報道関係者向けの説明会の後、ITmedia PC USERでは蔡明宏社長を始めとするSynologyスタッフにインタビューする機会を得た。
―― 成長の鍵はやはりB2B市場でしょうか。
Synology 現状、やはり法人向け製品の成長率が著しく、前年比で50%近く伸ばしています。新製品も、ビジネス向けラックマウント、ファイバーチャネル製品など、ビジネス向けでニーズのあるところを開発しています。
一方、個人・家庭向けにもSynology Photosのようにより親しみやすいソフトウェアを提供していくことでNASを積極的に活用してもらえるよう、努めていきます。
―― 今、B2B市場でもっともニーズが高いのは、どのような分野でしょうか。
Synology 法人向けで言えば、国内では多拠点間同期のニーズが高まっています。こうしたニーズにはSynology C2やHybrid Share、Synology Drive 3.0といった新ソリューション、新機能を提供していきます。
今までのソリューションでは、プライベートクラウドをアピールしてきました。しかし、今後当社が目指していくのはマルチクラウド、ないしはハイブリッドクラウドというものになります。
NASはさまざまなところからデータを持ってきて保存することができます。オンプレミスのプライベートクラウドはこうした概念です。一方、プライベートクラウドとパブリッククラウドのデータを保存していきたいというニーズが高まって、データ容量が肥大化していく中で、Synology C2を使って今やろうとしているのはプライベートクラウドとパブリッククラウドの両方の良いところを活用していくことです。
Synology Synology C2は、Synologyのパブリッククラウドです。NASベンダーのクラウドサービスというのは珍しいのではないでしょうか。
これまでの「OneDrive」や「Google Drive」といった各社のパブリッククラウドサービスは、プライベートクラウドとの連携においてAPIの制約などから親和性が完全ではありませんでした。そこで、自社のクラウドであるSynology C2をリリースしたのです。Synology NASとの完全な親和性によって、バックアップはもちろんディザスタ(災害時の)リカバリーをどうするのかといった点も解決できます。
それ以外にも、現状では拠点間で分散してしまったファイルをどう管理するのかという課題が高まっています。Synology C2では、Hybrid Shareによって分散したデータを集中管理でき、その上でSynology C2ではバージョン管理もできますので、これまで以上に管理を容易に行えます。
―― Hybrid Shareはどのようなものなのでしょうか。
Synology Hybrid Shareは、共有の新しい概念として捉えてください。クラウド上にあるデータでもローカルのようにアクセスすることを可能にします。
データを共有する際、例えばGBあるいはTB単位の大容量のデータですと、社内NASの帯域が圧迫されてしまう恐れもあります。こうした場合では、社内のNASよりもSynology C2上で共有した方が帯域を有効に使えます。こうした連携を実現するために背後でHybrid Shareが動いているというイメージです。
また、クラウドがネットワーク帯域に依存してしまう問題も解決できます。帯域という点ではSynology C2でも同様ですが、先に紹介したローカルキャッシュを提供することで、Synology C2と連携することによる速度のギャップを抑えられる他、管理もパブリッククラウドより簡単かつ一括で行えます。
データの同期は今やファイルだけにとどまらず、アカウントのバックアップ、ディザスタリカバリーなど、ニーズが複雑化しています。そうした要望に対し、アカウントの管理もバックアップもリカバリーも、分散するサーバの情報をSynology C2上に統合管理するといったロードマップを思い描いています。
―― DSM 7.0のβ版は2019年内リリース予定とされていますが、正式版はいつ頃の提供予定でしょうか。
Synology DSM 7.0の正式版は2020年第1四半期(1〜3月)の提供を目指したいと思います。
発表会でもユーザーエクスペリエンスの部分で説明しましたが、そこで紹介したQuick Connectをセキュリティ観点から補足させてください。
