これからは“片付けずにスキャン”を普及したい!――キヤノン「imageFORMULA DR-C125」開発秘話開発者インタビュー(1/3 ページ)

キヤノンから、省スペースでスタイリッシュなドキュメントスキャナ「imageFORMULA DR-C125」が登場した。ボディデザイン、原稿の搬送機構、ソフトウェアと新しいこと尽しの新モデルだ。この独特なスキャナがどのように生まれたのか、キヤノン電子の開発者に話を聞いた。

» 2011年06月16日 10時00分 公開
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常識破りのドキュメントスキャナが誕生したワケ

キヤノンのA4ドキュメントスキャナ「imageFORMULA DR-C125」。コンパクトボディながら、モノクロもカラーも片面25枚/分、両面50面/分のスキャン(A4縦/200dpi)に対応する

 ビジネス、ホームを問わず、手軽に文書の電子化が行える卓上タイプのドキュメントスキャナが、ちょっとしたヒット商品になっていることはご存じだろうか? 電子文書はPCに加えて、スマートフォンやタブレット端末との相性がよいため、ドキュメントスキャナは今後ますますホットなデジタル製品として注目を集めていくことが予想される。

 キヤノンが7月上旬に発売する「imageFORMULA DR-C125」は、そんな卓上タイプのドキュメントスキャナに新風を吹き込むニューモデルだ。一目見て分かる通り、縦長のボディデザインは従来のスキャナのイメージとはかけ離れている。

 変わっているのはデザインだけではない。「ラウンド・スキャン」と名付けたU字パスの用紙搬送により、前方に伸びる排紙トレイを大胆に省いたことで、画期的な省スペース化を果たしているのだ。さらに、紙を2枚重ねて送ってしまう重送ミス対策として、リタードローラーが2枚目の原稿をやさしく抑え、原稿を傷めずに分離する「ダブらんスキャン」に、重なった原稿をしっかり検知する「超音波重送検知」も盛り込むなど、外観から内部構造、使い勝手に至るまでじっくり作り込んでいる。その実力は先に掲載したレビュー記事で検証した通りだ。

 このように、DR-C125は今までの常識を覆すような設計のドキュメントスキャナなだけに、開発者の苦労も並々ならぬものがあったに違いない。DR-C125は開発設計から組み立てまでを日本国内の工場で行っている「Made in Japan」の製品だが、今回は製品開発を行ったキヤノン電子を訪問し、設計担当の指田実氏(IMS事業部 IMS開発センター 所長)ならびに商品企画担当の金井亜紀氏(IMS事業部 IMS事業企画部 IMS商品企画課)に話を聞いた。

ドキュメントスキャナも個人ユースを積極的に意識した開発体制へ

―― まずはキヤノン電子のドキュメントスキャナ市場に対する取り組みからお聞きします。かつてシートフィード方式のドキュメントスキャナといえば、多くはビジネスユースがターゲットでしたが、最近はパーソナルユースでもニーズがかなり高まっています。こうした市場の変更に伴う、開発体制や製品コンセプトの変化はありましたか?

製品の設計を取りまとめた指田実氏

指田 ジャンルとしては同じドキュメントスキャナでも、ビジネス層とパーソナル層では求められるものが結構違います。パーソナルユースについては、性能や機能だけでなく、大きさやデザインなどもかなり意識しないと、ユーザーの方に受け入れていただけないのではないか、という思いは強いです。

 そこで、単にビジネス向けモデルをパーソナル向けに転用するのではなく、最初からパーソナル層まで意識した小型の製品に重点的に取り組んでいこう、というのがここ2〜3年の流れになっていますね。

金井 前提として、imageFORMULAシリーズでは業務系に注力し続けてきましたし、今後ももちろんそこは外せません。ただ、昨今はパーソナルユースも最初から想定し、そこに向けた製品開発を積極的に行うようになっています。

 パーソナルユースを考えた場合、今までドキュメントスキャナを使われたことのないお客様が多いので、なるべく分かりやすい形に仕上げることを意識していますね。具体的には理解しやすいユーザーインタフェースや、利便性の高いスキャンボタンなどが挙げられます。

―― 小型のドキュメントスキャナと聞くと、真っ先にコンパクトボディが特徴の「imageFORMULA DR-150」(2009年10月発売)が思い浮かびますが、この製品の開発からパーソナル層を意識した体制になったのでしょうか?

