マンガ・アニメ好きが高じて、自分でもイラストを描いている人、もしくはこれからチャレンジしたい人は多いだろう。イラストを描くためのPC環境では絵を表示するディスプレイ選びが重要だが、いきなりハイグレードモデルを導入するのは気が引けるかもしれない。それでは、EIZOの“ちょい上”ディスプレイ「FORIS FS2332」はどうだろうか? 今回はラノベやゲームで活躍するイラストレーターのrefeia氏に実機をチェックしてもらった。
日本は世界に誇るマンガ・アニメ大国だ。2011年末の冬コミ(コミックマーケット81)は3日間で約50万人を動員し、ネット上ではイラストSNS「pixiv」などのコミュニティを通じて、何百万ものユーザーがさまざまなイラストを閲覧・投稿している。ネットの普及によって、自主制作のマンガやアニメ、同人誌を公開することも容易になり、その反響からプロデビューを果たす例も増えてきた。日本のマンガやアニメは世界にも大きな影響を与え続けるポップカルチャーとして、幅広い層に支持されている。
ネット上で作品を公開する場合、絵を描くための道具はペンと紙より、PCが一般的だろう。とはいえ、ハイスペックなPC本体をはじめ、ペンタブレット、液晶ディスプレイ、アプリケーション、グラフィックスカード、ストレージなど、絵を描く環境をきちんと整えるにはお金がかかる。こうした覚悟と予算があるプロはともかく、趣味としての道具ならば、コストパフォーマンス重視というのも賢い選択に違いない(安かろう、悪かろうは問題外だが)。
そこで、EIZOのエンターテインメント液晶ディスプレイ「FORIS FS2332」である。絵をキレイに表示するためには液晶ディスプレイ選びが重要だが、FORIS FS2332は広視野角のIPSパネルを採用し、フルHD(1920×1080ドット)に対応した23型ワイドの高解像度・大画面、グラデーションを滑らかに表示する10ビットガンマ補正、独自カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」のサポートといった“絵描き向け”の高い基本性能を持つ。それでいて、EIZOダイレクトでの直販価格は本体のみで3万9800円、EIZO EasyPIXとセットでも4万8800円と手ごろだ。
今回はその実力がどれほどのものかチェックすべく、イラストレーターのrefeia(レフェイア)氏に試してもらい、率直な感想を聞いた。同氏はライトノベルの挿絵やゲームの原画で活躍している。月刊誌「ゲームラボ」でのCG講座連載を集めた単行本「萌え絵の教科書」(三才ブックス)がヒットしたので、見覚えがある方もいるだろう。CGイラスト制作の確かな技術を持った、いわば“萌え絵の達人”だ。
refeia氏はプロのイラストレーターだけあって、制作環境がかなり充実している。
自作したタワー型のメインPCは、CPUが定番のCore i7-2600K、メモリが大容量の16Gバイト、グラフィックスカードがプロ仕様のNVIDIA Quadro 600、メインストレージがIntel SSD 510、サブストレージが1TバイトHDD×2台、制作ソフトがAdobe Creative Suite 4とハイスペックだ。
このPCに接続したワコムの21.3型液晶ペンタブレット「Cintiq 21UX」(旧モデル)で作画し、その色や全体の仕上がりを2560×1440ドット表示の27型ワイド液晶ディスプレイでチェックしながら作業する。また、自前でサーバ(ファイルサーバ/IRC中継サーバ)を用意したり、外出時はiPad 2やiPhone 4Sでイラストを編集者に見せたり、「i1」シリーズによるカラーキャリブレーションを定期的に行ったりと、うらやましくなってしまうほどの環境だ。
refeia氏は「イラストにここまでハイスペックなPC環境は必要ないのですが、PCの自作が好きだったこともあり、パーツ選びには趣味が入っていますね。仕事用として考えた場合、サイズの大きな画像データを日常的に扱うことから、メモリは大容量を積んで、ストレージは高速なSSDをメインとして、サブにHDDを増設してこまめにバックアップしています」と、PCの構成を説明する。
細かいところでは、静粛な環境で集中して絵が描けるよう、PCケース内部にフェルトを貼り付けて騒音を抑えたり、液晶ペンタブレットを肩や手に負担がかかりにくい角度に微調整するため、簡易的なスタンドを自作して取り付けたり、といったプロらしい工夫も見られる。
当然、refeia氏は液晶ディスプレイ選びにも一家言ある。
まずはイラストを描くうえで、「視野角が広くて色変移が少ないIPSパネルにはこだわりたい」とのこと。価格競争力があり広く普及しているTNパネルも、近年はかなり視野角が改善されてきているが、それでも表示を正面から見て上部と下部の色が違ったり、正しい色を見るために画面と目を正対させる必要があり、作業効率がかなり下がってしまう。構造上、視野角が広いIPSパネルであれば、そうしたストレスは皆無だ。
ただし、VAパネルはIPSパネルに近い視野角特性を備えたものもあり、作業効率を阻害しないため、そのほかの要素によっては候補に入ってくるという(実際、refeia氏はVAパネル搭載のEIZOディスプレイ「FlexScan S170」を以前使っていた)。
次に、refeia氏は正しい色を安定して表示できることの重要性を挙げる。普段のrefeia氏は、sRGB色域の環境でイラストを描いており、その正確さには気を付けているとのこと。現状でsRGBはWindowsやネットコンテンツにおいて最もポピュラーな色域なので汎用性が高く、あらゆるシーンで無難という判断だ。
印刷業界などではAdobe RGB色域でのカラーマネジメント環境も多いが、refeia氏が印刷用に納品するデータはsRGB環境で制作してからJapan Color 2001(印刷用の色域の規格)の設定でCMYK変換したものという。また、ネットと印刷の両方に公開するデータの場合、sRGBとCMYKの両方で納品することも多い。
作業環境の色域についてrefeia氏は「sRGBに比べてAdobe RGBは緑方向の色域が大きく広がるのですが、自分が描くイラストではそこまで高彩度の緑である必要はありません。Adobe RGBのデータは見る人(表示する機器の環境)によって、色が大きく転ぶこともあり、こちらが意図した色を自然に見せたいと考えると、現状ではsRGBがベターと考えています。最終的な色の補正は印刷所まかせな部分もありますが、カラーイラストを納品して、刷り上がった色が大きく違ったようなトラブルはないです。sRGBでデータをやり取りすると、Adobe RGBのデータのようにいちいち説明したりする必要がない手軽さもありますね」と語る。
そのほか、画面サイズや解像度のバランスといった基本的な部分に加えて、液晶ディスプレイの表面処理も実際に見て確認したいポイントという。「個人的に光沢があるグレア仕様より、周囲が映り込まないアンチグレア処理を行ったものが好みです。ただし、アンチグレア処理のパネルは、表面処理が粗くて画素と干渉し、それによって発生するムラが左右の目で違って見えるため、表示内容によって表面が粒状にぎらついて見えるものも少なくありません。こうしたパネルは、近くで見ると目が疲れやすいと感じます。なので、中途半端なアンチグレアだったら、グレアのほうがいいですね。液晶ディスプレイの場合、スペック表では分からない表面の見え方がどうなっているのかは気になります」とrefeia氏。
さて、このように機材をバッチリそろえた“プロ環境”でイラストを描いているrefeia氏のシビアな目に、FORIS FS2332はどう映ったのだろうか?
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年3月31日