NASは1世代進むと性能面で大きな進歩を遂げることが少なくない。それは、ストレージを自分で用意するNASキットも例外ではない。ASUSTORのNASキット「LOCKERSTOR 4」と、ウエスタンデジタルのNAS用HDD「WD Red Plus」を組み合わせてその実力をチェックしてみよう。
NASやHDDは、いったん導入したら容量がいっぱいになるか壊れるまで使い続ける――そんな人は少なくないだろう。しかし、特にNASは主にパフォーマンス面で大きな進歩を続けている。4コアCPU、4GBメモリ、1Gbps超の有線LANポートの搭載、より高速なNVMe対応SSDへの対応など、1世代でNASそのものの基本スペックが大幅に向上することも珍しくない。HDDは大容量化と低廉化が進み、手頃な価格でより良いものを手に入れられるようになった。
オフィスでの利用はもちろん、家庭における写真や動画、音楽などの保存においても、NASは便利に使える。最近であれば、テレワークによって生み出されるデータの保存先や共有先としても便利である。好きなストレージを組み合わせて使える「NASキット」では、機能の充実ぶりや拡張性がクローズアップされることが多い。実際にHDDを組み込んで使った際のパフォーマンスは、どうなのだろうか。
今回は、ASUSTORのNASキットの1つ「LOCKERSTOR 4(AS6604T)」と、ウエスタンデジタルのNAS向けHDD「WD Red Plus」を組み合わせて、最新のNASキットとHDDのパフォーマンスを確かめてみよう。
LOCKERSTOR 4は、CPUにIntel Celeron J4125(2GHz〜2.7GHz、4コア4スレッド)を搭載する4ベイタイプのNASキットだ。主にパワーユーザーや中小ビジネスユーザーでの利用を想定した製品で、税別の実売価格は7万円前後となる。
AS6604Tは処理性能に優れたCPUに加えて、高速な有線LANポート(2.5GBASE-T×2)を備えていることも特徴だ。現在の家庭やオフィスの有線LANネットワークの多くは最大1Gbpsで通信できる1000BASE-Tを使用しているが、2.5GBASE-Tは1000BASE-Tで一般的に用いられる「CAT5eケーブル」をそのまま使って理論上の通信速度を向上できることが魅力である。
対応するネットワークアダプターやルーターは必要だが、「アクセス速度の向上」と「コストの抑制」をバランス良く実現できる。
早速だが、LOCKERSTOR 4の実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。
先述の通り、今回はウエスタンデジタルのNAS向けHDD「WD Red Plus」と組み合わせてテストを実施する。具体的にはWD Red Plusの8TBモデル「WD80EFAX」を2台用意し、RAID1を構築した上で読み書き速度を確かめていく。WD80EFAXは256MBのキャッシュメモリを搭載し、毎秒210MBの最大転送速度を誇るハイパフォーマンスモデルという位置付けだ。
ネットワークスイッチは1000BASE-Tに対応する「1GbEスイッチ」と、10GBASE-Tまで対応できる「10GbEスイッチ」の2つを用意し、それぞれにLOCKERSTOR 4と、10GBASE-Tカードを搭載する「10GbE PC」と1000BASE-Tカードを搭載する「1GbE PC」の2台のクライアントPCをつないでテストを進める。データの読み書き速度は、ひよひよ氏が開発した「CrystalDiskMark 8.0.0」(64bit版)をクライアントPCで実行して計測する。アプリの設定はデフォルトのままとし(ランダムデータ、テストサイズ1GiB、5回試行での最良値)、ネットワークアダプターのMTUはLOCKERSTOR 4が9000byte、クライアントPCは9014byteに設定している。
まず、有線LANの規格(速度)によるパフォーマンス差を確認するために、LOCKERSTOR 4とクライアントPCで“1対1”の通信をした際の読み書き速度を、異なるスピードのスイッチを切り替えつつ計測した。
1GbEスイッチに接続した場合のシーケンシャルリード/ライト性能は、2台共に毎秒124MB(992Mbps)程度だった。スイッチの性能によって速度が頭打ちしたのだろう。
10GbEスイッチに接続するとどうだろうか。1GbE PCでの読み書き速度は、予想通り1GbEスイッチとつないだ場合とほぼ変わらない。しかし、10GbE PCではシーケンシャルリード/ライト共に毎秒300MB(2.4Gbps)を超える速度を記録した。LOCKERSTOR 4側のインタフェースにおける理論上限値に近い。
続けて、一方のクライアントPCとの間で大容量のファイルを読み書きしている状態で、他方のクライアントPCから読み書き速度のテストを実施した。
1GbE PCでは、シーケンシャルリード/ライト共に毎秒110MB強の速度を記録した。10GbE PCでは、シーケンシャルリードが毎秒202.84MB、シーケンシャルライトが毎秒215.26MBという結果となった。
10GbE PCでの計測結果は、ちょうど1GbE PCの帯域分だけ速度が低下したような感じになっている。一方で、1GbE PCにおける速度低下はわずかだ。
ウエスタンデジタルのNAS向けHDDには「WD Red」「WD Red Plus」「WD Red Pro」の3シリーズがある。
いずれのシリーズも、NASに最適化されたファームウェア「NASware 3.0」を搭載し、各種NASキットとの高い互換性を確保している他、「24時間365日」の連続稼働を想定した高い耐久性、振動対策、消費電力の最適化、低発熱などを特徴としている。
この3シリーズの違いは、主に「記録方式」と「対応ベイ数」にある。WD Redシリーズは、屋根瓦のようにトラックを重ね合わせて面積あたりの記憶容量を上げる「SMR方式」でデータを記録する。ランダムデータの書き換えには弱いが、コストパフォーマンスの良さが魅力といえる。
WD Red PlusシリーズとWD Red Proシリーズでは、トラックが独立した「CMR方式」でデータを記録する。CMR方式は、SMR方式のHDDと比べるとランダムデータの書き込みに強い。WD Red Plusシリーズは8ベイまで、WD Red Proシリーズは24ベイまでの大規模NASシステムを想定している。
WD Red Proシリーズのラインアップは、2TBから18TBまで合計10モデルが用意されている。SOHOや中小企業で用いるNASやサーバ、部門用のNAS/サーバにはWD Red Plus、大規模なNAS/サーバにはWD Red Proという使い分けになるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2021年1月26日