遅い、重い、高い、面倒、そもそも使う機会がない……「PCを外に持ち出す」を、特別なことと思っていないだろうか。でも、WiMAX内蔵PCを使うと考え方がぱっと変わるに違いない。なぜ変わるのか、なぜ2010年が「モバイルPC元年」なのか。今までのモバイルPC環境を振り返ってみよう。
持ち運べる小型のノートPCが数々と登場し、“モバイル”と呼ばれるPCの利用スタイルが一般化した──と思われている。しかし、2009年までは「まだ」だった。スマートフォンなど、ライトなモバイルの形態も普及しつつあるが、ノートPCにおけるモバイル利用環境は、妥協と我慢の連続だった。
PCを使って“モバイル”という言葉に憧れを持つことはもちろん、過去に実践した人、そして現在も行っている人はかなり多くいるだろう。持ち運べるノートPCが登場してはや20年、モバイルインターネット接続に定額制サービスがはじまって10年に達しようとする中で、モバイルを取り巻く環境は着実に進化を遂げてきた。
一方で、“モバイル”を特別視することで満足していないだろうか。モバイルだからこれで充分、これはできなくても仕方ない、手間が多いのは当たり前──など。つまり、本当に望む姿は違うのに、自然に妥協や我慢をしてしまう。固定インターネット回線はどんどん高速化して、リッチコンテンツ化や双方向化も進んでいるのに、それをモバイルだから仕方ないと遠ざけている人も少なくないだろう。
では、改めてこれまでのモバイル環境はどうだったか。その歴史を振り返ってみよう。
重量が1キロ台、B5サイズ程度の“毎日持ち歩ける”小型ノートPCの歴史は古く、1990年代前半に登場した。性能以外にバッテリー動作時間も左右するCPUは、デスクトップPC向けのCPUに比べると常に一歩遅れながら進化してきた。バッテリー動作では低消費電力が求められるため、内部構造がよりシンプルな旧世代のCPUを利用することも多かったためだ。例えば、デスクトップPCはすでにインテル® Pentium® プロセッサー世代に移っていた1994年当時、ノートPCはまだi486が主に使われていた。この状況は、デスクトップPC向けのCPUがインテル® Pentium® 4 プロセッサーに進化するまで続いた。
その状況に変化が生じ始めたのは2003年からだ。インテルは初めてモバイルノートPC向けに設計されたインテル® Pentium® M プロセッサーを登場させ、2006年初頭にはデュアルコアのインテル® Core™ Duoプロセッサーも投入した。これらにより、デスクトップPC向けCPUより低クロック動作ながらも高い性能を発揮し、モバイルノートPCの高性能化と長いバッテリー駆動を両立した。デュアルコアのCore™ Duoは一気にモバイルノートの性能を引き上げただけでなく、場合により片方のコアを完全に休止させるなどの工夫で省電力化、つまりバッテリー動作時間の延長も両立させた。一方でノートPCは消費電力以外に熱処理の課題もあり、最大性能ではデスクトップPCから一歩引いた位置付けのままだった点は旧来のままだった。
モバイルはもちろん、今やPCを利用する上で欠かせない“インターネットの普及”のきっかけを創造したのは間違いなくWindows® 95だ。1995年に登場したWindows 95は、LANやモデムによるインターネット接続を標準でサポートし、後期はブラウザ(Internet Explorer)も標準搭載された。Windows 95以前のPCは、インターネットに接続するだけでも特別なソフトウェアやハードウェアが必要で、9600bps程度と今では考えられない速度で通信していたのだ。
続くWindows 98では、OSが電力制御を細やかに行うACPI(Advanced Configuration and Power Interface:サスペンドやレジュームのサポートなど、省電力のための詳細な電源管理をOSがコントロールできる規格)が導入され、ノートPCはより長時間、バッテリーで動作できるようになった。
2001年に登場したWindows XPは、それらの集大成といえる完成度の高いOSだ。モバイルでは必須項目となる素早い起動を可能にするサスペンド/休止(ハイバネーション)機能も大幅に高速、安定化し、省電力機能もさらに強化。セキュリティ機能も大幅に向上させることで、だれでも安心してインターネットを利用できるようになった。
一方、2010年現在も利用者が多いWindows XPも、登場から約9年が経過したことで時代に追いつけなくなった面がある。Windows XP登場時はまだ数百kbps程度のナローバンド接続が主流だった状況は、すでに数Mbps以上に高速化され、メール送受信やWebの情報収集(いわゆるホームページ閲覧)が中心だったインターネットの利用シーンが、その高速な通信環境を活用した“ユーザー1人ひとり、それぞれ”の多種多様な利用シーンへと生まれ変わりつつある。
さて、“ワイヤレスインターネット”が現実味を帯びてきたのは、PHSによるデータ定額サービスと公衆無線LANサービスが始まった2001年頃だ。
OS | ノートPC向けCPU | 定額モバイルデータ通信 | |
---|---|---|---|
1995年 | Windows 95(11月) | ||
1998年 | Windows 98(7月) | ||
2000年 | Windows 2000(2月)、Windows Me(9月) | ||
2001年 | Windows XP(11月) | 32kbps PHS | |
2002年 | 128kbps PHS | ||
2003年 | Pentium M(3月) | ||
2006年 | Core(1月)、Core 2(7月) | ||
2007年 | Windows Vista(1月) | 3.6Mbps 3G | |
2008年 | 第2世代Core 2(1月) | ||
2009年 | Windows 7(10月) | 40Mbps モバイルWiMAX(7月) | |
2010年 | 2010インテル Core プロセッサー・ファミリー(1月) | ||
PHSのデータ定額は当初32kbpsとかなり低速だったが、2002年には128kbpsのサービスまで高速化された。しかし、時を同じく2001年には家庭用ADSLサービスが急速に普及し、家庭内のインターネット環境が“数Mbps以上に高速化”されるとともに、Webサービスのリッチコンテンツ化も推進された。それとともにPHSによるモバイルインターネット接続は、速度面でかなりの我慢を強いられることになった。
公衆無線LANサービスは(当時は高速な)ADSLをバックボーンにしていたため、最大11MbpsとPHSでのインターネット接続と比べると快適であった。反面、サービスエリアは“ある店舗内のみ”と、利用場所はかなり限られた。2010年現在はサービスエリアも増え、通信速度も最大54Mbpsまで高速化されるなどの進化を遂げているが、それでもサービスエリアの制限が多いことに変わりはない。
ワイヤレスインターネットのターニングポイントは2007年だ。データ定額制を導入する3Gデータ通信サービスが始まり、広いエリアかつ料金の不安を低減する定額プランで、最大数Mbpsと高速な環境で利用できるようになった。
なお、2010年現在は携帯電話事業者の4社がデータ定額制を導入している。ただ、一般的な携帯電話と同様に、2年間の長期契約が常態化し、料金体系もかなり複雑になっている。長期契約なしでは月額料金と端末購入代金が割高になるため、多くの人は2年間の長期契約を結ぶことになる。あわせて、最近は分かりにくく、複雑な料金プランの乱立、ユーザー数増加による実速度の低下、だんだん厳しくなっている通信量規制などの「制限」が増えている傾向がある。2年間の契約なので、中途解約するとは解約違約金が発生。だからといって長期契約でないと月額コストが高額になる……など、ユーザー目線で見るとあまりうれしくない状況も垣間見える。
……このように、モバイルPCやワイヤレスインターネットの歴史は、見ようによっては妥協や我慢の歴史でもあったわけだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年9月30日