企画担当の金井亜紀氏

金井 DR-150の開発前から徐々にパーソナルユースへの意識の高まりはありましたし、そこへ向けた準備はしていました。ただ、おかげさまでDR-150がご好評をいただいたことで、一気にパーソナルユースへの注力が強まりましたね。

指田 とはいえ、現状では明確にビジネスとパーソナルを分けて、製品ラインアップを展開しているわけではありません。価格帯によってクロスオーバーしている部分も多いですし、オンとオフの両方でお使いいただいているユーザーの方もいらっしゃいます。その中でもパーソナル層の引きが強いのは、DR-150ですね。そして、今回のDR-C125もまさにそこを狙っています。

使うときの設置面積をとことん削った新デザインと搬送機構

―― 今回のDR-C125はいかにもパーソナル層を意識した仕上がりだと思います。その開発はいつごろから、どのようなコンセプトで行われたのでしょうか?

指田 開発を始めたのは2010年の中ごろです。コンセプトとしては“実際に使うときの操作面積が一番小さくなる形状”というところからスタートしました。

 これまでの卓上型ドキュメントスキャナは、読み取った紙が設置面から飛び出してきますので、これをキャッチする排紙トレイを前方に引き出す必要があり、あらかじめ設置場所の手前のスペースをきちんと片付けておく必要があります。なので、ちょっと1枚だけスキャンしたいような場合でも、割と手間がかかってしまい、個人的にもストレスを感じていました。このストレスは機器の利用頻度を下げてしまうことにもつながります。

給紙された原稿をUターンさせてシルバーのフロントトレイ内に収める新発想の搬送機構「ラウンド・スキャン」。これならば、前面に排紙トレイが伸びることはなく、奥行きも短くできる

 それでは、この面倒をなくすためにはどうすればよいのかと悩みながら、従来機をいろいろと触っていたところ、上から下に給紙した原稿を内部でUターンさせて、上方向に排紙するというラウンド・スキャンの発想が浮かんできました。こうすれば、使用前にスキャナの周囲を片付ける必要はありません。

―― 設置面積と同時に作業空間を縮小させる発想には感心しました。設置面積もかなり絞り込まれていますが、開発時の数値目標を教えてください。

指田 以前にトレイを閉じた状態の奥行きが100ミリと短いモデル「DR-2050C」を発売したのですが、非使用時に少しのすき間に収納できることが好評でした。

 そこで、DR-C125は使用時の設置面積もグッと抑えるということで、切り立った給紙トレイのフォルムを基準に給紙のしやすさなどを考慮して、最初は奥行き175ミリくらいを目指そう、ということになりました。その後にトレイの傾斜などを色々と試していき、最終的には150ミリが目標になりました。

―― 実際の製品は奥行きが156ミリ(非使用時)なので、その目標値をほぼクリアしましたね。一見すると、かなりトレイが切り立っていますが、実際に使ってみると不便なことはなく、A4普通紙の原稿がきちんとストックされます。省スペースと使い勝手のバランスがよい、絶妙な角度ではないでしょうか。

指田 ありがとうございます。その角度にはこだわりました。

スタイリッシュなボディデザインと小型軽量で注目を集めた「DR-150」(写真=左)。100ミリという奥行きの短さが特徴だった旧機種「DR-2050C」(写真=右)。今回のDR-C125では、使用時でも奥行きが短いという新たな価値を提案する

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