これまでのQuick Connectにおいて課題だったのが、「Google Chrome」では仕様上「セキュリティ保護されていない通信です」という警告が表示されてしまうことがあることです。DSM 7.0では、Quick Connect IDを取得する際に、自動的にオープンソースのSSL証明書であるLet's Encrypt認証を得ることができるので、先のようなセキュリティ警告を見ることなく、保護された通信を行うことができるようになりました。
ここが新しいポイントです。
Synology また、セキュリティの話が出ましたので、当社のセキュリティ活動を1つ紹介しましょう。
2019年8月8日、NASベンダー宛にロシア国内から多数のブルートフォースアタックがありました。他社も含めてNASに対しての総当り攻撃をユーザーのNASにも行なわれたようで、暗号化されてしまう事案も発生しました。
当社の対策チームでは、初動から2日間で原因を特定し、問題となった国外のサーバ管轄機関などに依頼しサービスを止めてもらうことで、被害の拡大を食い止めることができました。
―― ITmedia PC USERの読者に向けて、メッセージをいただけますか。
Synology Synology Japanは、Synologyの日本支社としてこの1年半で市場分析、そしてユーザーのニーズに耳を傾けることに徹底してきました。これからが成長の大きなカギだと思っております。引き続きこの方針を維持し、より注力していこうと思います。
現在注力している法人向けモデルでは、安定性を保ちつつ高いパフォーマンスを発揮できるよう、設計により多くのリソースを費やしています。(DSM 7.0などの)ソフトウェアなどは、いくつかのものについて一から再設計することで、安定性とパフォーマンスを改善しました。
Synologyはストレージベンダーです。冒頭のあいさつでも述べましたが、ストレージというものが単にデータを保存しておくものから変化しつつあります。
毎年、ハードウェアやソフトウェアは刷新され進化していますが、近年、ソフトウェアがより重要度を増しています。SynologyのNASは、これらソフトウェアによってファイルサーバにプラスアルファの機能を実現します。
「ネットワークアプリケーションサーバ」のベンダーとしてのSynologyに今後もご期待ください。
今回、発表会の最後にいくつかの新製品も紹介されている。その中から、展示されていたモデルを中心に見ていこう。
「HD6400」は、Synology初の4Uラックマウント型ストレージサーバ。60ベイで最大960TBという大容量ストレージを実現する。CPUは「Xeon Silver 4110」(2.1〜3.0GHz、8コア16スレッド)で、メインメモリは最大で128GB搭載できる。ネットワークは10GbE×2および10/25GbEインターフェースカードを追加搭載できる。
「FS3600」は、2Uラックマウント型でオールフラッシュの24ベイストレージサーバ。シリーズには最上位に「FS6400」、下位に「FS3400」を取りそろえている。
いずれもCPUはXeonで、FS3600は「Xeon D-1527」(2.2G〜2.7GHz、4コア8スレッド12コア)、FS6400はXeon Silver 4110を2基搭載している。
「SA3600」は、エンタープライズ向けのSASモデル。SASを用いた高い拡張性を特徴とし、「RX2417sas」を7台接続することで、最大180基までHDDを拡張できる。CPUはXeon D-1527だ。
「DS1620XS」は企業向けの6ベイNAS。6ベイの小型ボディーにXeon D-1527を搭載し高いパフォーマンスを実現。最大で32GB(標準8GB)のDDR4メモリを載せられる。
PCI Expressカードスロットを2基備え、ネットワークは2.5GbEポートを4つ装備する。さらに、10GbEカードなどでアップグレードできる。
内部にはM.2 2280 SSDスロット(NVMe対応)を2基備える他、拡張ユニットを接続して最大16台までのHDDを拡張可能(容量は256TBまで)だ。
個人向けの「DS120j」は1ベイモデル。CPUに「Armada A3720」を採用し、メモリはDDR3規格の512MBを搭載する。低消費電力でNASのエントリー層に最適の1台だ。
「DS420j」はハイアマチュア向け4ベイNAS。CPUは「Realtek RTD 1296」で、DDR4規格の1GBメモリを備える。ストレージは最大で64TBまで拡張できる。
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提供:Synology Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2019年11月15日