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「GPS内蔵」「全天候型」TOUGHBOOKで電子海図を気軽に使う勝手に連載「海で使うIT」(2/2 ページ)

「冬は重い風が安定して吹くから帆走にはもってこいなんですよ」といっていたけど、これはちょっとやりすぎですよ、という2月の海で「直射日光でも見える液晶ディスプレイ」の実力を試した。

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GPSを搭載して気軽に使えるTOUGHBOOK

 その、「直射日光でも使える液晶ディスプレイ」とともに、CF-30とCF-19で加わった重要な変更が「BluetoothとGPSの内蔵」だ。TOUGHBOOKの需要が日本とは比べ物にならないほど多い欧米市場ではすでに用意されていたこのカスタマイズメニューが、日本モデルでも適用されるようになった。

 この一連の「勝手に連載」で紹介しているように、船でPCを使う用途で最も多く、かつ、実用的なのが、電子海図とナビゲーションソフトと組み合わせた「電脳ナビゲーション」だ。この場合、GPSユニットとPCを接続して自船の場所を把握するが、このとき、ハンディGPSとPCをUSBアダプタを介したシリアルインタフェースで接続するにしろ、PCカードスロットタイプのGPSユニットを使うにしろ、USBスティックタイプのGPSユニットを使うにしろ、防水のインタフェースカバーを開放してケーブルやGPSユニットを差し込むことになる。この状態は“防水扉”が開いているようなもので、コネクタ部分から液体が内部に侵入してシステム基板にダメージを与えてしまう。筐体に内蔵してしまえば、“防水扉”を開けることなくGPSをTOUGHBOOKで利用できるわけだ。

内蔵というより搭載という感じのGPSユニット

 TOUGHBOOK CF-19に内蔵されたGPSは、“内蔵”という言葉から筐体内部にチップが実装されているように思いがちだが、実際は筐体の外側にGPSを収納したケースを“載せる”という感じになる。このGPSケースがCF-19の側面に「こぶ」のように突起しているので、落下時の耐衝撃性能に影響がありそうに思えるが、TOUGHBOOKの開発スタッフは「GPSユニットを取り付けた状態でも堅牢性能は変わらない」と説明している。

 実際、GPSユニットを取り付けたCF-19の使い勝手は“気楽”だ。ハンディGPSとノートPCを接続する従来のスタイルでは「PCを取り出し→ハンディGPSに接続ケーブルを取り付ける→シリアルとUSBの変換アダプタをつける→PCにつなぐ」という作業をこなさなければならないが、これがすべて省略できる。

GPSユニットを搭載したCF-19で電子海図ナビゲーションを行う。このように、本体を甲板に持ち出しただけで使える「気軽さ」は、煩雑な船上ではとても助かる
CF-19に取り付けられたGPSユニット。角型のケースに収納されてCF-19の側面に実装される。心配な耐衝撃性については「特に影響ない」とTOUGHBOOK開発スタッフは説明している。今回、意識して「たたく」「ける」をしてみたが、GPSの動作が途切れることはなかった

ハンディGPSを利用して電子海図ナビゲーションを行う構成。PCなしでも使えるハンディGPSとの組み合わせはシステムの冗長性という点で有利だが、接続ケーブルとシリアルUSB変換ケーブルなど、コードの取り回しが面倒なところでもある
USBをTOUGHBOOKに接続するには、このように防水カバーを開いてUSBコネクタを露出しなければならない。PCカードタイプ、USBスティックタイプのGPSユニットでも事情は同様だ。ただ、Bluetooth内蔵モデルなら防水カバーを開くことなくBluetooth接続のGPSユニットが利用できる

 USBスティックタイプやBluetooth対応のGPSユニットなら接続の手間はいらないが、PCに取り付けた状態ではインタフェースがむき出しになってしまうため、キャビンの中に設置して海図の参照や操作の必要があるときに「のぞき込む」ことになる。どちらにしても、使い勝手は気軽でない。GPS搭載のCF-19なら、甲板にそのまま持ち出して電源を入れ、電子海図を立ち上げただけでGPSを利用したナビゲーションが開始できる。

 防水カバーをすべて閉じた状態なので、波が打ち込むような状態でもそのまま甲板に設置して、自船位置の確認や海図操作をすぐに行えるのも実に便利だ(電子海図を使いたくなるのは、海が荒れて紙の海図を使ったナビゲーションが困難なときに多い)。

ちょっとしたコツがいるGPSユニットの認識方法

 ただ、筆者が評価作業を行ったときには、GPS搭載のCF-19で電子海図ソフトにGPSを認識させるのに、ちょっとしたコツが必要だった。搭載したGPSはBIOSで「有効」「無効」「自動」を設定する。「自動」にしておけば、GPSユニットが使うシステムリソース(IRQやIOアドレス、COMポート番号)をシステムがアサインしてくれるが、そのアサインされたリソース情報がCF-19に導入されていたWindows XP Professionalでは、確認できなかった(USBやBluetooth接続の場合は、デバイスマネージャーのCOMポート情報で使っているリソースを知ることができる)。

 電子海図ソフトでは、事前にGPSユニットが使うCOM番号を設定する必要があるのだが、そのときに必要な情報がBIOSで自動設定にすると得られないことになる。そのため、今回の評価作業では、BIOSで「有効」にして手動設定の「IOアドレス/IRQ」を指定した上で、デバイスマネージャでIRQを確認、そのIRQが使っているCOMポート番号を電子海図アプリで設定するという手順を踏んだ。

GPSの設定をBIOS画面で行う。リソースをシステムが割り当てる「自動」モードも用意されているが、今回はIRQとCOMポート番号を指定するため「有効」モードを利用した
フィールドワークが重視されているTOUGHBOOKでは、外気温を考慮したBIOS設定が用意されている。ただ、この「環境」項目は高温状態でバッテリーの疲弊を防ぐためのもので、「低温化ですぐに動作させるためにHDDを液晶パネルを予熱する」機能はユーザーが関与できないようにBIOSでも設定できない

 いったん認識されれば、その使い勝手はいたって「気楽」だ。いつでもその場で航海情報をチェックできるのは心理的な負担を著しく下げてくれる。GPSの搭載とは関係ないが、CF-19は液晶ディスプレイを回転させてスレートタイプの形状にできる。狭いヨットの甲板ではクラムシェルタイプのCF-29の設置場所に苦労したが、スレートタイプのCF-19は、バルクヘッドにぴたりと設置すれば、コックピットからフォアデッキやマストに飛び出すクルーワークを阻害することもない。

 消費電力を抑えたままでも直射日光の下で液晶ディスプレイの表示が視認でき、GPSを使っても防水防塵性能を低下させない。そして、形状を柔軟に変えられるB5サイズのコンパーチブルタイプのCF-19は、小さなヨットで使うのに、現状で最も適したノートPCであるといえるだろう。それだけに、コンシューマーユーザーレベルでもっと購入しやすい条件(価格とGPS搭載モデルの入手方法などなど)が整って欲しいところなのだが……

 

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