DisplayPortからD-Subまで――液晶ディスプレイの「映像入力インタフェース」を網羅するITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第2回(3/4 ページ)

» 2008年12月12日 10時00分 公開
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DVIの後継でHDMIの対抗となる最新インタフェース「DisplayPort」

 DisplayPortについては、PC関連のインタフェースに関する標準規格を策定している業界団体の米VESA(Video Electronics Standards Association)が2005年5月にリリースし、2006年5月に正式承認された新しい規格だ。PCメーカーやディスプレイメーカーを中心に構成されるVESAが推進する映像インタフェースとあって、基本的にはPC用インタフェースとしてDVIやD-Subの後継を想定しているが、AV機器への搭載も考えられている。

DisplayPortのメスコネクタ(写真=左)とオスコネクタ(写真=中央)。DisplayPortのケーブルはHDMIに形状がよく似ているが、脱落しにくいようにコネクタ上部に2つのフックがある(写真=右)

 伝送レートは最大10.8Gbpsで、最大2560×2048ドット以上の解像度に対応し、色深度は48ビット(RGB各色16ビット)、リフレッシュレートは最大120Hz(120fps)となっており、映像インタフェースとしての基本スペックはHDMIに近い。ただし、データはRGBの映像信号とクロック信号を別々に送るHDMIとは異なり、映像/音声すべてを「Transfer Unit」というマイクロパケットに分割して宛先デバイスへシリアル転送する。

 DisplayPortは外部クロック信号を用いず、データからクロックを生成するPCI Expressのようなシリアルインタフェースなので、データ転送の高速化や機能拡張が容易であるほか、液晶ディスプレイを直接駆動させられる構造なので部品数を削減できるなどの利点が考えられる。15メートルという信号の長距離伝送が行えるのも見逃せない。

ナナオのDisplayPort搭載24.1型ワイド液晶ディスプレイ「ColorEdge CG242W」

 DisplayPortでは、出力側を「ソースデバイス」、入力側を「シンクデバイス」と定義している。ソースデバイスとシンクデバイスが相互に通信し、最適な解像度/色深度/リフレッシュレートなどを自動的に調整できるのが特徴だ。映像/音声データの伝送は「レーン」と呼ばれる1/2/4本のチャンネルと2つのデータレート(1.62Gbps/2.7Gbps)を組み合わせることができ、最小構成は1レーンで1.62Gbps、最大構成は4レーン×2.7Gbpsで10.8Gbpsとなる。

 サポートするオーディオフォーマットなどは、シンクデバイスの要件として定められている。オーディオフォーマットの場合、16ビットのリニアPCM(32/44.1/48kHz)対応は必須だが、それ以外のフォーマットはオプション扱いだ。とはいえ、「Dolby TrueHD」や「DTS HD」といったHigh Definition Audioまで対応できる。色情報については、RGB、YCbCr(4:2:2)、YCbCr(4:4:4)への対応が義務づけられている。

 DisplayPortの現状だが、2008年12月時点だと同出力対応のPCやグラフィックスカード、および液晶ディスプレイなどが出始めた程度だ。こうした製品もDVIやHDMIを同時に搭載したものが多い。ただし、アップルは2008年10月に発表したMacBookシリーズで全面的にDisplayPortを採用し、これが普及の大きな第一歩になると予想される。また、DisplayPortは将来的にノートPCの内部ディスプレイインタフェースにも採用されていく見込みだ。

コラム:「ライセンス料」――HDMIとDisplayPortのもう1つの違い

 HDMIとDisplayPortを比べたときの大きな違いの1つは、ライセンス料の有無だ。HDMIを製品に実装するにはライセンス料が発生し、年間で1万ドルかかる。さらにHDCPの実装にも、年間で1万5000ドルのライセンス料が別途必要だ。これらのライセンス料はメーカーの大きな負担になっており、多かれ少なかれ価格に反映されて一般ユーザーにも影響を与えている。より身近なのはHDMIケーブルで、HDMIケーブルにもライセンス料がかかっているため、ほかのAVケーブルと比べて高価なのだ(品質などの理由もあるため、ライセンス料だけが原因ではないが)。

 一方のDisplayPortは、HDCP以外のライセンス料が必要ない。このためメーカーも採用しやすく、量産が進めば、一般ユーザーにとっては価格的なメリットが生じるだろう。とはいえ、AV機器やゲーム機のデジタルインタフェースは今やHDMIが完全に主流となっており、PCメーカー主導で規格化されたDisplayPortがこれと置き換わることはなさそうだ。PC環境ではグラフィックスチップベンダーによるDisplayPortのサポートが進んでおり、前述のようにMacBookを筆頭に対応製品も増えつつあるため、DisplayPortが徐々に普及していくと予想される。



ハイビジョン対応のアナログビデオインタフェース「D端子/コンポーネント」

 アナログビデオ入力のインタフェースは、D端子とコンポーネント端子から解説していこう。この両者は、映像信号自体は同じものだ。映像信号は、輝度/同期信号の「Y」、青の色差信号の「Pb(Cb)」、赤の色差信号の「Pr(Cr)」という3種類で構成され、まとめてコンポーネント映像信号という。映像信号の分離や合成といった処理を省くことで、高品質なアナログ映像信号を入出力できるのが特徴だ。

映像信号を3本のケーブルで入力するコンポーネント

 コンポーネント端子は、3種類の映像信号ごとにコネクタが分かれており、「Y」は緑のコネクタ、「Pb(Cb)」は青のコネクタ、「Pr(Cr)」は赤のコネクタだ。対応する映像フォーマットは480i/480p/720p/1080iで、480i対応のコネクタを「Y/Cb/Cr」、それ以上の高品質な映像フォーマットに対応したコネクタを「Y/Pb/Pr」と表記することが多い。

 アナログビデオ入力の中では画質で有利なコンポーネント端子だが、コネクタが3つもあることから、接続が面倒だったり、搭載機器でコネクタが占めるスペースが大きくなるといった不便な点が見られる。制御系の信号が伝送できないこともあり、国内ではこれらを独自に改良したD端子がJEITA(当時はEIAJ)によって策定され、広く普及することとなった。

 D端子は、3種類のコンポーネント映像信号を1本のケーブルにまとめ、接続しやすくしたものだ。加えて、走査線数、走査方式、アスペクト比を認識するための制御信号も組み込めるようになっている。コネクタの形状がアルファベットの「D」に似ていることから「D端子」と名付けられたのであり、デジタルインタフェースではない点に注意してほしい。D端子と接続ケーブルを流れる信号はアナログだ。D端子の種類(D1〜5)と対応する映像フォーマットは、下表に示した。ちなみに1080pに対応する「D5」は搭載製品が多いが、JEITAの正式規格ではない。

D端子のメスコネクタ(写真=左)とオスコネクタ(写真=中央)。D端子のケーブルはコネクタの両端に脱落防止用のフックがある(写真=右)。ピン数は14本だ

D端子の種類と対応する映像フォーマット
480i(720×480ドット/インターレース) 480p(720×480ドット/プログレッシブ) 1080i(1920×1080ドット/インターレース) 720p(1280×720ドット/プログレッシブ) 1080p(1920×1080ドット/プログレッシブ)
D1
D2
D3
D4
D5

 ちなみに、コンポーネント端子とD端子の画質を比較すると、ケーブルやコネクタの構造的な問題により、コネクタ自体を3つに分離したコンポーネント端子のほうが高画質とされている。特にケーブルが長くなるほど、D端子は画質が劣化するという見方が大きい。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年3月31日