新世代EIZOディスプレイ「FORIS FS2333」が“超見える”理由暗部が浮かび上がる新技術“Smart Insight”の開発者に聞く(2/4 ページ)

» 2012年06月18日 10時00分 公開
[ITmedia]
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逆光の写真や暗い映画にもSmart Insightが有効

―― ゲーム以外では写真や映像鑑賞にも効果があるとのことですが、そのほかにも便利に使えそうな技術ですね。

安倍氏 はい。まずは写真や映像のコンテンツについてですが、これは色を正確に表示して編集したいといった用途ではなく、観賞用途においてSmart Insightが効果を発揮します。

 例えば、屋外で写真や動画を撮影すると、逆光でせっかく撮った人の顔が暗く沈んでしまう場合があります。これをフォトレタッチソフトや動画編集ソフトで美しく補正するのはかなり手間がかかることも多いですが、Smart Insightを使うことで手軽に暗部を明るく見やすくできます。強度を設定するだけなので、難しい操作もいりません。

 また、暗いシーンが続くような映画やドラマを見ると、画面が暗すぎて何をしているのか分からないようなこともありますが、Smart Insightならば、映像を破たんさせずに、暗部をはっきりさせて、視認性を向上させることが可能です。

―― 実際に写真を表示してみると、ハイダイナミックレンジ(HDR)の合成画像に似た雰囲気になりますね。

安倍氏 現実世界の広いダイナミックレンジをディスプレイやカメラの狭いダイナミックレンジに落とし込むという点で確かに似ていますね。実際に見え方もかなり近いものだと思います。

 ただ、デジタルカメラでよくみられるHDR画像は、露出が異なる何枚かの写真を撮影し、これを1枚に合成して作っていますが、Smart Insightは最初から1枚の画像で隣接するピクセルを分析することで、同じように暗部が明るく広いダイナミックレンジに見える画像をリアルタイムに作り出しています。

 Smart Insightは出力先がファイルや写真プリントではないため、出力するデバイスによって補正結果がぶれたりしません。最終出力は常にFORIS FS2333の液晶ディスプレイ上なので、我々が意図した最適な補正結果がいつも得られることになります。

User 1モードで逆光の写真を表示し、Smart Insightの強度を試した。左がオフ、右が強度1

左が強度2、右が強度3の設定。逆光で暗く沈んでいた顔が徐々に明るくなっている

左が強度4、右が強度5の設定。顔の表情が完全に分かるまで明るくなった。当然ながら、完全に黒つぶれして元画像に暗部階調がないデータは、Smart Insightでも暗部が浮き上がってこない。設定ミスで露出アンダーの写真を多数撮ってしまった場合などは、ひとまずSmart Insightで黒つぶれしていないか確認し、暗部階調がしっかり残っている写真はフォトレタッチして印刷するというワークフローもアリだろう

北氏 なお、ユーザーが強度を設定できるわけではありませんが、EcoモードにもSmart Insightは適用されています。Ecoモードはバックライト輝度を下げることで消費電力を低減する設定ですが、画面が暗くなることで暗部の階調が見えにくくなるので、コントラスト拡張技術とSmart Insightを組み合わせて、これを改善しました。バックライト輝度をかなり下げつつ、視認性を確保した表示になっています。

 さらに、当初からFORISだけではなく、ほかのビジネスユニットとも連動することを想定してSmart Insightを開発しており、今後はFORIS以外にも展開する予定です。

―― 先ほどの話にもありましたが、Smart Insightは元画像の暗部を持ち上げて明るさを細かく制御するので、カラーマネジメントとは対極にあると思います。例えば、フォトレタッチをする場合はSmart Insightが悪影響を与えたりしないでしょうか?

安倍氏 確かに画像を編集してデータを共有したりプリントアウトしたりするような用途では、Smart Insightをオフにしなければ元画像の階調を正確に表示できません。写真好きの方ならば、フォトレタッチを行う場合にカラーモードをsRGBに設定すると思いますが、sRGBモードではSmart Insightが働かないようになっているので、誤ってSmart Insightをかけながらレベル補正していたといった間違いは防げるでしょう。

 また、FORIS FS2333にはオプションとしてカラーマッチングツールの「EIZO EasyPIX」が用意されていますが、EIZO EasyPIXを接続すると、Smart Insightは自動的にオフになるため、色合わせやキャリブレーションのじゃまはしません。

 なお、紙の質感に画面表示を近づけるのが目的のPaperモードでもSmart Insightはオフになります。CinemaモードではSmart Insightの強度を選べますが、制作者が意図して作り込んだ映像作品や映画を楽しむ場合はオフで問題ないです。表示する映像によって、使い分けていただければと思います。

FORIS FS2333のカラーモードとSmart Insightの対応表
カラーモード User 1/User 2 sRGB Paper Game Cinema Eco
Smart Insightの対応 調整可 調整可 調整可 固定

FORIS FS2333のsRGBモードで表示したカラー/モノクログラデーション。sRGBモードではSmart Insightがオフになり、リニアな階調表現でフォトレタッチなどを行いたい場合にも対応できる。10ビットLUT(LUT:ルックアップテーブル)による8ビット出力なので、階調の表現力も通常のディスプレイより高い。出荷前に同社工場にて1台ずつ測定・調整することで、優れたガンマ特性を確保しているのもポイントだ

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