液晶ディスプレイの解像度を考えるうえで、もう1つ忘れてはならないのがアスペクト比だ。ここでは、画面の解像度をより深く解説するとともに、アスペクト比との関係もチェックしよう。
主なワイド液晶ディスプレイの解像度は前述した通りだが、そもそも解像度とは何か。解像度とは本来、対象物をどれだけ細かく分解して表すことができるかを示すもので、液晶ディスプレイで「画面解像度」といえば、それは液晶パネルの物理的な「横ドット数×縦ドット数」を意味するのが一般的だ。
画面解像度は「VGA」や「XGA」といった略称で示されるが、この略称はIBMのグラフィックス規格が業界標準として定着したもので、その後に登場した高解像度の略称が厳密に規格化されているわけではない。したがって、1つの略称が複数の解像度を指してしまう場合も一部にある点は注意してほしい(WXGAなど)。そもそも「横ドット数×縦ドット数」を「解像度」と呼ぶのは、本来の言葉の意味からも正確とはいいがたいのだが、業界標準の呼称として定着しているため、ここでも準ずることにする。
一方、アスペクト比とは長辺と短辺の長さの比率を表す言葉で、ここでは画面解像度の「横ドット数と縦ドット数の比率」のことだ。下表に主な画面解像度とアスペクト比の関係をまとめてみた。
主な画面解像度とアスペクト比の関係(ワイド画面) | ||||
---|---|---|---|---|
略称 | 横×縦のドット数 | アスペクト比 | 横×縦の総ドット数 | |
WSVGA | 1024×600 | 16:9.375 | 61万4400 | |
720p | 1280×720 | 16:9 | 92万1600 | |
WXGA | 1280×768 | 16:9.6 | 98万3040 | |
1280×800 | 16:10 | 102万4000 | ||
1360×768 | 約16:9.035 | 104万4480 | ||
1366×768 | 約16:8.996 | 104万9088 | ||
WXGA+ | 1440×900 | 16:10 | 129万6000 | |
WSXGA | 1280×854 | 16:10.675 | 109万3120 | |
WSXGA+ | 1680×1050 | 16:10 | 176万4000 | |
1080i/p | 1920×1080 | 16:9 | 207万3600 | |
WUXGA | 1920×1200 | 16:10 | 230万4000 | |
QWXGA | 2048×1152 | 16:9 | 235万9296 | |
WQXGA | 2560×1600 | 16:10 | 409万6000 | |
主な画面解像度とアスペクト比の関係(スクエア画面) | ||||
---|---|---|---|---|
略称 | 横×縦のドット数 | アスペクト比 | 横×縦の総ドット数 | |
VGA | 640×480 | 4:3 | 30万7200 | |
SVGA | 800×600 | 4:3 | 48万0000 | |
XGA | 1024×768 | 4:3 | 78万6432 | |
XGA+ | 1152×864 | 4:3 | 99万5328 | |
SXGA | 1280×1024 | 5:4 | 131万0720 | |
SXGA+ | 1400×1050 | 4:3 | 147万0000 | |
UXGA | 1600×1200 | 4:3 | 192万0000 | |
QXGA | 2048×1536 | 4:3 | 314万5728 | |
スクエア型の液晶ディスプレイが主流だったころは、アスペクト比が「4:3」もしくは「5:4」だった。最もなじみ深いのは、アスペクト比が4:3のXGA(1024×768ドット)やUXGA(1600×1200ドット)、アスペクト比が5:4のSXGA(1280×1024ドット)だろう。現在でも多くのソフトウェアやインターネットコンテンツは、XGAを標準的な表示環境と想定して作られている。
一方で、ワイド型の液晶ディスプレイはアスペクト比が「16:10」のものが多い。WXGA+(1440×900ドット)、WSXGA+(1680×1050ドット)、WUXGA(1920×1200ドット)といったよく耳にする解像度はいずれも16:10だ。
