egwordシリーズは、グッドデザイン賞を3度受賞するなど、昔からユーザインタフェースにこだわってきた。最新版のegword Universalでも、その姿勢は変わらない。たくさんの新機能を盛り込む一方で、どのメニューを見ても長さが画面の上半分(MacBookで見た場合)に収まっているのも、しっかりとデザインされている証拠だろう。
これまではこの短いメニューを保つために編集モードによってメニュー内容を切り替える必要があったが、egword Universalでは編集モードに関わらずメニュー構成は一緒。こうしたモード切り替えのないメニューは、「あのメニューはいったいどこにいってしまったんだろう」という初心者の不安を取り除くうえでも重要なポイントだ。
メニューバーを短く保ちつつ、モードレス化も実現できたのは、ページレイアウト、アウトライン、図形、表の各編集モードによって切り替わるモードバーを用意したことや、細かい設定/調整を行うためのインスペクタを導入したことによるところが大きい。
なお、インスペクタ以外にも、カラーを選択するための「カラーパネル」、作図レイヤー(後述)を切り替える「レイヤーパネル」、オブジェクトのレイアウトを行う「整列パネル」、そして文字数をリアルタイムで表示する「文字数情報パネル」の4つのパネルを備えている。
論文や原稿などは、文字数が決められている場合が多いが、「文字数情報パネル」を使えば文字の増減や現在の段落数、印刷時のページ数がリアルタイムで分かって便利だ。実はegword Universalの文字数情報パネルは、文章全体としての行数を表示してくれるだけでなく、セクションごとの行数などの情報も表示してくれる。例えば雑誌用の記事などを書いているとき、本文は20文字×100行だが、見出しの下のリード(導入文)の部分は30文字×4行、図の下に書くキャプションは15文字×3行といった具合に、同じ1つの原稿でも文字数の指定がセクションごとに細かく分かれていることが多い。
こうした状況では、行番号表示の数を足し引きして文字数を数えるよりも、セクションを区切ってegword Universalの文字数情報パネルを見た方が便利かもしれない。ただ、唯一不便なのは現在カーソルがある位置が何行目か知ることができないことだ。例えば文章を100行くらいに減らそうとした場合、どのくらいまで削れば100行になるかを知りたければ、ページ数×ページ当たりの行数から計算することになる。
egwordは、1990年代中ごろ以降、論文を書く研究者らの間で支持されてきたが、それはこのソフトの柔軟性や表現力によるところが大きい。
最新版でも同様に、文章を書いている最中、思いついた時に、思いついた場所に、メニューを介さず図形や表を描くことができる。しかもこの作図機能は優秀で、半透明やドロップシャドウといった表現は当たり前、レイヤー機能やオブジェクト単位での整列、ロック(動かせないようにすること)などの機能を備えたかなり本格的なものとなっている。また、インスペクタを使って正確な表示位置を数値指定したり、図の角度を1度単位で回転できるほか、周囲の文字の回り込み方法も6種類から選ぶことが可能だ。
表組み機能も充実しており、微細な罫線描画のほかに、セル背景の半透明化やグラデーションでの表示も行える。表を扱える最近のソフトはたいていこうした機能が用意されているが、見映えのする表を作るのはなかなか簡単ではない。そこで同ソフトではあらかじめ20種類のテンプレートが用意されており、表作成時にこれをメニューで選ぶことができる。
ただし、この操作が「実行」ボタンを押してからでないと結果が見えないのは、少し残念なところだ。実際、20種類のデザインがどんな外観になるかを知るには、何度も表を作っては消すしかない。ライブ表示にこだわるegword Universalとしては、ぜひこの点は次期アップデートで改良してほしい。
一方、「クリップボードから表を作成」という機能は“さすが”と思わせる便利さだ。これは表計算ソフトでコピーしたデータの値を自動挿入するというもの。わざわざあらかじめ行や列の数などを指定する必要もなく、表計算ソフトとの連携がかなり楽だ。
ここまでは作図に焦点を当てて見てきたが、本来の機能である文章の表現力も充実している。横書き/縦書きの表示切り替えはもちろんだが、脚本家などにはうれしい縦書き原稿用紙モードも備えている。さらに、執筆前の情報整理に有利なアウトライン機能も用意されており、こちらは階層ごとの色分けがきれいで大変見やすい仕上がりとなっている。
egwordの特徴として、DTPの分野に強いことも挙げられる。Macで一番最初にヒラギノ2万字形の入力に対応したのはEGWORDだが、egword Universalも文字表現にはこだわっている。ヒラギノ2万字形など、日本語フォント、欧文フォントに関わらず一部のMac用フォントが持つ異体字、字形バリエーションといったフォント機能をほぼフル活用できるのだ。
レイアウト機能も進化した。浮動小数点演算を使った高精度の文字レイアウトは、文字送りも高精度で見た目にも美しい。また、アドビシステムズのDTPソフト「InDesign」と同様の文字数と行数を指定したグリッドを使った文字組が可能になっている。DTPの業界標準JIS X 4051組み版ルールへの準拠など、DTP用途もかなり意識した内容だ。
このほか、これまでのEGWORDでつくられた書類はもちろん、Microsoft Wordで作成された文書形式の読み込みにも対応しているため、テキストファイルのハブとしても利用可能だ。
さて、ここまででもかなりの機能を紹介してきたが、egword Universalにとってはまだ氷山の一角に過ぎない。書籍の執筆に書かせない目次や索引、スペルチェック、無制限のUndoなど機能を挙げだすときりがない。
それに加え、egword Universalには日本語入力プログラムの「egbridge Universal」(税込み1万290円相当)に、三省堂「新辞林」と、研究社「新英和・和英中辞典」の2つの辞書が付属しており、パッケージとしての価値はかなり高い。
価格は税込み2万9400円(アカデミック版1万8900円)となっており、気軽に買える値段ではないかも知れないが、Mac本体およびプリンタと一緒にとりあえず1本買っておけば文書や作図に関しての心配はなくなる。安心料としては決して高くはないはずだ。また、同社のWebサイトでは優待価格のダウンロード販売や無料の体験版も公開されているので、是非1度試してみてほしい。
論文や原稿を執筆する人、小冊子やチラシをつくるためのDTPソフトを探している人、ビジネスで図や表を盛り込んだ分かりやすい企画書を作りたいと思っている人――操作方法にわずらわされず直感的に、それでいて高度なレイアウトの文書がつくれるこのソフトは、幅広いユーザーにお勧めできる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社エルゴソフト
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年8月31日