その分、3〜4階部分では銀座中央通り、松屋通り、ガス灯通りの3面をガラス張りにして、銀座の街との一体感をより強く感じられる作りに変えている。
そんなApple 銀座だが、建物を外から見た時のもう1つの特徴が半透明のエレベーターだ。昇降路が磨りガラスで覆われ、カゴがその内側から光るようになっている。つまり、カゴの発着や通過する様子が、光の移動として可視化されており、その様子が夜であれば銀座大通り側からでも見え、店内の活気を伝える設計になっている。
内装は床が人工大理石で、天井はヨーロピアンホワイトオークと思われる木材だ。実はAppleの本社である「Apple Park」の中でも、最も建築的に美しいFitness Center(Apple Watchの紹介ビデオによく登場している)と同じ作りの天井と思われる(実は発光はしないが、昇降路を半透明のガラスで覆う作りもApple ParkのRing Buildingと共通している)。
東京で最もアクセシビリティに配慮したストアを目指し、ジーニアスバーなどで高さの違うテーブルや椅子を用意した作りは、7月にオープンした「Apple 梅田」にも通じるものがある。
Apple 銀座と他店/本社の共通項
Apple 銀座の天井は、本社にある「Apple Fitness Center」の天井を想起させる。まるでリゾートホテルのようなフィットネスセンターで、内装の壁はヨセミテ公園にあるスティーブ・ジョブズ氏がお気に入りのホテルを模した石の壁になっている
昨今のApple直営店や、本社建築のノウハウを集約する形で作られたApple 銀座。それでは、4フロア構成となった新生Apple 銀座の店内を見ていこう。
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