最近の流れでは、アスペクト比が「16:9」で画面解像度が「1920×1080ドット」の液晶パネルを採用した製品が増えている点にも注目したい。
これはテレビやAV機器で標準的な解像度で、XGAやWXGAといった略称ではなく、HDTVの規格に倣って「1080i」や「1080p」と表記される(末尾の「i」はインターレース、「p」はプログレッシブの意味)。また、「フルハイビジョン(解像度)」や「フルHD(解像度)」といった俗称も定着している。
1080i/pのほかにも、解像度が1280×720ドット/プログレッシブの「720p」もハイビジョンとして定義されているが、この解像度の液晶ディスプレイはまずない。テレビや液晶ディスプレイでは、1366×768ドットの製品が720p対応といわれることが多い。
さて、液晶ディスプレイの解像度とアスペクト比をまとめたところで、使い勝手の面から考察してみよう。解像度については、高いほど快適なのは自明だ。解像度が高ければより多くの情報を表示できるし、複数のウィンドウを重ねずに並べられる。
高解像度の環境は、Webブラウザと別のアプリケーションを同時に開いて作業したり、複数のフォルダウィンドウを並べてドラッグ&ドロップでファイルのコピーや移動を行うといったさまざまなシーンで、使いやすさを確認できるはずだ。
スクエア画面とワイド画面を比較すると、一般的にワイドのほうが快適といわれることが多い(ユーザーの好みにもよるが)。特にWindows Vistaでサイドバーを常に表示する場合や、多数のツールパレットを持つグラフィックス系のアプリケーションを使う場合、ハイビジョンコンテンツを扱う場合などでは効果大だ。Windows Vistaのほかにも、最近ではワイド画面で扱うことを想定したソフトウェアが増えつつある。
スクエア画面からワイド画面に乗り換える場合、横の解像度が高まるのはもちろんだが、縦の解像度が低くなるのは避けたいところだ。SXGA(1280×1024ドット)のスクエア画面からの乗り換えならばWSXGA+(1680×1050ドット)のワイド画面、UXGA(1600×1200ドット)のスクエア画面の乗り換えならばWUXGA(1920×1200ドット)のワイド画面を選ぶと、縦解像度を維持しつつ横の解像度がぐんと高まるため、作業領域が広くなったのを実感できる。その際、先に紹介した画面サイズ(つまりはドットピッチ)との兼ね合いで決めれば失敗せずに済むだろう。
ワイド液晶ディスプレイのアスペクト比は、16:10と16:9の違いを理解しておきたい。PC環境でHD映像を視聴する場合や、AV入力を持ったワイド液晶ディスプレイにAV機器やゲーム機をつないでHD映像を表示する場合には、アスペクト比が16:9で解像度が1920×1080ドットの製品と相性がいい。いわゆる「フルHD映像」の解像度は1920×1080ドットなので(地上デジタル放送は1440×1080ドット)、液晶パネルの解像度が1920×1080ドットならば、ドット補間/間引き/黒帯なしのドットバイドットで表示できるからだ。
とはいえ、PC環境を中心に考えるならば、アスペクト比が16:10で解像度がWUXGA(1920×1200ドット)の液晶ディスプレイのほうが、総合的に見て使いやすい。PC環境では、縦長文書の編集やWebブラウザなど、画面の縦ドット数が多いほうが便利な場面が多いからだ。特にUXGA(1600×1200ドット)のスクエア画面から1920×1080ドットの16:9画面に乗り換えると、縦の解像度が下がってしまう点は注意してほしい。
1920×1200ドットの16:10画面に1920×1080ドットの16:9/フルHD映像を表示するときも、ドットバイドット表示のスケーリング機能(詳細は後述)を持った液晶ディスプレイならば、映像コンテンツのドットを補間/間引きせずに表示できる。その場合、上下に黒帯を入れての表示になるが、映像自体に問題はなく、汎用性は1920×1200ドットの16:10画面のほうが高い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年3月31日